『萌エ萌エ戦士っエトランジェ』

第四話

「って、このタイトルなんだけれど、このままでいいのかな?」
秘密基地中央にある会議室で、そう呟いたのは赤井だった。
赤井と言っても、今は萌力エナジー略して萌エ萌エによって、女の子であるレッドに変身しているのだが。
「タイトルって何のこと?」
そう訪ねるのは、同じく会議室にいた青山だった。
こちらも、赤井と同様、女の子であるブルーに変身していたりする。
あどけなさを残す女の子と、大人びた雰囲気を感じさせる少女が、机を挟んで向かい合っているのである。
「ほら、あれのこと。『萌エ萌エ戦士』ってやつ」
赤井は、頭上を見上げて、冒頭にあるタイトルを指さした。
「で、そのタイトルがどうかしたって言うの?」
子供っぽさを残すようなしゃべり方の赤井とは対照的に、青山は視線を動かさずに、極めてクールに尋ねた。
「だって、ほら。今はボクたちの二人なんだから、『戦士』じゃなくって『戦隊』でしょ」
「……そんなことで、いちいち話しかけないでよ」
ここで初めて、青山は赤井の顔を見つめた。そこに呆れた表情が浮かんでいるのは、青山自身にも分かるほどだった。
「でもでも。大事でしょ。こういうことって」
「はいはい。それじゃあ今回からは、勝手にそう名乗っていなさいよ」
「ってことは、ブルーも賛成してくれるってことだね」
「ええ、賛成でも反対でも、何でもしてあげるわよ……」
再び視線を赤井からそらしながら、青山はそう呟いた。
「やった。
それじゃあ、萌エ萌エ戦隊のリーダーはボクってことに決定だね。で、ブルーはそのメンバーの一人」
「どうしていきなりそうなるのよっ」
赤井の言葉に青山は、机にバタンを両手を当てながら、そう叫んだ。
「だってだって。戦隊モノでリーダーと言えばレッドがリーダーに決まっているでしょ?」
「わたしは嫌よ。あんたなんかをリーダーにするってのは」
「えっ。ボクをリーダーにしたくないってことは……
ひょっとしてブルーって実は敵のスパイとか?」
「どうして突然そうなるのよっ!」
叫ぶ青山を無視して、自分の世界に入ったままに赤井は言葉を続ける。
「でも大丈夫。例えブルーが敵のスパイだとしても、最後には改心をして仲間になると誓ったかと思ったら、敵の親玉が放った攻撃を、その身を挺してかばって、ボクの腕の中で息を引き取るって言う役をさせてあげるからっ」
「要らないわよっ。そんなものっ」
返事になっていない返事をする赤井に、青山は叫び続ける。
「それじゃあ、それじゃあ……」
どうやら他のパターンを考えているらしく、考え込む赤井に、青山はなおも叫ぶ。
「わたしはねっ。孤独を愛するタイプなのよっ。誰の仲間にもならないって言ってるでしょ」
「そんな。それじゃあ萌エ萌エ戦士に逆戻りじゃないか」
「だったら、あなたが一人でリーダーをやっていればいいでしょ。わたしは別行動をするから」
「でもでもそれじゃあ……」
「どうしても戦隊になりたいって言うんだったら、わたしがリーダー、あなたが部下ってことならば考えてあげなくもないわよ」
「でも、ブルーがリーダーだと、見ている人が混乱するから……」
その時、カランカラン、と言う鈴の音が部屋に響いた。
音のする方向へいたのは、喫茶店のドアよろしく鈴が付いたドアを開けて、会議室へと入ってくる永松博士だった。
秘密基地のドアが、自動ドアではなく、こういうドアになっている辺り、細かいところにこだわる永松博士の趣味が現れていると言えよう。
「あ、博士」
「どうやらリーダーをどうするかで困っているみたいね。
話は全部、この盗聴器で聴かせてもらったわよ」
そう言って永松博士は、紙コップの底に紐を付けた糸電話を取り出した。
「……どうしてわざわざ盗聴を」
「……それよりも、あんなもので盗聴が?」
つぶやく二人をよそに、永松博士は、司令官席へと腰掛けた。司令官席と言っても、レストランによくある、子供用の座席よろしく一段高くなっているというだけの話なのだが。
座った永松博士は、長机を挟んで向かい合う二人を、切れ長の瞳でちらりと見てから、
「それだったら、勝負で決めたらどうかしら?」
『勝負?』
博士の言葉に、赤井と青山は、声を揃えて聞き返した。
「ええ。萌力エナジー略して萌エ萌エを、どちらが使いこなせるかで、勝負するのよ」
「でも、どうやって勝負するの?
あ、ひょっとして、どこぞのサイトにあった、出場者二人が審査員10人を女の子に変身させて、どちらの方が萌えたかを競うとか?」
赤井の言葉に永松博士は、人差し指を、ちっちっちっ、と振ってから、
「そうじゃないわよ。
わたしが考えているのはね。女の子に変身した二人が、その女の子って言う立場を活かしてアルバイトをして、どっちが多くのお金を稼ぐかで勝負を決める、って言うことよ」
「うーん。アルバイトか……」
物事を深く考えない赤井にとって、アルバイトというのは結構面倒なことのように思えた。
「そもそも、どうしてアルバイトなのよ……」
一方の青山は、そんな疑問を呟いた。
それに対して、永松博士は、ふう、と小さくため息をつき、頬を両手で押さえてから、
「実は今まで黙っていたけれど、資金難なのよ」
「え、そうだったの?」
「いかにヒーローと言っても、資金がなければ活躍はできないのよ。
資金不足のわたしたちは、最大のピンチを迎えているのよっ」
言葉の割にはあんまり困っていないような顔で、永松博士はそう宣言したのだった。
「そういえば、この作品世界って、どこから資金が出ているかなんて話がなかったわね」
永松博士同様、青山もクールなままにそう呟いた。
「まあ、資金源がどうこうなんて普通のヒーローものには出ないものね。
ちなみに、今回の資金難の原因は、わたしの夏のボーナスが少なかったからよ」
「……博士のボーナスで運営しているのか。この基地は」
赤井がそう呟くのももっとも。この秘密基地、学校の地下数十メートルというところに位置しているのである。一教師のボーナスで作れるものではない。
「まあ、基地の設立に関しては、学校の補正予算を一部流用して作っているから、そうでもないけれど」
「で……できるの? 学校の予算で秘密基地って?」
青山の言葉に、博士は、ふっ、と笑ってから、
「まあ、最近は不況対策ってことで、公共事業に対しては結構予算が出ているものね。
それにしても、政府はうらやましいわよね。赤字国債を発行して、お金を作ることができるんだから。
そんなことを止めさせるためにも、わたしたちは、超党派国会議員によって組織された、『日本に父権社会を復活させる会』を倒さなければならないのよ。
そのためにも、まずは資金集めを考えないと」
なにやら、論点がずれているような気がしなくはないが、そもそもこの作品、どうしてこの敵と戦わなければいけないかという理由すらはっきりしていないのだから、とりあえず話が敵と戦うことに戻っただけでもよしとしよう。
「でも、アルバイトで資金稼ぎってヒーローには地味じゃないの?」
「地味って問題じゃないでしょ」
ずれた論点でしゃべる赤井に、青山がぽそりとつっこみを入れる。
「まあ、派手な資金集めってのもいろいろと考えてみたけれどね。
例えば、徳川埋蔵金の発掘なんてのがあるけれど」
「そういえば、小判が見つかったなんて話があったよね」
「でも、あれってインチキって話もあるわよ」
「ええ、あれはインチキよ」
二人の話をまとめるように、永松博士はそう宣言した。
「どうしてそういえるの?」
「だって、もうわたしが掘り当てちゃったから」
『……ほ、掘り当てたって』
さらりと言った博士の言葉に、二人は呆然と呟いた。
「掘り当てたのはいいけれど、なにしろ当時のお金。
お店で使おうと思っても、どこのお店でも受け取り拒否。今時、両なんて単位使わないよ、と八百屋のおじさんに言われるほどの体たらく。
いつもは、『はい、お釣りの五十万両』なんてビンテージギャグを言う駄菓子屋のおばちゃんも、この時ばかりは他人の振り」
永松博士は、まるでアマチュアお笑い芸人のソロモンテみたいな口調でしゃべりだした。
「しかも昔のお金ということで、インフレで価値も下がっているってことで、使いでがないことこの上なし。
仕方がないからもう一度埋め戻したから、あれは正しくは、徳川埋蔵金じゃなくって、永松埋蔵金という具合なのよ」
『…………』
訳の分からない発言に、二人は言葉すら失ってしまった。
「それなら、それを掘りに行けば?」
ようやく気を取り戻した青山が、博士に尋ねるものの、
「うーん。何せ昔のことだったから、どこの山に埋めたか忘れちゃったのよね。少なくとも、赤城山に埋めてないことは覚えているから、糸井重里にはお気の毒さま、ってことしか言えないんだけれど」
「そ、そうなの?」
「そういうことだから、徳川埋蔵金を当てにするのは無理ね」
じゃあ、最初っから言うなよ、などと思われるかもしれないが、永松博士を前にしては、ツッコミを入れることなど、赤井と青山の二人には思い浮かびはしなかった。
「それで、まずは地道にアルバイトをやろうと思ったんだけれど。
それに、女の子だけが出来るアルバイトということを通じて、女の子の立場というものをより一層明確にする上に、仕事をやらざるを得ないということで、TSっぽい場面に持っていくというのも手軽にできるということで、TS作品にアルバイトを入れることは、『Xchange2』以来の伝統になっているのよ」
「それって伝統って言うの?」
「とにかく、そういうことだから二人にはアルバイトをしてもらうけれど、何がいいかしら?
選べるものとしては、

ファミレスでウェイトレス
家庭教師
自分で探す

の三つがあるけれど?」
「……どこかで見たことあるような気がするんだけれど、微妙に違うような」
「ちなみに、『自分で探す』を選ぶと、モデルの仕事をやることになるわよ」
「うわぁ。やっぱり」
「ま、イメージから言って、レッドがウェイトレス、ブルーが家庭教師ってことで決定よね。
それじゃあ、これが仕事先の住所を書いたメモだから。紹介状もちゃんと書いてあるから、これを持っていってね。さ、早く行かないとバイト代が減っちゃうわよ」
そう言って永松博士は、二人の背中を押して、会議室の外へと押し出した。
二人の目には、そんな永松博士の白衣が、心なしかピンク色に見えたのだった。

永松博士のメモに従って赤井がたどり着いたのは、食事の材料費よりも、店員が着ている制服の材料費の方が高いようなファミレスだった。
店長に手紙を渡すと、どうやってかは知らないが、話はすでに付いていたらしく、赤井はウェイトレスの制服を渡されて、更衣室へと通された。
更衣室の中で、渡されたコスプレのような制服を見つめながら、それをどうやって着ればいいものか、赤井は迷った。
――ここで説明しよう。読者は気づいていないかもしれないが、これまでは、萌力エナジー略して萌エ萌エの力によって、服装までも女の子のものに変身していたので、赤井が自分の手で女の子の服を着るというのは、今回が初めてなのである。なお、だったら今回も着替えないで変身すればいいじゃないか、というツッコミは受け付けないものとする次第である。
さて、着方は分かったものの、実際に制服を体に通そうとをして、赤井はまたしても悩むこととなった。というのは、制服がきついのである。赤井が着やせして見えたのか、それとも子供っぽくすら見える赤井を見て、店長が小さめの服を用意してしまったのかは知らないが、着ようとしてもやけに窮屈だ。
取り替えてもらえばいいのだが、女の子の服というものに慣れない赤井には、こんなものかと思いながら、どうにか着込むことが出来た。
鏡に立って自分の姿を見てみると、ただでさえ胸を強調するようなデザインの上に、きついということで赤井の胸の大きさが、さらに大きく見える。しかも、スカートはミニスカートで、こちらも足にまとわりついてきて、足のラインを強調していたりする。
そんな格好をしている自分を見るのが恥ずかしく思ったのか、赤井はさっさと、店長のところへと向かった。
こういう場合、まずは研修期間とかあると思うのだが、早朝で店内もまだ忙しくないということと、「Xchange2」でもマニュアルを読んだだけでいきなり仕事をしているのだからということで、いきなり接客をするということになったのだった。

入り口に立っていると、待つほどもなく、鈴の音が響いて、お客さんが入ってきた。
「いらっしゃいませ。何名様でしょうか」
迎え入れるように、赤井の、元気のよい女の子の声が響く。
「あ、五人です」
朝から可愛い女の子が見られてラッキーと言った表情で、客の中の一人が応える。
「かしこまりました。五名様ですね。
はい、ゴレンジャー入りまーす」
「……ちょ、ちょっと待って」
突然聞こえた単語に、お客の一人は、一瞬何が起こったのか分からなかったのだが、次の瞬間には、慌ててそう呟いてから、赤井の腕を掴んでいた。
「どうかなさいましたか」
何事もなかったように、笑顔で応えてくる赤井。そんな笑顔を見ていると、ひょっとして今の『ゴレンジャー』というのは空耳だったのか、と思ってしまうのだが、女の子の可愛らしい声とその単語のギャップは、紛れもなく事実だった。
「ねえ。ゴレンジャーって何?」
「はい、五名様、ということですが?」
尋ねてきた客に、赤井は当然のことのように、そう答えた。
「いや、五人って言いたいんだったら、ゴレンジャーじゃなくてもわかると思うんだけれど……」
「お気に召しませんか?」
「う、うん……まあ……」
「そうですか。
どうも、すみませんっ。新入りで今日が初めてなもので……」
そう言って赤井は素直に頭を下げた。こういった辺り、赤井はウェイトレスには結構向いているようである。
「まあ、謝らなくてもいいよ」
可愛い女の子に頭を下げられて、むしろお客の方が恐縮したようになってしまった。
「ゴレンジャーがお気に召さないようでしたら、バトルフィーバーJというのはいかがでしょうか?」
「だから。そういうことじゃなくって……」
唖然とするお客であったが、目の前にいる赤井は、あくまでも真面目な顔だった。こういった辺り、赤井は別の面でウェイトレスには向いていないようである。
「だから。普通に五名様でいいでしょ」
「あ、お客様の場合は、そちらの方がよろしいんですね」
「……いや。普通はそうだと思うんだけれど。まあ、いいよ。それよりも案内して」
「はい。では、こちらへどうぞ」
そう言って赤井は、近くのテーブルへと案内していった。後ろから付いていくお客に見えるのは、そんな赤井の後ろ姿、というか、ミニスカートで強調された、女の子のお尻だった。見とれる五人の頭には、さっきの出来事はすっかり過去の出来事になっていたのだった。

「あ、注文いいですか?」
五人が席に着くなり、さっきの客が、赤井にそう問いかけてきた。
「はい。承ります」
「そうだなあ……
じゃあ、俺はハンバーグステーキセット。ライスは大盛りで」
「俺は懐石料理セット」
「えっと。ピザトーストトマト風味に、紅茶のセット。それと野菜サラダ」
「こっちは、チャーシュー麺をニンニク抜きで。それと餃子」
「残り俺だけ? じゃあ、和風モーニングで、焼き魚を」
いつも同じ料理を注文しているらしく、五人はメニューも見ないでそう言ってきた。
まるっきりばらばらなメニューを、とりあえずメモしてから、しばしの間、赤井はそのメモを見つめていた。
そして、しばらくしてから、
「それでは、全員カレーライスということでよろしいですね?」
やたら朗らかな笑顔で、そう尋ねてきたのだった。
「……?
え、え? ねえ。カレーライスって何?」
さっきと同様、すぐには理解できなかったものの、客の一人がようやくそう尋ねた。
「カレーライスって、知りませんか? イエローが好きな食べ物ですけれど」
そう答える赤井の顔には、相変わらず朗らかな笑顔が浮かんでいたりする。
「知らないよ。
……いや、イエローが好きってのは俺も知ってるけれど、分からないよ」
「でもでも……五人の気持ちが一つに揃わないと、五体ロボットは合体できませんから」
「しないよ。俺達、合体ロボットなんて持っていないから」
「持っていないんですか……
すみませんっ。新入りで今日が初めてなもので……」
再度、熱心に頭を下げる赤井に、お客の方も、再び申し訳ないような心持ちになってしまった。
「……じゃあ。カレーでいいから。な、みんなもそれでいいだろ」
一人の客の言葉に、他の四人も嫌な顔をせずに、頷いたのだった。
これぞっ、『初めてだから優しくして、と女の子に言われれば、男ならば誰でも優しくしてしまうっ』の原理である。
……ちょっと状況が違うかもしれないが。

そんなこんなで、一般のお客には、赤井の接客態度はいまいち付いていけないところがあった。
だがしかし、マニアには受けたっ!
ヒーローマニアで、なおかつ可愛い店員がいるという情報は、インターネットを通じて、日本全国へと広がった。
午後を過ぎた段階で、赤井に関するファンサイトが三つ、ニュースグループが二つ、赤井を扱った同人サークルが二つも出来たというぐらいである。
そんなことだから、当然お店は大繁盛。赤井目当てに、日本全国から大勢のお客さんが集まったのだった。
赤井目当ての客一色になった店内を、赤井は甲斐甲斐しく動き回っていた。時々失敗するものの、赤井の初々しさは、それをカバーするのには十分だった。

だがしかしっ、熱心に働く赤井の体には、異変が起こり始めていたのだった。
いや、赤井の着ている制服に異変が起こり始めた、というべきだろうか。
きつい制服で店内を激しく動き回ったということで、制服の仕立て糸が、だんだんと切れ始めてきたのである。
普通だったら気づくのだろうが、何せ女の子の服を着るというのは初めてということと、にぎわう店内ということで、それに気づくこともなく、時間は進んでいった。
そして、
「赤井さん。注文お願いします」
「はい」
後ろから呼び止められて、体をひねった時に、事件は起こったっ!
ぷちぷちぷちぷち、という軽い音と共に、赤井の制服の裁縫が、一気に切れてしまったのだった。
体を覆う服が、剥がれ落ちていく感覚が赤井を遅う。
これはまずい、と思った赤井は、慌てて落ちていく服をかばおうとした。
だが、しかし、そこはTSっ娘の赤井のこと。男の体のつもりということで、落ちていく服をくい止めようと手を当てたのは、股間のところだけだった。
はらり。
という擬音と共に、胸を覆う制服が、剥がれ落ちていったのだった。
さらに悪いことに、実は赤井は、きつい制服を着るために、ブラジャーは身に付けていなかったのだった。
ぷるん。
と言う擬音と共に、赤井の形のいいバストが、大勢のお客さんの前であらわになったのだった。
さらに悪いことに、店内にいたマニア数人の手によって、その様子は逐一インターネットを通じて、全世界にストリーム配信されていたのだった。
これが原因で赤井は、店長の一存によって、ウェイトレスをクビになってしまった。
赤井のおかげで大入りとなったのに、これだけのことでクビにしてしまう店長というのは、随分と根性なしに思われるかもしれないが、この店長だって家に帰れば一児の父親、来年は高校受験を控えた子供が、『ノーブラ喫茶の店長の息子』とか言って虐(いじ)められるのを心配してのことなので、この店長を責めるわけにはいかないであろう。

「そういうことだったの……」
秘密基地の会議室で、アルバイト先での赤井の話を司令官席に腰掛けつつ聞き終えてから、永松博士はそうつぶやいた。
「まあ、仕方がないわね。これが後半だったらそのままエッチシーンに流れ込むってことになるんでしょうけれど、まだ前半だから、これでもお色気シーンは多い方よね」
「……そういう問題なの?」
「それよりもブルーはどうしたのかしら? そろそろ戻ってくるはずなんだけれど」
永松博士がそう呟くのを見計らったかのように、会議室のドアが開いて、鈴の音が響いた。
「その顔だと、アルバイトは駄目だったみたいね。
わたしはちゃんと、家庭教師の仕事を、何事もなく過ごしてきて、ちゃんとアルバイト代をもらったわよ」
そう言って青山は、ドアのところに立ったまま、おそらくはアルバイト代が入っているのであろう封筒を、ひらひらと振って見せた。
「何事もなく?」
「ええ、そうよ。ミスもせず、向こうも勉強がはかどってよかったって言ってたわ」
「駄目でしょっ。そんなことじゃっ」
パシーン。
会議室に、永松博士の平手打ちの音が響いた。
もっとも、永松博士は椅子に座っているのだし、青山はドアの近くにいるのだから、永松博士の平手打ちが届くはずもない。
今のは単に、そういう雰囲気を出そうと、永松博士が自分の両手を叩いた音に過ぎないのである。まあ、こういう作品だから、シリアスそうな場面と言ってもこんなものである。
「このっ、TSわからず屋さんっ」
言葉の意味は分からないままに、青山は博士の顔を見つめた。
「TSなのよ。家庭教師なのよ。それだったら、もっといろんな事がないと、読者は着いてきてくれないわ。
例えば、模擬試験でいい点を取ったら女の子にしてあげる、なんて言って女の子にして、生徒と先生で禁断のレズレズ体験をして読者の気を引いていって、これで合格するのかなあ、と思っていたら、いつもの癖で女の子のままに試験会場に行ってしまって、男の時の顔写真がはられている受験票とは大違いということで失格になって落ちてしまう……
それぐらいの展開とオチが欲しいところよ」
「そ、そうなんだ……」
相変わらず自分のペースで話を進めていく永松博士に、青山は呆然とするだけだった。
「やっぱり、正義のヒーローが資金稼ぎにアルバイトをするというのは、無理があったわね」
最初から気付けよ、と言いたいところなのだが、ストーリー展開の関係からそうしてしまったため、あんまり強く言うこともできない作者であった。
「やっぱり、正義のヒーローが資金稼ぎにアルバイトをするというのは、『サクラ大戦2』で、開発費が打ち切られたと言ってその資金をお芝居の収益でどうにかしようというぐらい無理があったわ」
あれに比べたら、こっちの方がまだましだろう、と思う作者であった。
「それで。何をしようって言うの?」
家庭教師を無難にこなしてきただけで、いまいち影が薄い青山が、そう尋ねる。
「やっぱり、ヒーローの資金稼ぎと言えば……
ズバリっ! キャラクターグッズの販売よっ」
「おおっ!」
「そういえば、そうね」
納得する二人に気をよくした永松博士は、さらに話を続けていく。
「昔から、年末年始になると、何故かは分からないけれど、ヒーローが敵にやられた後でパワーアップして、それにあわせたかのように、新しいキャラクターグッズが販売されるわ。
この作品は、設定こそ夏休みってなっているけれど、これが執筆されているのはもう一月。クリスマス商戦は過ぎてしまったけれど、子供のお年玉を狙ってのグッズ販売ということでは、まだまだいけるわ。
確かに、子供の懐を狙ってのキャラクターグッズの販売ってのは、えげつないなあ、って思われるかもしれないわ。ああいう、年末年始に新しい商品が出るってのは、所詮おもちゃ会社が、クリスマスプレゼントとかお年玉を狙ってのことだろ、って。
でも、考えてみて。ああやって売れた収益が、おもちゃ会社に行くんじゃなくって、ヒーローが新しい武器やロボットを作った資金に回っていると思えば、全てが納得できるじゃない。
どうせ子供相手の商売なんだから、そういうことを番組の中でアピールすれば、子供は今まで以上に、キャラクターグッズを買わなければいけないなあ、って思うわ。
例えばどうかしら。番組の中で、実際に正義のヒーローが、自らのキャラクターグッズを売り歩いている場面というのを入れてみるのよ。そしてこうつぶやくの。『ううっ。このグッズを全部売って、新しいロボットを作る資金を稼がないと』ってね。
そうしたら、小さな子供はどう思う? 『あ、僕がおもちゃを買ってあげないと正義のヒーローがやられちゃう』って思うでしょ。それで、お父さんお母さんにせがむことになるわ。そんな風に頼まれたら、親だっていくらなんでも小さな子供に向かって『あれはね。おもちゃ会社が儲けるために嘘を付いているんだよ』って言って、まだ幼い子供の夢を壊すなんてことはしないでしょうから、渋々買うことになるわ。
もっといい方法としては、おもちゃのどこかに、『この製品の売上の一部は、ヒーローが乗るロボット開発のために使われています』とか書いておくのよ。ほら、普通の品物でもあるじゃない。『この製品の売上の一部は、何とか基金を通して世界の恵まれない人へと送られています』とかって言う文章。あれと同じよ。その方が、子供から見れば、なんか本当っぽくて、思わず信じちゃうでしょ。
そんなことを書くと嘘って言われるかもしれないわ。でも、大丈夫。実際のところ、ロボットの設計開発をするのは番組の制作スタッフなんだし、そのスタッフへは、おもちゃ会社からロイヤリティということでお金が渡っているんだから。ね、全然嘘って訳じゃないでしょ……」
「それで、どんなヒーローグッズを作るの?」
いつまでも続くかに見えた博士の言葉を途切れさせたのは、赤井の疑問だった。
「ふっ。よくぞ聞いてくれたわね」
言って永松博士は、長い黒髪をふぁさぁっ、とかきあげてから、机の下に手を伸ばして、そこから何かを取り出した。
「まあ、ヒーローグッズの基本と言えば、超合金ロボットなんだけれど、巨大ロボットって言っても小説だと読者にピンとこないから、この作品って今のところ巨大ロボットを出す予定はないのよね。
ってことで、とりあえず子供が手に持って楽しめるようなものとして開発したのがこれっ。
名付けて、萌エ萌エステッキよっ」
先生の手元には、長さは二十センチぐらい、握るための柄のついた、ピンク色のバトン状の棒が握りしめられていた。
突然そんなものを見せられて驚く二人をよそに、さらに博士は言葉を続けていく。
「どうかしら。確かに超合金ロボットに比べれば、男の子には喜ばれないかもしれないけれど、これだったら女の子には受けるわよ。
それに、ヒーローグッズとかって売れ残ったら困るけれど、こういうものだったらちょっとアクセサリーとかを変えれば、別のグッズとして売り出すことも可能だし。
さらに、ギミックとして、乾電池を入れれば音も出るという優れものよっ。
さあっ、あなたたちも、これを持っていれば、今後の戦闘やその他の時に役立つこと間違いなしよ」
そう言って博士は、押しつけるようにして、萌エ萌エステッキを二人へと手渡した。
しばらく、手渡されていたものを見つめていた二人だが、
「ところでこれって、どうやって使うの?」
頬を染めながら、赤井が尋ねてきた。
「まあ、ここぞという時に、それっぽい持ち方で、それっぽい声を上げながら使えばいいわ」
アバウトとしか言いようのない説明をする博士だった。
「そうは言われても。こんなのって……」
何かを言おうとした青山の声を遮るように、ポッポー、ポッポー、ポッポー、と鳩時計の音が秘密基地の中に流れた。
「はっ! レッドにブルー。今すぐ出動準備よ。
超党派国会議員によって組織された、『日本に父権社会を復活させる会』会員がザコキャラ50人を率いて、町内をうろついているそうよ」
「……今の音だけで、そこまでわかったの?」
「そうだけれど。それがどうかしたの?」
「いえ。世の中って広いなあ、って思っただけ」
永松博士の言葉に冷や汗を流しながら、先に走っていった永松博士と赤井を追って、青山も、前回同様車に飛び乗ったのだった。

国会議員らを追って赤井等が到着したのは、毎度おなじみ採掘場だった。
町内をうろついていたはずの彼らが採掘場にいるというのは、おかしな気もするかもしれないが、なにせこの町の名物は採掘場、キャッチフレーズは『採掘場に会える町』なのだから、そうなってしまうのも当然、ということで話を進めさせていただきたい。
「またお前なのかっ!?」
車から降りて、敵の姿を見つめるなり、赤井はそう叫んだ。
それもそのはず、赤井の前に立つのは、前回倒したはずの敵、糸八幡議員なのだった。
「前回は、反省して帰っていったはずなのに、どうしたって言うんだっ!?」
避難するように言う赤井の言葉を、国会議員糸八幡は鼻先で笑ってから、
「記憶にございません」
軽く頭を下げて、そう呟いたのだった。
「がふっ」
国会議員から発せられた国会議員エナジーが、永田町言葉を媒体にして衝撃波となり、赤井を襲った。
よろけそうになるなかを必死にこらえてから、
「くっそう……前回は見逃して上げたのに。
こうなったら、今回は、完膚無きまでに倒すしかないみたいだね……」
悔しそうな顔をして、そうつぶやくレッドを見て、糸八幡は、平然と笑い続けている。
「ふっ。言うわい……
まあ、それもお前達、萌エ萌エ戦隊エトランジェの最後の悪あがきとして認めてやろうっ」
そう言って、ぐわっはっは、と笑う糸八幡の顔には、どことなしか余裕というものが感じられた。
「ま、負けないわよ」
そう言って永松博士も、さらに余裕の顔をした。
「負けない、だと。私に勝てるとでも思っているのか」
国会議員糸八幡も、負けずに余裕の顔をしようとした。しかし、途中で顔の筋肉が引きつったのか、やたら痛そうな顔をしてから、
「ふふふ。第一ラウンドではお前の勝ちのようだな」
おいおい、どっちが余裕の顔ができるか、ということで勝負なんかするなよ、と思わずつっこみを入れてしまいそうな台詞をつぶやいたのだった。
「しかしっ。お前達の最大最強の力、萌力エナジーも今日が最後だっ。
この私のザコキャラ部隊に、貴様達の力が通用するかな」
そう叫ぶなり、糸八幡は横へと動き、変わって後ろにいたザコキャラたち50人が前へと出たのだった。
「なんだってっ! 悪の改造人間相手ならいざ知らず、ザコキャラにボクたちが負けるわけがないじゃないか」
レッドは、ずいっ、と身を乗り出して、糸八幡に向かってそう叫んだ。そして、そのまま敵へと向かって駆けだして行こうとするのを肩を掴んで横から止めたのは、ブルーだった。
「ブルー!? どうして止めるの?」
「レッドっ! 敵はただの敵じゃないわ。もっと落ち着いて相手をよく見なさいっ」
ブルーが指さす先にいるのは、いかにもありがちな全身タイツに身を包んだザコキャラたちだった。
「どう違うって言うの?」
「もっとよく見るのよっ。あの胸の辺りを」
「胸の辺りって……あっ!」
「はっはっは。よくぞ気づいたな」
驚くレッドの言葉を遮るように、糸八幡の笑い声が響く。
「確かに、あんな相手には、萌力エナジーも効かないわね」
奥歯をかみしめながら、ブルーは悔しそうにつぶやいた。
「そうだろうそうだろう。
いくら萌力エナジーと言っても……女相手には通用しまいっ!」
そう……全身タイツに隠れて顔こそ見えないが、二人の前に居並ぶ50人のザコキャラ全員の胸には、二つの膨らみが見えるのだった。
「くそうっ。そんな手を使ってくるなんて」
状況に気づいたレッドも、ブルー同様苦々しげな表情を浮かべた。
「わっはっは。どうだ。萌力エナジーが使えなければ、もうお前達は、読者に会わせる顔もあるまい」
あくまでも余裕の表情を続ける糸八幡であったが、余裕なのは彼だけではなかった。
たじろぐ二人の後ろに立つ永松博士の顔にも、余裕の表情が浮かんでいたのだった。
「レッド! ブルー!」
腕を組んで叫ぶ永松博士の声に、二人は振り向いた。
「二人ともっ。見かけに騙されては駄目よっ。心の目で見れば、打開策は見つかるはずよっ」
「……心の目って言っても」
博士の言葉に戸惑う青山であったが、その一方の赤井は、今の言葉に何かピンと来るものを感じた。
そして、考えること数秒後、赤井の顔に明るい表情が浮かんだのだった。
「そうかっ。わかったぜっ」
「あっ。待って。赤井っ」
ザコキャラへ向かって走り出した赤井は、止める青山の言葉も聞かずに、大きくポーズを作った。
「萌エ萌エフラッシュっ!」
赤井の手のひらから発せられた、萌力エナジー略して萌エ萌エの光が、ザコキャラ50人を一斉に取り囲む。
驚く青山、そして糸八幡が見つめる中、止んだ光の中から出てきたのは……
総勢50人になる、様々なコスプレをした女の子達だった。
そして彼女らは口々に、「こ、これがボク……」と呟いていた。
彼女らの驚きようはいつもとまるで同じ、つまりTSっ娘独特の、呆然とした中に喜びがかすかに感じられる、と言ったものだった。
唯一、これまでに萌力エナジーの前に敗れ去ったザコキャラと違うのは、その足元に、二つのあんパンが落ちている、ということだった。
「よく覚えておくんだねっ。
『ピンク役の中に入っているのは男で、胸の中にはあんパンが入っている』って言葉をね」
すでにいろんなことを始めている女の子の中で、赤井はすっくと立ったまま、国会議員糸八幡を指さして、そう宣言したのだった。
「ま、まさか……そんなことがあるなんて……制作会社には、女性役のザコキャラを、と頼んでいたのに」
肩を落としながら、糸八幡は悔しそうにそう呟いた。
「どうやら。女性役、と言ったのが、失敗だったみたいだね」
哀れみの表情すら浮かべて、赤井はそう言った。
赤井の廻りでは、糸八幡の失敗を裏付けるように、TSっ娘があんなことやこんなことをしていたりする。しかも、女性役をやっているだけあって、そういう方面に興味がある人が多いのか、萌力エネルギー略して萌エ萌エの効果は、いつもの1.5倍(当社比っ)となっているのだった。どういうところが1.5倍なのかは知らないが、二倍ほどではないので、多分そんなぐらいだろう。
「私の完璧な作戦が、こんなことで破れてしまうとは……
おのれ。こうなったら私一人でも戦ってくれるわっ。
いくぞっ。代表質問欠席アタックっ!」
相変わらず訳の分からない叫びと共に、国会議員糸八幡の手のひらからは、プラズマを思わせる光が炸裂した。しかし、赤井と青山の前にはひとたまりもなく、いつものように跳ね返され、そしていつものように、流れ弾となって永松博士を直撃したのだった。
一方、赤井と青山の手のひらから出た、萌力エナジー略して萌エ萌エは、糸八幡を直撃した。
そして、爆風が止んだ中にいたのは……水色に染められた着物を着た、一人の少女だった。
その表情は着物という格好からするとやけに幼く見え、あたかも、姉の晴れ着をこっそりと着て、鏡の前で「こ、これが私?」とか言いながら、いつもと違う自分の美しさというものを発見してしまった女の子のようにも見えた。
そんな、おどおどとする着物姿の女の子を、赤井と青山の二人は、じっと見つめていた。
「……どうする? ブルー」
「ここはやっぱり、お仕置きするしかないわよね。
前回の、わたしの言葉を無視して、また攻撃してきたんだから」
青山の言葉に、赤井は、にこっと笑ってから、
「どうやら、初めてボクたちの意見が一致したみたいだね」
「ええ、そうみたいね」
見つめ合い、そう言ってから、二人はじりじりと、着物姿の女の子へと近づいていった。
為すすべもなく立ちつくす女の子の帯へ赤井が手をかけたかと思うと、そのまま一気に帯を引っ張った。
「あれ〜〜〜」
国会議員の糸八幡だった女の子は、帯を引っ張られ、体を独楽のように回転させていった。それはまるで、『お殿様お戯れを』『初(うい)やつじゃ』という常套句が聞こえて来るかのようだった。
すっかり回転させられ目を回した彼女は、赤井の胸元へと倒れ込んでいった。
抱える赤井の眼下には、帯を解かれて着物の前をはだける女の子の姿があった。
「レッドっ! ブルーっ! ここでこそ、萌エ萌エステッキの出番よっ!」
どこからともなく、永松博士の声が届く。おそらくは、さっきの国会議員の攻撃を受けたまま、土に埋まりながらも、叫んでいるのだろう。
「うん。わかった」
博士の言葉に従って、二人は萌エ萌エステッキを取り出した。
そして、根本にあるスイッチを入れると、その先端部分がぶるぶると振動を起こし、くぐもった音が鳴り響いたのだった。

突然ですが、ここで、先ほどまでの報道内容を訂正させていただきます。
これまでに文中で登場した、「ステッキ」は「バイブレーター」の誤りでした。
謹んで訂正させていただき、こちらの情報不足により、関係者各位にご迷惑を掛けたことをお詫び申し上げます。
なんて訂正が、どこからともなく入った。
――ここで言い訳しよう。
永松博士の言葉に、間違いはないはずである。どちらかと言えば、男の子よりかは女の子に受けるものだし、売れ残ったら新聞広告でマッサージ機と言い張って別の商品として売ることも可能だし、乾電池を入れれば音も出るのだし。
さらに、それっぽい持ち方で、それっぽい声を上げながら使うものだし。

さて、ギャグはこの辺で切り上げるとして……
胸元へと倒れ込んできた、国会議員糸八幡が変身した着物姿の女の子を、赤井はそのままベッドへと横にした。
なんでこんなところにベッドがあるのかと言えば、萌力エナジー略して萌エ萌エのなせる技である。映像的にはかなり違和感があるが、まあ、小説なんだから、あんまり気にするほどのものでもない。
ベッドへと倒された糸八幡の胸元は、帯のほどけた着物で半開きになっていた。赤井は無邪気に、それを開こうとしたのだが、
「待って、レッド。こういうものは、いきなりだと刺激が強いから、まずは服の上から触ってあげましょうよ」
ブルーはそう言って、手にしたバイブレーターを震わせながら、含み笑いをしたのだった。
「それじゃあ、そうしようか」
ブルーの言葉に、赤居は手にしていた着物の裾を、彼女の胸元で重ね合わせてから、ベッドに横たわる女の子を、じっと見つめた。


残念ながら、ここで終了。また会う日までさようなら。


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