『マヴカレ浄魔巫女』

作:月華

序章
大学受験を来年に控え、受験勉強の気分転換にと、椿遥佳は、近所の神社へとやってきていた。
(大学に受かりますように。それと、大学に入学したら彼女が出来ますように)
拝殿に向かってお願いをしてから、傍らにあった、おみくじ売り場へと向かった。
中では一人の巫女さんが、かいがいしく働いていて、おみくじを手渡してくれた。
遥佳は、おみくじを開いた。
そこには、
「巫女」
と書かれていた。
大吉でも、吉でも、凶でもなく、「巫女」である。
なんだろうかと思い、その巫女さんに尋ねてみた。
「あのすみません」
「はい、なんでしょうか?」
この神社の娘らしい巫女さんは、ツインテールに結ばれた薄紫の髪の毛を揺らして笑顔で答える。
「おみくじに、こんなことが書かれていたんですけど」
その「巫女」と書かれたおみくじを見せたとたん、彼女の顔から笑顔が消えた。
そして、
「巫女頭(がしら)様ー、出ました。例のおみくじ、出ましたー」
叫びながら、奥の部屋へと向かっていったのだった。
しばらくして、奥の方から一人の巫女さんが出てきた。
白い小袖と緋袴の格好は同じだが、それを身にまとっている中身はずいぶんと違っていた。
圧倒されるのは、その胸元だった。小袖の谷間からは、豊満な乳房の谷間が見て取れる。
化粧はしていないのだろうが、顔つきからしたら、30代前半ぐらいだろうか。巫女には似合わない、妖艶さと言ったものが感じられる。
目元には、小さな泣きぼくろがついているのが見えた。
「あのおみくじ……「巫女」を引いたのは、あなたですね」
威厳のある感じの声で、彼女が問うてくる。
「は、はい……これです」
そう言って遥佳は、手にしたおみくじを見せる。
彼女は、そのおみくじをしげしげと見つめてから、
「間違いないようですね。申し訳ありませんが、私と本殿へ来ていただけますか?」
「え、ええ、良いですけれど……」
断ることが出来ないような威厳に飲まれて、遥佳は答えた。

本殿に入り、遥佳は、巫女頭と呼ばれた女性と向かい合うように正座していた。
「そういえば、紹介がまだでしたね。私、この神社で巫女頭を務めます、榎本弥生と申します」
そう言って、彼女は頭を下げる。
「あ、僕は、椿遥佳って言います。この近くに住んでいます」
「そういえば、お正月などには、何度かいらっしゃっていましたね」
「ええ、来ていますが……」
どうやら向こうは面識があるようなのだが、遥佳には弥生の顔に心当たりは無い。
巫女というイメージとは違う、こんな色っぽい女性が居たら、意識しなくても気付きそうなものなのだが。
そんな思いが顔に出たのか、
「私はいつもは、本殿の奥にいますので、参拝者の方と顔を合わせることは滅多にないのです」
そう言われた。
「そうでしたか……」
「それで、椿さんが引かれたおみくじのことですが」
襟元を正しながら、弥生は言ってきた。
「あ、そうです。これです、「巫女」ってなんですか?」
「そこに書かれてある通りです。あなたには、巫女になっていただきます」
「僕が、巫女に? あの格好をするんですか?」
どちらかと言えば、女っぽい顔立ちと言われる遥佳であるが、さすがに巫女の格好をして女装をするなんてのは嫌だった。
「格好だけではありません。あなたには、体も巫女になってもらいます。すなわち、女性の体になってもらう、ということです」
「僕が? 女性に?」
どうしてそんなことが、そもそもそんなこと可能なのか、という遥佳の思いをよそに、弥生は言葉を続ける。
「この世には、未練を残したまま亡くなったために、収まるべき場所へと収まることなく、この世を漂っている霊が居ます。その霊は、人間に悪さをして、妖魔と呼ばれる存在となっています。あなたには、巫女になって、その霊を封印する役目を果たしてもらいます」
ファンタジー小説のような話に、遥佳は驚きの声を上げる。
「霊を封印って言われても……僕って、別にそんな能力とか無いですし」
「ですから、巫女になっていただくのです。女性として巫女になって、妖魔と交わることで、妖魔の未練を断ち、その隙に封印をするのです」
「妖魔と交わるって……ひょっとして……」
「そうです。妖魔とセックスをするのです」
言って弥生は、ぐっ、と右手を握りしめた。
「せ、セックスって……」
「妖魔とのセックス。人間の姿を失った妖魔は、触手だけの存在となっていて、人間を襲ってきます。それをあなたは、なすすべもなく受け入れて、その快感に身悶え、そんな様子に妖魔はますます興奮し、ついには後ろの穴まで……『いやっ、止めて。そこは主人にも許したことが無いのに』。しかし妖魔は、そんな未亡人の口から漏れる、しばらく体験していないセックスへの飢えを感じ取り、無言のままに触手を押し進めてきます。『そ、そんなところ……ああ、あなた、ご免なさい』」
言いながら、弥生は身をくねらせ、頬を染めた。
そんな色っぽい姿を見て、遥佳は思わず勃起をしてきたのを、前屈みになって隠そうとしていた。
「と、このように、触手の責めはとても恐ろしいものなのです。あなたには巫女になって、それを受け入れてもらいます」
素に戻って、弥生は正座をした。
「そ、そんなことをどうして僕が……?」
「それが神の御心だからです。おみくじで出た通りです」
「僕じゃなくて、この神社にも巫女さんは何人もいるようですし」
「神の御心です。普通の巫女さんが犯されるよりも、元々は男だった巫女さんが、初めて感じる女の快感に打ち震えながら犯される方が、妖魔も萌えるのです」
「それなんですけれど。僕が巫女さんになるってのはどうやって?」
「儀式を行います。そうすれば、あなたは巫女の体を手に入れられます」
「断れないんですか?」
「神の御心ですから。もしも断ったら、これからあなたには、期待外れのことが続きます」
「期待外れって、どんなことですか?」
「例えば、幼女が『らめぇ、らめぇ』と言っているので、期待して行ってみたら、そこではベビースターラーメンを買って欲しがっている女の子がいるだけだったとか」
「期待外れ小っちゃ!」
「その他にも、幼女が『お兄ちゃん、そんなところ舐めたら汚いよ。そこはおしっこをする場所だよ』と言っているので、期待して行ってみたら……」
「いや、そういう幼女ネタはあんまり興味ないので」
「そうですか。
とにかくあなたには、巫女になっていただきます。そうですね。あなたが浄化すべき妖魔は……」
弥生は、遠くの声を聞き取るような仕草をしてから、
「五匹ですね。それまであなたは、巫女の体でいてもらいます。それが終われば、元の体に戻れます」
「そんな、僕は受験も控えていて、忙しいんですけれど」
「受験……ですか」
遥佳の言葉に、弥生は考えるような仕草をした。
「私の神社では、合格祈願のお守りも扱っています。今回、神の御心に従ってくれるのであれば、本来は非売品である、合格率120%のお守りをお渡しします」
「そんなの、あるんですか?」
「はい、私も、娘たちも、そのお札を使って、全て合格しました。その効能は保証します」
「そ、そういうことなら……」
遥佳は、神の御心とやらを受け入れる決意をし、こくりと頷いた。
「そうですか。それでは、さっそく儀式を開始します。古来より伝わる儀式、『みこみこにしてあげる』を行います」
本当に古来より伝わる儀式なのかよ、とそのネーミングに突っ込みを入れるものの、弥生の言動には、どこか威厳が感じられた。
弥生は立ちあがるなり、するりと小袖を脱いだ。
下着は着けておらず、最初にあった時にちらりと見えた、豊満な胸元がさらけ出される。
本殿の暗がりに浮かび上がるような、白い肌が印象的だった。
続けて、袴が外された。
衣擦れの音と共に、するりと床に落ちると、彼女を覆うものは、もう何も無い。
彼女の背後で揺れる蝋燭の明かりに照らされて、その綺麗な女体のシルエットが浮かび上がる。
乳房は左右に大きく張り出し、ヒップも綺麗な丸みを描いて外へとせり出している。
もどかしいのは、遥佳がまだ生で見たことのない部分が逆光のせいで、はっきりと見られないことだった。
立ちあがった弥生が、ゆっくりと近づいてくる。
そのまましなだれるように、遥佳の元へと体を倒し、遥佳の服を脱がせていく。
「あ、あの……」
年上の、それも妖艶な巫女に服を脱がされて、遥佳は戸惑いの声を上げる。
そんな表情を察したのか、弥生は遥佳の服を脱がせつつ、艶っぽく声を掛ける。
「ひょっとして、こういうの、初めて?」
「は、はひ……」
興奮のあまり、声が裏返ってしまう。
「じゃあ、落ち着かせてあげる」
上半身を脱がせ終えた所で、いきなり弥生はキスをしてきた。
遥佳の唇へと、甘い吐息と共に、ぽってりとした唇が重なってきて、唇を塞ぐ。
「ん……」
目の前には、鼻筋の通った顔つきと、泣きぼくろに彩られた妖艶な彼女の顔が浮かんでいる。
遥佳が目を開けたままなのと同じように、弥生も目を開いたままだった。
だが、その目つきは違っていた。
遥佳は驚きに目を開いているのに、弥生は、そんな彼の表情を嬉しげに見つめ、目を細めている。
間近で見つめられ、唇を重ねられていると、遥佳の理性は吹っ飛んでしまった。
もう、なすがままにされることを受け入れるだけだった。
遥佳の口中へと、弥生の舌先が入ってきて、遥佳の舌へと絡みついてくる。
その勢いに押されるようにして、遥佳は上体を床へと倒す。
上から覆い被されるままに、口中を弥生に蹂躙されていく。
(ああ、これがキスの味。年上の女性の味……)
想像していた、甘酸っぱい、という感じはしなかった。味に例えて言えば、こってりとした味、という表現がぴったりだった。
弥生は左手で遥佳のあごを、くい、と持ち上げ、広がった口へと、さらに舌を入れてくる。
舌全体へと、唾液が塗され、絡み合う。
舌先はさらに伸びてきて、このまま、喉奥まで犯されてしまいそうなほどだった。
一方の弥生の右手は、遥佳の下半身へと伸びてきていた。
「ん……」
ズボンの上から膨れあがった股間へと、ほっそりとした弥生の手が触れた途端、遥佳はびくりと体を震わせる。
唇を離して、弥生が見下ろしてくる。
解かれた髪の毛が垂れ落ち、まるで、獲物に絡みつこうとしている蜘蛛の糸のように見える。
「遥佳君のここ、すっかり大きくなっているわね」
すぅいっ、とズボンの上から形と大きさを確認するように触ってくる。
遥佳は、どう答えて良いか分からずに、ただ、こくりと頷いた。
「それじゃあ、直接見させてもらうわよ」
言うなり弥生はベルトへと両手をかけて器用に外し、寝そべったままの遥佳のズボンを下ろした。
ひんやりとした板張りの床が、遥佳の尻へと当たってくる。
そんな冷たさとは対照的に、股間では遥佳のものが上を向き、熱を放っているのが感じられる。
「大きさは立派ね。それに、まだ皮を被っていて、可愛いわよ。見ているだけで、ぞくぞくして来ちゃう」
寝そべったままの遥佳が顔を上げると、股間の先でズボンを脱がし終えた弥生が、嬉しそうに、上を向いている遥佳のものを見つめてくる。
勃起したものへと、弥生の顔が近づいてくる。
槍を思わせるような凶暴な雄のものではあるが、妖艶な弥生の顔を前にすると、まるで、猫に与えられた餌のように見えてきた。
これから、食べられちゃうんだ、そう思うと同時に、股間へと、なま暖かいものが触れてきた。
(ああ、舐められてる。僕のものが、舐められている)
鈴口へと、ついさっきまで遥佳の舌と絡まっていた、弥生の舌先が張り付いてくる。
その感触は、オナニーなんかとは比べ物にならなかった。
ねっとりとしていて、柔らかくて、そしてなま暖かい舌先が、鈴口をこじ開けるようにして、縦筋に沿って張り付いてくる。
「ああ、弥生さん。それって、気持ち良いです」
「ふふ、そう言ってくれて嬉しいわ。ああ、久し振りの男のもの……臭いを嗅いでいるだけで、クラクラしてきちゃう」
うっとりとした表情で、弥生は男のものを舐め続けた。
最初は先端だけだったのが、だんだんと周りへと動いていく。
亀頭を被る皮の先へと近づき、そこをこじ開けるようにして、唾液を塗していく。
皮と亀頭の隙間へと、どろりとした唾液が入ってくるのが感じられる。
それと同時に、興奮と刺激のため、亀頭はますます膨らんでいき、皮の部分が後退していくのが感じられる。
ふいに、陰茎へと弥生の手が添えられた。
握られたかと思うと、そのまま下へとずるりと下ろされた。
引っ張られるように、亀頭を覆っていた皮が下りていき、雁首のくびれまで下ろされる。
「ああっ!」
皮を剥かれ、遥佳はわずかに感じた痛みに戸惑いの声を上げる。
ちらりと見ると、被っていた皮は剥かれ、くびれた亀頭の形がさらけ出されている。
雁首の下には、洗われることがなかったためか、白い恥垢が付いているのが見える。
その部分をめざとく見つけた弥生は、舌先を雁首の根本へと延ばしてきた。
「ああ、弥生さん。そんなの、汚いですよ」
「良いのよ。若い男の子の味ですもの。ああ、興奮しちゃう」
弥生は、嫌な顔をするどころか、むしろ酔ったような顔つきで、男の汚れを舌先でぬぐい取っていった。
これまで、直接刺激されることのなかった部分が、女の柔らかい舌先で刺激され、遥佳の興奮は一気に高まっていく。
これまでしてきたどのオナニーよりも強烈で、刺激的な興奮に、若幹の根本へと、熱いものが集まっていくのが感じられる。
「ああ、弥生さん。出ちゃうそうだよ。もう、出ちゃいそうだよ。ご免なさい」
初めての刺激に、早漏になってしまうことを詫びる遥佳だったが、弥生はむしろ嬉しそうだった。
「うふふ。早いってのは、若さの特権よ。それじゃあ……」
言うなり彼女は、遥佳の男竿をくわえこんだ。
「ああっ!」
初めて感じる、亀頭全体への刺激。
なま暖かい吐息の伴った、女性の口中の感じ。
股間の根本で感じる、興奮気味となった弥生の鼻息。
さらに刺激を与えようと、亀頭に張り付いた舌先が、丸みを帯びた全体を、形をなぞっていくように這い回っていく。
全身が舐め回されるような感じに、遥佳の興奮は一気に高まった。
「ああ、もう、出る、出ちゃうよっ!」
許しを請うように頭を上げて、弥生に訴える。
彼女は、それを肯定するように、薄紫の髪の毛を掻き上げて、上目遣いにこちらを見つつ、口先を尖らせて、遥佳のものをしゃぶり続けるのだった。
「ああ、出るぅ!」
背中が反り返り、陰嚢から溢れ出たものが、陰茎の内側から圧迫していき、そして鈴口を抜けて、弥生の口中へと解き放たれる。
「ああ……」
腰が抜けるような開放感が起きると同時に、遥佳のものをくわえていた弥生の頬が、かすかに膨らむ。
直接見ることは出来ないが、弥生の口中に発射してしまったのだ、と思う。
「ご、ごめんなさい……」
年上の女性に、汚いペニスをしゃぶられ、すぐさま射精してしまった。
照れ、恥ずかしさ、申し訳なさ。
それら全てを受け入れるように、弥生は目元に笑みを浮かべつつ、喉を動かした。
(うわあ、僕のが、飲まれている……)
ごくり、ごくり、という音が、耳元まで聞こえてきそうだった。
さらに男のものを味わおうと、弥生はストローを吸うようにして、遥佳のものを吸い立ててくる。
「ああ……」
男の残滓が、弥生の口中へと吸い上げられていく。
それも、さっきと同じように、美味しそうに飲み込んでいくのだった。
「うふふ。若い男の子の味、とっても良いわ」
そう言ってうっとりと微笑む弥生の顔には、さっき以上の妖艶さが感じられた。
「もう口だけじゃ我慢できないわ」
そう言って、弥生は膝立ちになる。
「ねえ、今度は、こっちのお口にちょうだい」
両手の指先を股間へと当てて、その中心にある割れ目を、左右へと広げる。
今度は、遥佳にも、その形ははっきりと見ることが出来た。
左右に広がる、びらびらとした割れ目。
その上にある、小さな突起。
割れ目からは、さっきのフェラチオで興奮したのか、すでに濡れててらてらと輝き、ぽたりぽたりと床へと溢れ落ちていくのが見て取れる。
一度の発射でも大きさと固さを保ったままだった遥佳のものが、そんな光景を見せつけられて、一回りは大きくなったように感じられた。
弥生は、寝そべっている遥佳の上へと跨るようにして、濡れた割れ目を、そそりたつ遥佳のものへと押し当てきた。
「う……」
ペニスの先端へと、なま暖かく濡れたものが張り付いてくる。
その感触は、舌先とはまるっきり違っていた。それ以上に柔らかく、きめ細かく、何よりも、いやらしかった。
亀頭の先端へと、割れ目が触れる。
ゆっくりゆっくりと弥生が腰を下ろしていくと、その先端部分が、ずぶずぶと彼女の中へと飲み込まれていく。
そうやって、彼女の中にゆっくりと入っていく己のものを、包み込まれる快感と共に、遥佳は感じていた。
「ああ、これが女の人の中なんですね……すごく暖かくて気持ち良いです」
「うふふ。そう言ってくれると嬉しいわ」
やがて、亀頭がすっぽりと隠れ、雁首が淫唇によって包み込まれた。
雁首が柔らかいスポンジで締め付けられるような感じが伝わってくる。
雁首のくびれが飲み込まれた時は、すぽん、という音が聞こえてきたかのようだった。
後は一気だった。
そのままずぶずぶと、弥生の割れ目は陰茎を飲み込んでいく。
すぐさま、蜜に溢れた弥生の割れ目が、股間の根本にまで密着してくる。
「ほうら、すっぽりと入っちゃった。どう、私の中は?」
「はい、凄く気持ち良いです。暖かくって、柔らかくって、ぬるぬるしています。
ああ、まるで小さな指先が、何百本もあって、僕のを擦ってくるみたいです」
「そう。私も気持ち良いわよ。遥佳君の、若さに溢れているわ。
ああ、駄目。もっと入れている感じを味わいたいんだけれど、腰が勝手に動いちゃう」
呻き声の通り、弥生の腰は上下に動いていた。
柔らかい粘膜が、遥佳のものを絶えず刺激してくる。
上下に動く膣道の他に、ひだひだの膣壁は、うねうねと動き、腰の動きとは違った感触を与えてくる。
「ああ、また……出ちゃいます」
まさに、三擦り半、と言ったところだった。
初めての女性の中に対して、遥佳は少しもこらえることが出来なかった。
「良いわよ。私の中に出してぇ!」
上下の動きに加えて、腰のひねりの動きが伝わってくる。
まるで、遥佳が蓄えているもの全てをひねり出そうとするかのような動きだった。
「ああ、出ちゃいますっ! 出るっ、出るぅ!」
遥佳の中から、熱いマグマが溢れ出て、腰の上で体をくねらせている熟女巫女の胎内へと吐き出される。
「ああ、入ってくる……遥佳君の熱いもの、入ってくる……」
注がれたものを味わうかのように、弥生の膣壁がうねうねと動く。
「ああ、いっぱい出したわね。私の中、遥佳君のものでいっぱいになっちゃう。
うふふ。こんなに出したのに、まだ固いままね。やっぱり、若い男の子のオチン○ンって良いわね」
弥生の言う通り、二度目の射精をしたのに、遥佳のものは固さを保ったままだった。
挿入をしたまま、弥生が身をせり出してきて、遥佳へと覆い被さる。
遥佳の胸元には、弥生の大きな乳房が当たってくる。
そんな遥佳の耳元で、弥生は囁く。
「もっと出して良いのよ。ううん、出さなくちゃ駄目。いっぱいいっぱい精液出して、あなたのもの、全部出し切って」
その言葉は、催眠術のようにも聞こえた。
そして体を密着させたままに、今度は遥佳自身も腰を動かして、三度目の射精を迎えた。
「ああ、イクっ」
「良いわ。来てるわ。遥佳君の、熱くってたくましいわ」
三度目の射精にもかかわらず、疲れを感じることはまったくなく、むしろもっと射精したくなってきていたのだった。
もはや、遥佳は射精の虜だった。
射精のことしか考えられなくなっていた。
そのままに、遥佳は弥生の中で射精を繰り返し、そして数十回目の射精を迎えた時、股間だけでなく、まるで頭の中で射精の爆発が起こったような気になり――
遥佳は気を失ったのだった。

数分後、あるいは数時間後、時間感覚のないままに、遥佳は目を覚ました。
目を開けると、すぐ近くには、遥佳の顔を見下ろしてくる、弥生の顔があった。
そこには、さっきまで繰り広げられた痴態の様子は無かった。
巫女装束に身を包み、床の上に正座をしたままで、きりりとした目つきでこちらを見下ろしてきている。
ぼんやりとした頭に意識が戻ってくると、遥佳は体に違和感を感じた。
さっきまでは全裸だったはずなのに、何かが身を包んでいる。
それも、普段着ている服のように、ぴったりとするものではなく、ふんわりと全身を包み込むような感じなのだ。
変わっているのは服だけでない。
胸元へと、何か柔らかいものが張り付き、左右の下方へと引っ張っていくような感じがするのだった。
そこを見やると、
「げっ!」
弥生ほどではないが、そこには二つの肉の膨らみが胸元に作り出すもの、いわゆる胸の谷間があった。
仰向けに寝ているのに、その形はほとんど変わらないほどに、綺麗なものだった。
遥佳は慌てて上体を起こした。
両手を着いて上体を持ち上げると、体が軽くなったような感じがするのと共に、腕の力が弱くなったような気がした。
体勢が変わるのと合わせて、胸元に張り付いているようなものの重心が、前へと移り、さっきまでは左右へと引っ張っていたのが、今度は前の方へとずれ落ちそうになる。
「やっぱり……」
上体を起こして改めて見てみても、やはり胸元には、大きな二つの膨らみがあるのだった。
その膨らみは、小袖に包まれていて、下半身の方はと言うと、朱色の袴に覆われている。
「巫女さんに……なっている」
「はい、儀式はつつがなく終わりました」
正座をしながら、弥生が答える。
遥佳は立ちあがった。やけに体が軽く感じられた。
本殿を見渡してみると、身長が低くなったのか、さっきまでよりも天井が高く感じられる。
胸の次に気になるのは、股間だった。
せり出した胸元の先から覗き込むようにして股間を見つめてみると、男にあるべき膨らみは無く、すーすーとした感じばかりが伝わってくる。
触ってみようか、と思うものの、弥生の目が気になった。
「あの、この体、確かめてみて良いですか」
まるで試着でもするような、間抜けな問い掛けだな、と言ってから遥佳は思った。
「はい、あなたの体ですから」
弥生は生真面目に答える。
「それじゃあ……」
遥佳は、袴の上から、股間を触ってみた。
「無い……」
普段オナニーで触り慣れているものは無く、宙を掴むような感じだった。
何度か触れてみると、男とは違って、どうも頼りない感じがしてくる。
そのうちに、その袴の下にあるものを想像して、遥佳はごくりと唾を飲んだ。
ついさっきまで、遥佳のペニスを入れていたものと同じものが、今の遥佳の股間にはある。
見てみたい……遥佳はそう思った。
だが、弥生の手前、さすがにそうすることは出来なかった。
そんなためらいの中、巫女となった自分の体をまじまじと見下ろしていると、
「いつまで自分の体を見ているんですか。そんなことより、早く妖魔を浄化しにいきましょう」
そんな、子供のような声が聞こえてきた。
本殿にいるのは、遥佳と弥生の二人だけだが、その声は、弥生とは違う、背後から聞こえてきたのだった。
「だ、誰?」
思わず振り返る。
「こちらです。わたしです」
その声は、やはり振り返った背後から聞こえてくる。
「今の声は、この神社の僕(しもべ)である、水引き丸のものです。今は、遥佳様を助けるために、ポニーテールを結ぶリボンに姿を変えています」
背中に手をやってみると、なるほど腰まで届く長い髪の毛の後頭部の辺りが、リボンで止められている。
「よろしくお願いします。わたくし、水引き丸と申します。遥佳様のサポートをさせていただきます」
「サポートって、何をするの?」
「妖魔は言葉がしゃべれません。そして、妖魔を浄化するには、妖魔が望むことをしなければなりません。そんな、妖魔の気持ちを読み取るのが、水引き丸の役目です」
「そういうことです。よろしくお願いします」
「そうなんですか。こちらこそよろしく」
「遥佳さん。浄化した妖魔は、このお札に吸引してください」
そう言って弥生は、五枚のお札を遥佳に手渡した。
「それじゃあ、さっそく妖魔を浄化しにいきましょう。道案内はわたくしが務めさせていただきます」
言われた遥佳は、巫女装束に身を包み、本殿を出て、妖魔が潜む街へと出て行ったのだった。

第一章

気絶していた時間が長かったのか、本殿の外に出ると、もう夜中になっていた。
巫女装束という目立つ格好で出歩くには、夜の方が動きやすいと言えなくもない。
「で、どこに行けばいいの?」
「町はずれに、廃墟となったビルがあるのはご存じですか?」
リボンの姿になっている水引き丸が尋ねてくる。
「ああ、あのビルね。確か、バブルが弾けて、テナントが入る前に潰れたとかって言う」
「そうです。今は無人となったあのビルを、妖魔の一匹が寝床としているのです。さっそくそこに向かってみましょう」
「分かった」
そう言って遥佳は、廃墟のあるビルへと向かった。

「ここか……」
廃墟と言っても、朽ち果てたりはしておらず、未完成のままになっているビルが建っていた。
「むむ、妖魔の激しい気配がします。三階です。すぐに行ってください」
「分かったよ」
エレベーターは付けられておらず、非常階段を駆け上がって、遥佳は三階へとたどり着いた。
ぬちゅり、ねちゃ、ぴちゃ……
そこには、粘液が掻き回されるような音が響いていた。
暗がりの中、目をこらして見ると、一人の若い女性が半透明の触手に包まれて、スカートをまくり上げられているのだった。
「んー、んー」
触手は、3本ぐらいの巨大ミミズが絡み合っているように見えた。どうやら、根っこの方では一つに繋がっているらしい。
口を触手で押さえられていて、声を出すことは出来ないようだが、その表情は明らかに助けを求めていた。
「あわわ、あれが、妖魔?」
「そうです。この世に未練を残し、妖魔となっている存在です」
「そ、それじゃあ……」
遥佳は、弥生に渡されたお札を取りだそうとした。
「まだです。今のままでは、お札は効きません」
「それじゃあ、どうしたら?」
「まずは色仕掛けです」
水引き丸が、きっぱりと言ってきた。
「色……仕掛け?」
「そうです。まずは色仕掛けをして、妖魔の気をこちらに惹かれ、そしてわざと襲われるんです」
「うーん」
相変わらず女の子に触手を絡みつけている妖魔を前にして、遥佳は悩んだ。確かに、弥生からもそうは言われていたが、実際にあんなぬるぬるした触手を見せつけられ、それに自分が犯されるのかと思うと抵抗がある。
「何をためらっているんですか。こうしているうちにも、あの捕まっている彼女が襲われてしまうんですよ」
水引き丸の言う通り、触手の先端は彼女のパンツの中へと侵入を開始していた。
必死に目で訴える彼女とも目が合う。
「遥佳様がやらないのなら、わたくしが言いますよ。
やい、そこの妖魔。彼女なんかよりも、こっちの方は、巫女さんでしかも処女なんだぞ」
すると、それまで目の前にいる女の子に絡みついていた触手全体が、ぴくりと動いた。
そしていきなり、彼女から離れて、こちらへと飛びかかって来たのだった。
「うわっ!、そんなに巫女が良いのか、そんなに処女が良いのかっ」
「妖魔と言えど、元は男。そういうものです」
触手に絡みつかれる遥佳に対して、水引き丸は冷静に言ってくる。
「あ、あの……」
それまで絡みつかれていた触手から解放された彼女は、心配そうに遥佳を見つめてくる。
「心配しないでください。僕はこの妖魔を浄化しに来た巫女です。あなたは、すぐに逃げてください」
「わ、分かりました……ありがとうございます」
そう言って彼女は廃墟のビルを後にしていった。
後に残されたのは、巫女姿の遥佳と、それに絡みつく妖魔の触手。
ミミズ色をした、腕ほどの太さのある触手は、巫女装束の上から、遥佳の体を撫で回してくる。
まずは、逃げられないようにと、一本の触手が胴と腕を縛り上げるように巻き付いてくる。
続けて、もう一本の触手で、足首がぐるぐる巻きにされる。
そうやって、遥佳の動きを制したところで、残る一本の触手が、遥佳の顔へと近づいてきた。
「うわっ!」
巨大な触手が、顔へと張り付き、這い回ってくる。
その表面は、粘液で濡れていて、ねとねととしていた。
まさにその色形の通り、ミミズを押し当てられているような、そんな感じだった。
「こんなものに耐えなきゃいけないの?」
ぬめぬめとした気色の悪い感触に、遥佳は鳥肌を立てながら言った。
「野良犬にでも顔を舐められると思って、我慢してください。遥佳様」
背中の水引き丸が、慰めるように言ってくる。
「これじゃあ、野良犬の方がマシだよ」
一本の触手が顔に張り付いてくる合間、他の触手も休んではいなかった。
腕と胴に絡みついていた触手が、だんだんと上へと上がってきて、胸元を下から締め付けるようになる。
弥生ほどではないが、それでもFカップぐらいある遥佳の大きな胸が、下から持ち上げられることによって、さらにその谷間を強調させる。
(うう、他人の胸だったら喜んで見るのに、これが自分のものだなんて……)
自分の胸に谷間があるということは、女の、巫女の体になってしまったことを知らしめるものだった。
そのうちに、単に巻き付いていた触手の動きが、だんだんと変わっていった。
両方の先端が、巫女装束の上から、二つの膨らみそれぞれの麓を這うようにして、それぞれの乳房を根元から締め付けてきたのだった。
(うわっ、おっぱいが締め付けられている)
その感触は、不思議なものだった。
本来、男にはあるはずのない膨らみへと、この世に存在するはずのない触手が巻き付いている。
それは、否が応でも、自分の体は女の物になってしまっているのだ、と遥佳に感じさせるのだった。
巫女装束越しに乳房が根元から締め上げられる度に、乳房は前へと張り出し、白い巫女装束に、二つの盛り上がりを作る。
その中心には、見せつけるように、深い谷間が出来る。
締め付けて来るだけでなく、まるで母乳を絞り出すかのように、もぎゅ、もぎゅ、と触手は絡みついては緩め、の動きを繰り返す。
それに合わせて、巫女装束の下で乳房は形を変え、前へとせり出したり、その若い弾力から、元の形へと戻ろうとするのだった。
胸そのものは男にもある部分ではあるが、乳房を触られるのは、男の時とはまるっきり違っていた。
「く、くすぐったい……」
初めて感じる、乳房をまさぐられる感じは、くすぐったいの一言だった。それも、足の裏をくすぐられるのとは違う、もっと直接的なくすぐったさだった。
例えて言えば、ペニスを軽い羽毛で撫でられている、そう言えば良いだろうか。
ペニスほどには性的な興奮は無いものの、その敏感さを男の体で例えるとしたら、そこしか無かった。
(胸がこんなに敏感だったなんて)
AVを見て、女優が乳房を揉まれているのを見た時には、揉んでいる男の方に感情移入をしていたが、こうやってみると、揉まれる方の女の気持ちが良く分かる。
そうしているうちに、胸への触手の絡まり方が変わってきた。
さっきまでは根元に絡みついていたのが、乳房全体を覆うようにして、とぐろを巻いてきたのだった。
まるで、巫女装束の上から、その形をなぞるようにして、麓から頂へとループを描いて絡みついてくる。
それが終えた時には、胸元は完全に触手に包まれていた。
不思議な光景だった。
元々大きかった乳房へと触手が絡みつき、乳房が二回り以上も大きくなってしまったように見えるのだった。
それも、ミミズ色の触手で出来た、二つの膨らみ。
そんな驚きをよそに、触手はまたしても新しい動きをしてきた。
「ああん」
絡みつけた触手全体で、乳房を圧迫するように締め付けてきたのだった。
体の一部が圧迫されるぐらいならば、満員電車に乗っている時などにも経験するが、乳房が圧迫される感触は、それとは違っていた。
まず、感度が違う。さっき感じたくすぐったさが乳房全体へと広がっていて、それが巫女装束の布地を通して擦り上げてくるのだ。
こんな締め付けられ方は、男の体では考えられないし、女性の体としてもありえないことだった。
男が女の乳房を揉む時には、たいていは片手で一方の乳房を触るため、その全体が包み込まれることは無い。
貧乳であれば、ある程度は包み込まれることは可能だろうが、それでも指の合間などは漏れることになる。
それが、今の遥佳は、乳房全体が、頂上から麓まで、隙間なく揉みしだかれるという体験をしているのだった。
乳房だけが感じられる違いは、それだけではない。締め上げられた乳房の方は、それに反発しようと、若い弾力をもって、触手を内側からはね除けようとしているのが感じられるのだった。
まるで、乳房の中にバネでも入っているかのような、そんな感じなのだ。
乳房なんてただの脂肪の塊なんて話を聞いたことがあるが、実際に女になってみて、人外の触手に揉まれてみると、ただの脂肪の塊だけではないことに気付かされる。
そんな、女ならではの感触を感じているうちに、遥佳は段々と変な感じになってきていることに気付いた。
(ああ、こんな感じ、男には無いよぉ……)
男が揉んで、興奮するためにある器官。
それとは真逆の感じを、遥佳は感じているのだった。
くすぐったさが高まっていき、これまでに感じたことのないものへと変化しようとしているのが感じられる。
(なんだろう……この気持ち……)
ひたすらに乳房をまさぐられている。ただそれだけなのに、不思議と興奮し、体が火照っていくのが感じられる。
(ひょっとして……これが、女の気持ち良さって奴か?)
そう思うと、未知のものとしか言えない感覚も、なんとなく受け入れられるようになった。
乳房全体は、巫女装束越しに触手にまさぐり、弄り続けられている。
「ん……そんなに揉まれたら……変になっちゃう……」
男には未知の感覚を与え続けて、遥佳は苦しげに声を上げる。
それに気をよくしたのか、触手の動きがまたしても変わった。
それまでは装束越しに触っていたのが、両方の先端が揃って、さらけ出されている胸の谷間へと向かい、するりと中へと入っていたのだった。
(うわっ、入ってくる……)
直に乳房で当たってくる触手の触感は、さっき顔を舐められた時と同じだった。
ぬめりとした粘膜に包まれていて、柔らかい乳房にぴたりと張り付いてくる。
さっきまでの触手の責めにより、敏感になっている乳房は、その滑(ぬめ)りを過敏に感じ取った。
(うわあ、ぬるぬるしていて気持ち悪い……)
女の器官で感じる、触手の感触。
またしても、鳥肌が全身に立つ。
そんな遥佳の気持ちを無視して、触手は胸元へと入ってくる。
分担が決まっているのか、二本の触手は、左右それぞれの乳房を這いずり回った。
白い小袖の下で、触手が盛り上がり、はいずり回っているのが見て取れる。
その動きは、男の手のひらなんかよりも、ずっといやらしかった。
その先端は、猟犬が臭いで獲物を探すかのように、絶えずふるふると震えている。
そして、向かう先が決まると、ずいっ、と尺取り虫が這うように動き、巫女装束を下から盛り上げる。
巫女装束越しに見える触手は、まるで長いペニスが乳房をまさぐっているように見えた。
そんな、光景としては男を興奮させるようなものであるが、今の遥佳は、それを身をもって感じているのだ。
敏感になっている乳房へと、直接、触手が這い回る。
その度に、触手が吐き出している、滑(ぬめ)りとした粘液が乳房へと塗りつけられる。
触手の動きに合わせて、巫女装束の布地も、乳房へと擦りつけられる。
聖なる巫女装束のさらりとした感触と、魔なる触手のぞわりとした感触が入り交じり、今の自分が巫女になって、触手に犯されているのだ、という事実を強調してくる。
触手の蹂躙はなおも続く。
肌に密着した巫女装束の中で、乳房の柔らかさと、軟体動物の持つ触手の柔らかさという、まったく異なる位置に属する感触が、圧迫しあい、乳房へと未知の感触をもたらしてくる。
「ああ……あは……」
乳房を揉まれるという、初めて感じる女の快感に、遥佳は戸惑いつつも、口からは自然と声が漏れていた。
「うわあ、こんなの……嫌だよう……」
女の体が感じる快感には興味があったが、それ以上にそれを与えているが、妖魔である触手なのだ、ということに、遥佳は抵抗感を感じていた。
「遥佳様、もっと素直に感じるのです。それが、妖魔を満足させて、浄化させるための一番の近道なのです」
背後から、リボンの姿をした水引き丸が言ってくる。
「それは分かっているけれど……あふぅっ」
乳房からわき上がってくる、女としての快感に耐えようと、遥佳は歯を食いしばった。
しかし、そんな遥佳をさらに責め立てようと、触手は乳房をまさぐり続けていた。
「はうぅっ!」
歯を食いしばっていた遥佳が思わず声を上げてしまったのは、乳房の先端から、ぴりぴりとした刺激が来たからだった。
ペニスからの刺激を、一点に集中させたかのような、そんな快感を伴った刺激だった。
ちらりと見ると、巫女装束の下では、触手の先端が、乳房の頂へと集まっているがの見て取れる。
(乳首……責められてる)
男にもあるはずの器官であるが、そこから伝わってくる感じは、まるっきり違っていた。
乳房をまさぐられる感覚がくすぐったさを伴った気持ち良さであるのに対して、乳首を触られる感覚は、気持ち良さを伴ったくすぐったさなのだった。
強烈な、女としての快感。
「そんなの……嫌だよぅ……」
まだ浄魔巫女としての役割に、そして女としての体に徹し切れていないため、遥佳はいやいやをするように首を横に振り、乳房から目をそらす。
そんな遥佳に見せつけるように、さっきまで顔を這っていた触手の一本が、遥佳の後頭部を押さえつけ、視線を乳房へと向けさせる。
同時に、それまで巫女装束の下をまさぐっていた触手は、小袖の胸元をはだけさせ、触手に絡まれた乳房をさらけ出させた。
遥佳の視界には、触手に絡みつかれた、己の乳房が見せつけられる。
触手の粘膜に塗りたくられ、透き通るような乳房を、夜目にも浮かび上がらせているかのようだった。
その頂の先端では、ピンク色をした可愛らしい乳首が、触手の先端によって弄ばれている。
図太い触手が触れてくる度に、びくり、びくりとした快感が伝わってくる。
触手はさらに乳首を責め立てようと、その先端の形を変えて、人間の指先程度に細くした。
遥佳の意識とは無関係に、責め立てられ、反応して固くなっている乳首が、細い触手の先によって、ころころと転がされる。
「あふぅ、うくっ……」
その度に、ぴりぴりとした快感を伴った刺激が、乳首から伝わってくる。
遥佳は、思わず声を上げてしまう。
そんな反応に気をよくしたのか、触手の形が、またしても変わった。
今度は、糸のように細くなり、尖った乳首の根元へと巻き付き、糸で縛るような形になったのだった。
「ひぎぃっ!」
突然の刺激に、遥佳は悲鳴のような声を上げる。
その光景から、痛みのようなものを感じるかと思ったのだが、そうではなかった。
乳首が縛り上げられ、四方から同時に責められるような快感が、湧き起こったのだった。
「うわぁ、そんなのって……」
人間の指先では不可能な責めに、遥佳の心とは裏腹に、巫女の女体は敏感に反応する。
縛られ、ますます乳首は尖り、それに合わせて敏感になっていく。
さらには、触手の刺激を自ら欲するかのように、乳房全体が熱を帯びていき、まるで膨らんでいくかのような感じになっていくのだった。
乳首と乳房への責めが続く中で、突然、遥佳の口中へと、一本の触手が侵入してきた。
「ん……」
太い触手で、口の中が一杯になる。
そのまま先端が喉奥まで来たかと思うと、口中でぶわりと広がり、何かの粘液をその先端から喉奥へと発射したのだった。
触手の根元に鼻を押さえられていた遥佳は、それを飲み込むしかなかった。
どろりとした粘液が、喉を伝い、胃へと落ちていく。
(な、何……?)
飲まされたものの正体を理解する前に、遥佳の体で変化が起こった。
全身が熱くなり、そして敏感になっていくのだった。
一番の変化は、股間の部分だった。
それまで足下を縛られていて、何も触れる物がなかったのに、さっきまでまさぐられていた乳首以上に熱く、敏感になっているのだった。
股間の変化はそれだけではない。
股間の奥にある、何だか分からない部分が熱くなり、そこから、トロトロと、熱いものが流れ出ていくのが感じられるのだった。
股間の、ペニスがあったはずの場所が熱く火照り、じわりと何かが染み出していく。
「うわあ、なんか変だよ。股間が、熱くって、疼いている……」
口中へと粘液を流しこんできた触手が、その役目を終えたかのように口から離れるなり、遥佳はそう叫んだ。
「な、何なの、これ? これ、何?」
訳も分からずに、遥佳はわめき立てる。
股間が疼く感覚は、男の時にも経験したことだった。
だが、今感じているのは、それとは正反対の感じなのだった。
男の時には、射精したくてしょうがないと思っていたのが、今はその逆で、何かが欲しくてしょうがないのだった。
だが、それが何なのかは分からない。
「何だよぉ。体が、変だよぉ」
そうやって戸惑う遥佳の股間へと、足下を縛っていた触手が近づいてきた。
「ま、まさか……」
股間へと近づいてくる触手は、男のものを想像させた。
触手に、犯される。
男であったはずの自分が、触手に犯される。
巫女になっている自分が、触手に犯される。
そう思った遥佳は、全身で暴れて抵抗しようとしたが、触手に縛られているため、満足に体を動かすことが出来なかった。
遥佳の抵抗を抑えているのは、触手だけではない。
自らの、股間の疼きは、遥佳の意識とは逆に、自然と足を開かせ、触手を迎え入れようとしているのだった。
足下に絡みついていた触手は、袴を巻いている腹部の部分まで伸びてきていた。
そのまま、袴と小袖の間へと入り込む。
見ると、袴を結んでいる紐の辺りが盛り上がり、まるで巫女装束が勃起をしているようだった。
その先端は、腹部の部分から、股間へと向かっていく。
「やだ、やだ、やだよぉ……」
遥佳は意識では嫌がるのだが、触手による外側からの押さえつけと、乳房へのまさぐりと、さっき飲まされた粘液――おそらく媚薬なのだろう――の、内側からの興奮によって、意識の通りに逆らうことが出来なかった。
まるで、人形のように、触手のままに体を開き、股間に触手を迎え入れるのだった。
股間の部分は、自らが吐き出したもので、尻の辺りまで濡れているのが感じられる。
男のものを受け入れる準備を、今の体が勝手にしてしまっていることに遥佳は驚き、そして戸惑う。
そんな遥佳をなだめるように、乳首への刺激が、またしても伝わってきた。
「ああ……」
何度も味わわされている快感に、男としての遥佳の意識は朦朧としてくる。
そして、女としての快感に、浸蝕されていく。
(乳首だけでもこんなに気持ち良いんだから、アソコに入れられたらどうなるんだろう……)
そんな好奇心が一瞬湧き起こり、そしてそんなことを思ってしまった自分に対して、嫌悪感を感じ、遥佳は首を必死に左右に振る。
だが、そんなためらいとは関係無しに、触手は着実に狙う場所へと近づいてきていた。
「ひぃっ!」
股間へと、ぬめぬめとして太いものが当たってくる。
「いやだ……恐い……」
今の遥佳の気持ちは、まさに処女を失おうとしている女の子のそれだった。
目はこわばり、歯がかみ合わず、かちかちと鳴る。
人間の男であれば、そんな遥佳の様子を見たら、戸惑いはするだろう。
だが、相手は人間ではなく、欲望の権化である、妖魔なのだ。
そんな遥佳の様子などお構いなしに、一気に入り込んでくる。
「うわぁぁぁぁぁぁっっっ!」
めりめりめりめりぃ
触手が、まるでそんな音を立てるかのように、勢い良く入ってくる。
「痛い、痛いよっ。止めてぇ」
未開の狭い地へと、野太い触手は乱暴に入ってくる。
まるで、体が引き裂かれるような、そんな感じだった。
だが、触手の動きは止まらない。
なおも、めりめりと入り込んでくる。
袴の股間部分が盛り上がり、袴の上からでも、触手の乱暴さが見て取れる。
「痛いよ、痛いよ……」
そうやって入り込んでくる触手の動きが、一瞬止まった。
(終わった……のかな?)
遥佳は、そう思った。
だが、そんな油断につけ込むように、触手はなおも侵入してくるのだった。
それも、さっきまでのように、めりめりと入ってくるのではなく、何かの壁を突き破ろうとするかのような、強い圧迫感が伴っていた。
(これって……まさか……)
遥佳が、いつか男として体験したいと思っていたこと。
それと逆のことが、今の遥佳に起こっているのだった。
「ひぎぃぃぃぃぃ!!!」
体を突き破られるかのような強烈な痛みに、遥佳は激しい悲鳴を上げる。
破瓜の痛み。
女が、一度だけ体験する痛み。
それを、男であるはずの遥佳が、まさに初体験しているのだった。
「痛いっ、痛いっ」
股間から、股間から湧き出る愛液とも、触手が吐き出す粘液とも違う体液が、つぅ、と流れていくのが感じられた。
おそらくは、破瓜の際に流れる血なのだろう。
朱色の袴の下で行われていることなので、見ることは出来ないが、まるで、その朱色の袴全体が、破瓜の血によって染められているかのように見える。
触手はなおも遥佳の中へと入ってきていた。
それはまるで、永遠に遥佳の中へと侵入し、やがては口から出ていくのではないかと思えるほどだった。
もちろん、女体の仕組みから言って、そんなことはあり得ないのだが、初めて股間へと他者のもの――しかも触手――を入れられる経験をしている遥佳にとっては、そんな妄想すら本当に起こりえそうに思えた。
幸い、というべきか、触手の動きは途中で止まった。
同時に、股間の奥底にある、男には無い器官が、圧迫されるような感じが伝わってくる。
その感じは、まるで1メートルもある杭を体に埋め込まれているかのようだった。
感じられるのは、痛みだけだった。
男の体で怪我をした時のとはまるっきり違う、体の奥で感じる痛みだった。
奥深くまで埋め込まれた触手が、ゆっくりと身を引いていく。
「ああ……」
わずかに痛みが取れる開放感が、遥佳の股間から感じられる。
そして、抜けるか抜けないかの直前に、再び触手は遥佳の股間へと押し入ってきた。
「あぐぅ……」
まだ破瓜の痛みは残っているが、さっきほどの強烈な痛みは無かった。鈍痛とはこういうことを言うのか、と遥佳はふと思う。
股間から溢れる愛液、触手が生み出す粘液、そして破瓜の血が混じり合い、ねちゃり、ねちゃり、という淫靡な音が響き渡る。
神聖なる巫女の処女を、邪悪なる妖魔が奪い取っていく。
その様が、袴の中で繰り広げられている。
朱色の袴の中で、図太い触手が蠢き、淫らな波を作っていくのが見て取れる。
それと同時に、股間にはその触手が出入りを繰り返している。
そんな光景を見ているうちに、徐々に痛みが変化してきた。
痛みそのものは感じているのだが、その痛みが、同時に快感の一つと感じられるようになってきたのだった。
「そんな……痛いのが気持ち良いなんて……これじゃあ、僕、変態だよ……」
そうならないよう、自分に言い聞かせるように遥佳は呟く。
だが、女としての体は、触手の動きを受け入れ始めていた。
膣壁が触手の動きに合わせるようにうねうねと動き、その動きをさらに高めようと、淫らな蜜を流し、子宮がだんだんと下へと降りていく。
触手の動きは、男のペニスとは違っていた。
単なるピストン運動だけでなく、中で雁首をいくつも作り何重にも膣襞を擦り上げるかと思うと、太くなったり細くなったりして、膣内を圧迫してくる。
「あぐぅ……こんなのって……」
人間のペニスでは与えきれない、膣一杯を使った動きに、遥佳は翻弄されていく。
それと同時に、乳房へと巻き付いている触手は、小袖の襟元をはだけさせ、こぼれ落ちた乳房を、乳首中心に責め立てる。
ぐちゅり、ぐちゅり……
股間での触手の動きが速くなってきた。
ずしん、ずしん、と一突きされる度に、全身が揺さぶられ、持ち上げられるような気がする。
ふいに、触手がぶるぶると震えたかと思うと、そのまま奥深くまで突き入れられ、その中で、熱いものが弾けた。
「うわぁぁぁぁっっっ!」
どくん、どくん……
体の中に、どろりとしたものが入ってくる。
こんな体験は初めてのことだった。
(精液、出されちゃった……)
触手が出したものだから、精液と言えるかどうかは分からないが、遥佳にとっては女として挿入され、中で吐き出されたものは、精液だとしか思い浮かばなかった。
その圧迫感たるや物凄いものだった。
触手の密着感と言っても、それには限度があった。だが、触手の出した粘液は、子宮口を通って、子宮を一杯に満たすのだった。
とても人間の出した量とは思えない。子宮が一杯になり、腹が膨れるほどに感じられるのだった。
「ああ、まだびくびく言ってるぅ……」
触手の動きが、少しゆっくりとしたものになった。
「遥佳様、遥佳様」
背後から、水引き丸の声が聞こえる。
「今です。お札で吸引するのです」
「え、あ、そうか……」
初めての体験続きにぼんやりとしていた遥佳は、胸元からお札を出して、触手へと掲げる。
「吸引!」
お札が光り、その光が消えると同時に、お札の中へと触手は吸い込まれていった。
腰が抜けたような中で、遥佳はどうにか立ちあがった。
小袖や袴ははだけたままだが、触手本体と共に吸引されたのか、膣内へ射精されたものは消え失せていてい、ただ、破瓜の痛みだけが残っていた。
「これで一匹目の吸引は終わりました。それじゃあ、神社へと戻りましょう」
水引き丸が労をねぎらうように言ってくる。
「そ、そうだね」
遥佳は立ちあがって歩こうとしたのだが、まだ破瓜の痛みが残っている。
まるで、股間に棒が刺さったままのようなのだ。
「うう、痛い……女の子ってこんなに痛いんだね……」
巫女装束の袴のために余り目立たないが、遥佳の歩きは自然とがに股になっていた。
そんな痛みを感じつつ、将来、自分が女の子の処女を奪う時には、優しくしてあげようと思った。
それがいつになるかは、遥佳にも分からなかったが。

第二章

巫女の姿のままに家に帰る訳にもいかず、親には友達の家に泊めてもらうと連絡しておいて、遥佳は神社へと泊まった。
翌朝のこと、水を打つ音で、遥佳は目が覚めた。
音のする方へと向かっていくと、そこには井戸があり、弥生が水垢離(みずごり)をしている姿があった。
遥佳に気付いた弥生は、手を止めて、遥佳に笑顔を向けた。
「あら、遥佳さん。昨日はお疲れ様でした。どうですか? 体の具合は?」
男にして、処女を失ってしまった遥佳は、まだ股間に異物が挟まっているような気持ちだった。
「ええ、まだなんか変な気分です。未だに、僕が巫女さんになったのが信じられません」
「申し訳ありません。それも神の御心ですから」
弥生は、水垢離で濡れて、豊満なスタイルを貼り付けさせている小袖を整えつつ、ぺこりと頭を下げる。
そういえば、昨日は彼女とセックスしたんだよな、と遥佳は思い返し、頬が赤く染まるのを感じた。
「どうですか? 巫女としての体は?」
「やっぱり、男の体の方が良いです。どうも慣れなくて……」
素直な気持ちを、遥佳は口にした。
「やはり、男性の体の方が良いですか。でも、女性の体もなかなかですよ。なんでしたら、女体の良さを、教えて差し上げても良いですわよ」
ぴたり、と弥生は濡れた小袖に包まれた体を密着させてくる。
体は巫女でも、心は男、やはり妙齢の女性にくっつかれると、ドキドキする。
「け、結構です……」
「あら、もったいないことを言うのですね。でしたら、遥佳さんが男性に戻った時には、また目合(まぐわ)いましょう」
「え、そうしたら、また巫女になっちゃうんじゃないですか」
「いえ、そういうことはありません。今度は単に、お礼の気持ちからです。それとも、こんなおばさんの体じゃ、嫌かしら?」
口に人差し指を当てて、弥生は、すねたような仕草をする。
「そ、そんなことありませんよ。弥生さんの体、とっても綺麗です」
昨日のことを思い出しながら、遥佳は頬を染める。
「うふふ、そう言ってくれると嬉しいわ。それじゃあ、わたしは朝食の支度をしますので」
そう言って弥生は去っていった。
「どうですか。遥佳様も水垢離をされては?」
そう言ってきたのは、遥佳の髪の毛を結ぶリボンの姿になっている、水引き丸だった。
「そうだね。汗もかいたことだし……」
夏の朝には井戸の水は気持ち良いだろうと、つるべを引っ張った所……
「うわっ!」
遥佳が驚きの声を上げたのは、桶の中に、くねくねと身をうねらす、触手の姿があったからだった。
「いきなりまた触手っ!」
突然のことに、遥佳は叫ぶ。
「遥佳様、この触手、探している妖魔の中の一匹です」
「そんな、ここって神社の中でしょ。魔を入れないための結界とかそういうのって無いの」
「ちゃんとセ○ムには入っているのですが……」
「そういう問題じゃないでしょうが」
「巫女になった遥佳様の存在が、妖魔を惹きつけているのです。さあ、早く色仕掛けを」
「わ、分かったよ……」
前回は、水引き丸の呼びかけで妖魔が近づいてきたのだが、さすがにあれだと心の準備が出来てないということで、あの後で話をして、今度は遥佳自身が色仕掛けをすることになっていたのだった。
「ええと……」
遥佳は、巫女装束の胸元を開き、肩を見せるような仕草をしてから、
「うっふーん」
そう言ったのだった。
しかし、触手は何の反応も示さなかった。あいかわらず、くねくねを身を動かしているだけだった。
「襲ってこないよ?」
リボンの姿をした、水引き丸へと尋ねる。
「ちょっと探ってみます……分かりました。属性が違うからです」
「属性って何さ?」
「妖魔の性癖みたいなものです。この妖魔が求めているのは……わかりました。ツンデレ痴女巫女さんです」
「ツンデレ……痴女……巫女」
まるでカードを引いてランダムに並べたような言葉に、遥佳は茫然とする。
「そうです。ツンデレ痴女巫女です。この妖魔は、元々人間だった時に、ひたすらその属性を追い求めていました。
ツンデレ痴女巫女を求めること、日本で三十年、中国で三十年、インドで三十年……」
「いや、インドにはそもそも巫女さんは居ないし……」
「長い旅を経ても、求める巫女さんは居ませんでした。そうして、彼は世をはかなんで……」
「自殺した、とでも?」
「正月に雑煮のお餅を喉に詰まらせて死んだのです」
「出た、正月の裏風物詩!」
「さあ、まずはツンデレからです。高飛車な態度に出て、相手の気を惹くのです。そして、エッチシーンに入った頃からデレになります。興奮が高まってきたら、痴女っぽい行為と言葉を言うのです」
「わ、分かったよ……」
そう言って、遥佳は触手の方を指さして、
「べ、別にあなたのために巫女になったんじゃないからね」
途端、くねくねと動いていた触手が動きを止めて、まるで着いていない顔をこちらに向けるような動きをした。
ぐわっ、と蛸が獲物に絡みつくように、触手を広げて飛びついてくる。
「反応、早っ!」
驚いている暇もなく、遥佳は触手に絡みつかれた。
巫女装束の上から、蛸状の触手が、べたりと張り付いてくる。
「く、くすぐったい……」
服の上で触手が動く度に、巫女装束の布地が肌に擦れてくる。
「ほらほら、遥佳様。もっとツンツンとした態度を取って、触手をその気にさせるのです」
「わ、分かったよ。
べ、別に、あなたのために巫女装束を着ているんじゃないんだからね。たまたまクリーニングに出していて、他に着るものが無かったからよ」
言いながら、そんな状況あるのかと遥佳は思うのだが、触手にはそれでも良いらしい。触手が少し太くなったように見えた。
「遥佳様、その調子です。もっとツンツンと」
「べ、別に、あなたに体を差し出したい訳じゃないからね。これは義務なのよ。巫女としての義務でやっているんだからね。勘違いしないでよ」
べったりと触手が遥佳の体へと絡みついてくる。
八本あるうちの一本が顔に近づいてくると、形が蛸に似ているせいか、その表面には蛸と同じく吸盤のイボイボがついているのが見えた。
近づいてきた一本が、口へと入り込んできた。
細い先端部分を利用して、舌先へと触手が絡みついてくる。
「んー、んー」
触手とのディープキスに、遥佳は呻き声を上げる。
まるで、蛸を生のまま口にしているようで、気持ち悪いと言えなくもないのだが、そこから放出される粘液には、やはり媚薬でも入っているのか、舌が絡みつくうちに、だんだんと変な気持ちになってきていた。
舌先が敏感になり、触手のヌメヌメとした感触が心地よい弾力に感じてくる。
吸盤のイボイボが、舌の表面へと吸い付いてきて、跡を残すかのように、張り付いてくる。
女の体は、フェラチオをすると、自分から感じるようになんてエロ話を遥佳は聞いたことがあるが、それは本当だったんだな、と思えてきた。
口に入ってくる触手の数が、もう一本増えた。
一方は舌先に絡みつきながら、もう一方は、歯茎や口の裏側を撫で回してくる。
(うう、なんだか口の中が痺れるみたいだ……)
触られているうちに、口の中が敏感になってくる。こんな感覚は、男の時には無かったことだ。
その敏感さは、口中の触手の形や太さを感じ取らせ、やがてそれが、だんだんと頭の後ろの方が痺れるような感じへと変わっていった。
(うう、気持ち良いよぉ……)
自然と、遥佳の方から舌先を動かして、触手へと絡みつくようになった。
すると、それを無視するかのように、触手の方が、遥佳の口からするりと抜け出していった。
「え、これからだったのに」
不思議に思う遥佳に対して、水引き丸が声を掛けてくる。
「遥佳様、それじゃあツンの要素が足りません。もっと厳しい言葉を浴びせないと」
そうされるのを待ち構えるように、触手の方も、遥佳の顔先でうねうねとくねっている。
「別にあなたのキスなんかで感じた訳じゃないからね。あなたとキスするぐらいなら、歯磨きでもしていた方がよっぽど気持ち良いわ。
って言うか、今のはキスじゃないわよ。いわゆるノーカウントね」
そんな言葉に気を良くしたのか、触手は遥佳の体へと絡みついてきた。
二本の触手が、左右の乳房へと、小袖越しに絡みついてくる。
男の手のひらのと違って、細い触手の感触は、紐を巻き付けられているかのようだった。
二本の紐が、小袖越しに乳房に絡みついてくる。
意識をもったそれは、蛇と言った方が良いかも知れない。
そう思うと、なんとなくぞっとしてしまうのだった。
「なによ、わたしのおっぱいを触るだなんて、あなたには百万年早いわよ。止めなさいよ、気持ち悪いじゃない」
しかし触手の動きは止まらない。むしろ、そう言われてますますいきり立つように縛り着いてくるのだった。
触手が乳房から背中へと周り、両手が後ろ手にされて、腰へとくくりつけられる。
それから、ぐるりと一周して再び乳房へと戻ってくる。
さらに、乳房の合間へと触手が伸び、谷間を割くように渡される。
乳房の上下へと触手が縛り付けられ、ちょうど、SMで言う亀甲縛りのような形をさせられてしまった。
縛られている遥佳の目線からは、乳房の下側が締め付けられているのは見えないので、いわゆる亀甲の形になっているか見知ることは出来ないのだが、小袖越しに乳房が上下と中心から触手に圧迫されて、柔らかい乳房が前へとせり出しているのを感じ取ると、亀甲縛りをされている、巫女装束姿の自分が頭に浮かび、思わず興奮し、同時に、そんな自分自身の姿に性的興奮を感じてしまったことを、気恥ずかしく思うのだった。
「離しなさいよ。わたしを縛るだなんて、ただじゃ済まないわよ」
そう言って遥佳は体をくねらせて、触手から逃れようとするのだが、結ばれ方のせいなのか、触手の意志がそうしているのか、遥佳を締め付けてくる力は、ますます強くなっていった。
「いい加減、縛るのを止めなさいよ。わたしはむしろ、縛られるよりも縛る方が好きなんだから」
だが、触手の動きは止まらない。
上半身の自由を奪ったということで、今度は下半身へと向かっていったのだった。
触手の先端が、股間の部分を通り抜けて、袴の裾まで伸びる。そこから先端を折り曲げて釣り針状にして、袴全体を持ち上げるようにした。
引っ張られて、袴と小袖、さらにはその下にある腰巻きまでがたくし上げられていき、遥佳の生足がさらけ出される。
触手の動きは素早く、朱色の袴と、柔らかい曲線を描くふくらはぎの白さが対比されたかと思うと、その次にはむっちりとしたふとももまでが露わにされる。
遥佳が着ている緋袴は、正式な襠(まち)有袴ではなく、スカート状の行灯袴だった。そのため、このまま小袖と共にまくり上げられたら、下半身が丸見えになってしまう。
「や、止めなさいよ。わたしの大事な所、そんなことされたら見えちゃうじゃない。あなたなんかに、わたしの大事な所、絶対に見せないんだからね」
言われたからそうしたのかどうか、触手は下半身を見せるようには、袴をまくり上げることはしなかった。そのまま、袴と小袖を引っ張り上げて、ちょうど股間の所に丸めるようにしたのだった。
くるめられた袴と小袖のため、触手に股間を触られることは無かった。ただ、装束を持ち上げられ、両脚を剥き出しにされ、まるで袴で作られたおむつを履かせられているような格好に、遥佳は戸惑いを覚えた。
「なによ、わたしにこんな変な格好をさせて。覚えてなさいよ。あんたなんか、古新聞でも縛って、ちり紙交換にでも出されちゃえば良いのよ」
触手の引き締めはますます強くなっていく。
巫女装束の上から、柔らかい触手に締められているので、肉に食い込むような痛みは無いが、やはり体の自由を奪われているという束縛感は大きかった。
触手の先は、さらに伸び、剥き出しにされているふとももとふくらはぎ、そして足下へと向かっていく。
膝頭と足下へと触手が絡みつき、その細さとは不似合いなほどの力強さで、遥佳の足の形を変えていく。
両脚が左右へと開かれ、膝が折り曲げられる。
いわゆる、M字開脚の形に、遥佳はさせられてしまった。
(これじゃあ完全にSMの世界だよ……)
両手は後ろ手に縛られ、体は亀甲縛り、足はM字開脚にされてしまっている。SMとの違いと言えば、遥佳を縛っている縄そのものが意志を持って縛り上げていることだった。
SMは、縛り上げ、責め立てる相手があって成立するはずのもの。
遥佳にとっては、その相手が、縄自体なのだ。
ふと遥佳は、インターネットで見かけた、SMの写真を思いだした。
そこには、縛っている男の姿は無く、ただ縛られている女性だけの姿があった。
いわゆる、放置プレイ、という奴だ。
触手に縛られ遥佳は、自らが放置プレイをされているような気持ちになってくる。
そうすると、段々と弱気な気持ちになってくる。
「こ、こんなの嫌だよう」
そう呟くと、触手の締め付けはさらにきつくなってきた。痛みこそ無いが、全身への圧迫感が遥佳を襲う。
「く、苦しい……」
すっかりSMプレイをされている気分になっている遥佳は、どうしてマゾの人は、こんなことが楽しいのだろうかと考えた。
「遥佳様、そんな弱気になっては駄目です」
そう言ってきたのは、髪を縛るリボンとなっている水引き丸だった。
「いまはツンツンしなければならないのです。さあ、もっと強気なことを言ってください」
「わ、わかったよ……こんなチンケな触手でわたしを縛ってどうする気? 別にわたしは、痛くもかゆくもないわよ。
見てなさいよ。あとであんたのことを蝶々結びにして、それを鞭でひっぱたいてあげるわよ」
「そうです。その意気です」
「いくらわたしの体を縛ろうとも、この心は何人(なんぴと)にも縛ることは出来ないのよっ!」
言って遥佳は、ぐっ、と胸を張る。
そんな、高飛車女の台詞を口にしているうちに、遥佳の気分は高揚してきた。
自分が女の声を出し、それも高飛車な台詞を言うことに、不思議な快感を感じるようになってきたのだった。
「どんなに縛った所で、このわたしを屈服させることなんて出来ないのよっ! 最後に勝つのは、このわたしよ」
「良いです、その調子です」
ふと、触手の締め付けが緩んだ。
どうしたのかと思って見ると、縛り着いていた触手の先端が、遥佳の胸元から小袖の中へと入り込もうとしているのだった。
それまでは巫女装束越しに触れていた触手が、直に素肌へと当たり、ねとりとした感触が伝わってくる。
「ちょっ、わたしの高貴な肌に直接触れてくるなんて、身をわきまえなさいよっ」
相変わらずツンツンとした態度で言うのだが、触手の動きは止もうとしない。
「遥佳様、妖魔はツンの方には満足したようです。今度は、デレの番です」
「ええ、そうなの……」
高飛車女の態度を取ることに興奮を覚えていた遥佳は、ちょっとがっかりした気分になった。
そうは言っても、妖魔を満足させるためには仕方がない。
いきなりの方向転換を言われて、遥佳は戸惑う。
「意識の切り替えです。さっきまでは女が言って嬉しい言葉だったのを、今度は男が言われて嬉しい言葉にするのです」
なるほどそういうものか、と遥佳は思う。
しばらく考えた末に、
「もう、そんな所を触ってエッチなんだから。でも、あなたにだけなら、特別にこの体を自由にしても良いわよ」
そう言って、遥佳は体をくねらせた。
その効果は抜群だった。
最初は探るように動いていた触手が、一気に胸の谷間へと侵入してきたのだった。
「く、くすぐったい……」
潜り込んできた触手は、まだ乳房の左右が装束越しに縛られて密着している胸の谷間へと入り込み、そこでピストン運動をしてきたのだった。
胸の谷間で、触手が、きゅっ、きゅっ、と上下に動く。
触手の方が動きの中心となるパイズリ状態となった。
遥佳にしてみれば、目の前にある自らの胸の谷間へと、触手が出入りをしているのだ。
男であればAVのパイズリ場面を見ているようなのだが、今の遥佳はそれを身をもって体験している。
柔らかい乳房が、上下に動かされ、時には胸の谷間が一層強調され、時には胸が下へと引っ張り下ろされる。
「凄いエッチな動き……でも、あなたがしてくれるんだったら、わたし、良いよ」
言って、胸を突き出し、相手に差し出すような仕草を、遥佳はする。
触手の方は、巫女装束越しに絡みついていた触手をほどき、それら全てを胸元へと入れてきた。
押されるようにして、遥佳の胸元が開き、乳房がさらけ出される。
見ると、さっきまで触手に縛られていたせいか、白い乳房の根元に、縛られたような赤い跡が残っていて、乳房の白さを強調するような、妙ないやらしさを感じさせられる。
さらけ出された乳房へと、触手が集中する。
吸盤状のイボイボがある面を乳房へと貼り付け、まるで医者が患者を診断するかのように、ぺたり、ぺたり、と探っていく。
その際には、いくつもの吸盤が柔らかい乳房に張り付き、その表面を吸い上げていく。
触れては離していく触手の刺激は、絡みついてくるだけの触手とは違ったものだった。
吸われる度に、乳房が膨れるような気がして、その柔らかさを思い知らされる。
だんだんと、白い肌に丸い吸盤の跡が付いていく。それはまるで、触手にマーキングされているかのようだった。
「ああん、わたしのおっぱいに、あなたの印がいっぱい付いていくぅ」
甘い声で、遥佳は呟く。
「ねえ、もっと吸っていいのよ。わたしのおっぱいを吸って良いのは、あなただけなんだから」
それに満足したかのように、触手が張り付いてくる時間は長くなっていった。
まるで、キスをするかのように、いくつもの吸盤が張り付き、その表面を吸い上げていく。
乳房全体が、引っ張られるような感覚に、遥佳の乳房は甘く疼く。
根元の方からマーキングを繰り返してきた触手は、ついにその頂までたどり着いた。
吸盤の一つが、尖った乳首へと、ぴたり、と張り付く。
「ああん、そこ……そこは敏感な場所なんだから……でも、あなただったら、どんなことをしても良いよ」
張り付いていた吸盤が、きゅうっ、と乳首を吸い上げてきた。
「ああん、わたしの敏感な場所、吸われてるぅ……」
勃起した乳首を吸われるのは、男には無い感覚だった。
音こそたてないが、ちゅうちゅうと乳房を吸われていると、なんとなく赤ん坊におっぱいを吸われているような気持ちになってきて、不思議と落ち着いた気持ちになってくるのだった。
(ああ、なんだか不思議な気持ち。ひょっとして、これって母性本能って奴?)
吸われても母乳が出たりすることは無いのだが、触手は相変わらず乳首を吸い立ててくる。
「うふ、まるで赤ちゃんみたい。でも、あなただったら、赤ちゃんみたいに甘えてきても良いのよ」
触手は、乳首を吸うだけではなかった。
せり出した乳房へと巻き付くように絡みつき、根元から頂に向けて、ぎゅっ、ぎゅっ、とミルクを絞るような動きをしてきたのだった。
絞られ、吸われるという、乳房へならではの愛撫に、遥佳は女の体を実感する。
「こらこら、そんなに絞っても、おっぱいは出てこないぞ。ああん、あなたの動き、とってもいやらしい。赤ちゃんはそんなことしないわよ」
いたずらっぽい言葉を、遥佳は口にする。
触手はさらに伸びてきて、空いていたもう一方の乳首へも、その吸盤を貼り付けてきて、同時に乳房を絞るようにしてきたのだった。
左右の乳首両方が吸われ、揉みしだかれる。
一人の人間には出来ない、触手ならではの動きだった。
「ああん、両方一緒に吸ってくるなんて、本当にエッチなんだから。でも、そんな熱心さ、わたし、嫌いじゃないな」
吸われ、絞られているうちに、乳房の表面から奥にかけて、甘い疼きが膨らんでいく。
興奮しているのは、乳房だけでは無かった。
乳房と神経が直結しているかのように、股間が疼いてくるのだった。
男のように、血が集まって固くなり、そこだけに意識が集中するのとは違う、まるで股間全体が熱を帯びてとろけるような感じなのだ。
足へと絡みついていた触手の締め付けもゆるまっている中で、自然と股間の力が抜け、両脚が開いてしまう。
それをめざとく見つけた触手は、遥佳の袴をスカートを捲るようにしてたくし上げ、さらにその奥にある小袖と腰巻きも左右へと開いたのだった。
自らの股間がさらけ出される。
触手に股間をまさぐられるのは、昨夜に続いてのことだったが、前回は巫女装束の下で行われたのに対して、今回は遥佳からも見える状態で行われているのだ。
これまで、あまりまじまじと見ることの無かった部分が見せつけられる。
それが自分の股間であるとはどうにか理解できるのだが、やはりあるべきものが無いのは不自然だった。
薄目のヘアだけが生えていて、そこにはペニスがなくなってしまったことを強調するように、割れ目が作られている。
これまでにインターネットで無修正の女性器を見たことはあるが、それを見下ろすような角度で見るのはもちろんこれが初めてだった。
男と違って奥まった場所にあるため、まじまじと見ることは出来ないが、どうしても男として、つい見とれてしまう。
そんな中で、股間へと近づく触手の視線――目があるかは分からないが――に気付いた。
獲物を狙う鳥のように、股間へとじりじりと近づいてくるのだった。
「恥ずかしいから、そんなにまじまじと見ないでよ。今回は特別に、見せてあげているんだからね」
さらけ出された股間へと、手のひらが触れるように、触手が近づいてくる。
ぺとり
割れ目に沿って、触手が張り付いてきた。
「きゃぅんっ!」
前回と違って目に見える場所で行われているので、いきなり何をされるか分からない心配はないものの、それでもやはり、男の体には無い場所へと、人間ではない触手が当たってくるというのには驚いてしまう。
触手は、まるで割れ目へとほおずりをするかのように、ぴたりと張り付き、うねうねと脈打ってくる。
中には入ろうとせず、その入り口の感触を確かめるような動きだった。
その微妙な加減は、遥佳にくすぐったさを感じさせた。
こんな感覚は、男には無かった。
女が男を受け入れる場所をまさぐられる、まさに、女の体を実感させられる動きだった。
「やあん、そんなの……」
挿入とは違う、入り口での焦らしに、遥佳は単なるくすぐったさ以上のものを感じつつ、身をくねらせ、口から熱い吐息を漏らす。
自然と腰が動く一方で、膣の部分が腰の動きとは違った動きをするのが感じられる。
男のように、熱く固くなるのとはまるっきり違う、繊細で微妙な震えを伴った動きだった。
触手に入り口を触られているうちに、その刺激がだんだんと奥の方へと近寄ってくる。
男であれば、先へ先へと神経が向かうのだが、それとは正反対に、体の奥へ奥へと神経が向かうのだった。
入り口の先にある膣襞が、ひくひくと動き、とろりとした蜜を吐き出しているのが感じられる。
さらにその奥では、子宮が物欲しそうにきゅんきゅんと疼いているのが感じられる。
「ああ、わたし、濡れちゃってる。これも、あなたが動くからなんだからね」
きゅっ、きゅっ、と入り口の感触を味わうように動いていた触手の先端が、するりと動いたかと思うと、割れ目の上にある小さな一点へと向かってきた。
「ひぃっ!」
女の一番敏感な場所を刺激されて、遥佳は声を上げる。
そこを中心に、びりびりとした電流が、全身へと駆け巡る。
射精の瞬間などよりも、はるかに強烈で、刺激的な感覚だ。
感電したかのように、全身がびくり、びくり、と動く。
ツン、ツン、と触手につつかれる度に、その刺激は全身へと伝わっていく。
「ああん、そこは一番敏感な場所なんだから。そんな風にされたら、わたし、変になっちゃう……」
触手の動きは、突くだけに止まらなかった。
ぴたり、と張り付いたかと思うと、吸盤の一つで、遥佳の突起を吸い上げてきたのだった。
「あひぃぃぃ! そ、それ、変になっちゃう。凄いよぉ……」
まるで、全身を吸い立てられるような、強烈な吸引を感じてしまう。
突かれるのとは違った、強引に快感を流しこまれるかのような、動きだった。
「そこは駄目……駄目だけど……良いの……わたし、駄目だけど感じちゃうの……」
遥佳が全身をくねらせると、それを制するかのように、乳首へと張り付いていた吸盤も、きゅうきゅうと吸い立ててきた。
「ああん、気持ち良い……乳首もクリトリスも気持ち良い……こんな凄いの、あなたが初めて……」
女性ならではの小さな部分の敏感さに驚き、戸惑いつつも、遥佳はその感覚に身を悶えさせるのだった。
「ああん、良い……」
遥佳が体をくねらす度に、巫女装束がだんだんとはだけていき、その裸身がさらけ出されていく。
妖魔は、吸盤を乳首とクリトリスに張り付けたまま、残りの触手で遥佳の全身をなぞっていく。
耳たぶが舐められ、首筋を撫でられ、乳房を揉まれ、尻を掴まれ、割れ目をなぞられる。
「ああん、あはっ……あん」
遥佳の口から、艶っぽい喘ぎ声が漏れる。
そのうちに、股間の方がさらに疼いてきた。
奥の方にある膣襞と子宮が、ひくひくと蠢き、より激しい刺激を求めているのが感じられる。
男の時に、早く射精したいのと真逆の気持ちだった。
早く入れられたい……
早く出されたい……
前回は、突然の挿入と、破瓜の痛み、そして急な射精に戸惑ってばかりいたが、今回は自らの方がそれを求めている。
自分の意識が変化していることに、遥佳は戸惑いを覚えるのだが、体の方は欲しくて欲しくて堪らない。
「ねえ、欲しいの……あなたのなら、入れても良いよ」
デレの言葉を使ってみたのだが、触手はそんな言葉は聞き入れず、相変わらず全身を撫で回しているだけだった。
「遥佳様、ツンデレはもう終わりです。後は痴女プレイをするのです」
「そ、そうだったね」
言われて遥佳は、エロ漫画に出てきそうな台詞を必死に思い浮かべた。
「ねえ、わたしのオマ○コに、あなたの太いチ○ポ、ちょうだい」
ねだるような声で言いつつ、両脚を広げ、腰をぐいっ、と突き立てる。
その途端、触手が、ぴくり、と反応した。
尻を触っていた一本が、股間の前へとせり出し、その形を変形させたのだった。
先細りをしていた先端がだんだんと太くなっていき、さらにその先端には、人間のものと同じような雁首が作られる。
側面を覆っていた吸盤が丸く膨らんだかと思うと、ボコボコとした出っ張りへと変わっていく。
まるで、バイブレーターを思わせるような作りのそれが、遥佳の股間へとあてがわれる。
「ああん、あなたのチ○ポ、太くて美味しそう。あんまり美味しそうだから、わたしの下のお口、涎をだらだら垂らしちゃってる」
遥佳の言う通り、割れ目からは愛液が溢れ出し、巫女の神聖な小袖へと、大きな染みを作っている。
そんな入り口へと、ねとりとした触手の感覚が伝わってくる。
「焦らさないで、早く入れて、わたし、気が狂っちゃいそう」
遥佳は腰を突き立て、首を左右に振り、舌でぺろりと唇を舐める。
それに誘われるようにして、ずぶり、と触手は遥佳の中へと入っていった。
「ああー、入ってくる、わたしのオマ○コに、おっきなオチン○ン、入ってくるぅ」
男の体では感じることの出来ない、股間の奥へと熱くて太いものが入ってくる感覚が湧き起こる。
前回は、処女を失う痛みのあまり、まるっきり快感とは感じなかったのだが、今回は違っていた。
触手の雁首が、割れ目を上下左右に広げられ、体が内側から膨れあがるような気持ちにさせられる。
続くイボイボが、膣襞を擦り上げ、圧迫していく。
股間が押し広げられる違和感は相変わらずだが、同時にそれが、気持ち良いと感じられるのだった。
(これが女の快感なの? 男とまるっきり違う)
「ああ……良い……いいわ、あなたのオチン○ン、すっごく太くって熱くって、美味しいわ。お願い、もっと奥までぶっ込んでぇ」
くいっ、くいっ、と自ら腰を突き立てると、触手の方もより深く入ってきた。
体が圧迫され、触手に押しつぶされそうな気がする中で、遥佳は触手のうねりを感じていた。
ぐいぐいと入り込んでいた触手の動きが止まった。
処女の痛みは無く、敏感に胎内への刺激を感じ取ることが出来る遥佳は、触手が子宮口までたどり着いたんだな、と思うのと同時に、改めて自分の体に、そんな器官があることに驚かされる。
「入ってる……あなたのオチン○ンが、わたしの奥まで入って、子宮をぐいぐい押してくるのが感じられるわ」
しばらく、くねくねと動いて、膣と子宮口の感覚を味わっていた触手が、ゆっくりとその身を引いていく。
イボイボが膣口へと辺り、小淫唇を外へと掻き出すような動きをして、同時にえらばった雁首は、膣襞を外側へと引っ掻くような動きをする。
挿入されるのとは違った刺激だった。
「ああん、抜いちゃうの……あなたのオチン○ン、もっと味わいたかったのに」
ねだるような声で遥佳は言う。
触手はそのまま身を引いて、ちゅぽん、という音と共に、遥佳の胎内から抜け出た。
さっきまでの圧迫感が消え、代わりに物足りないような喪失感が湧き起こる。
「抜いちゃ嫌よ。お願い、入れて、あなたのオチン○ン無しじゃ、わたし、気が変になっちゃう」
気が付くと、縛られていたはずの両手は自由になっていた。
遥佳は、右手を股間に延ばし、人差し指と中指を股間の割れ目へと当てて、左右に開くようにしつつ、左手で近くにあった触手を掴み、自ら口へと含み、進んでフェラチオをする。
ちゅぱっ、ちゅぱっ、と触手に聞かせるように音を立てつつ、
「お願い、入れて……わたし、我慢できない」
遥佳の乞い求めを受け入れるように、触手が再び侵入してきた。
「ああん、入ってくる。あはっ、嬉しい……」
股間へと押し入ってきた触手は、今度は抜かないままにピストン運動を開始した。
ぐちゅり、ぐちゅり、と泥を掻き回すような音が響くと同時に、腰が突き上げられるような震動が遥佳に伝わってくる。
「ああん、とってもいやらしい音。わたしのオマ○コ、ぐちゅぐちゅ言ってる。もっと、もっと、欲しいの」
すでに膣の中は、触手で一杯になっていた。そんな触手の動きを助けようと、股間からはどろりとした愛液が、どくどくと溢れては、触手に絡みつき、膣口から垂れ落ちていく。
「ああ、触手チ○ポ、気持ち良い……もっと、もっとちょうだい」
ずしん、ずしん、とした震動を伴った快感が起こると同時に、遥佳の頭の中はだんだんとぼんやりとして言った。
もう、触手のことしか考えられないようだった。
自分の体の内側で起こっていることが、手に取るようにはっきりと脳裏に浮かぶ。
すると、すでに一杯になっている膣の中で、触手が、ぶわり、と膨れあがった。
同時に、その先端から、熱い塊が飛び出してきたのだった。
どびゅっ、どびゅるるぅぅ
体の中に、濁流が流れ込んでくる。
「ああぁぁぁっっっ!」
触手が吐き出したものが、子宮口を通り抜けて、遥佳の子宮へと流れ込んでくる。
熱く、どろりとしたものが、子宮の中をうねる。
それでも入りきれなくなった、触手の精液が、膣口からどろどろと溢れ出してくるのが見て取れる。
触手は、なおも遥佳の中で、びくびくと動き、精液を吐き出してくるのだった。
「あはぁ……」
触手とは違う、精液の浸食に、遥佳は溜息をもらす。
「遥佳様、さあ、お札で吸引です」
「あ、うん」
袂からお札を取りだすと、梵字が書かれている方を触手へと向ける。
「吸引!」
お札から発せられる光にかき消されるように、さっきまで遥佳の中へと入っていた触手は吸い込まれていった。
触手が吐き出した精液も消えた中で、ついさっきまで触手で一杯になっていた股間は、喪失感のようなものを感じていた。
「さっそく二匹目を退治したようですね」
建物の物陰から声を掛けてきたのは、巫女頭の弥生だった。
「見てたの?」
女としての痴態を見られていたことに、遥佳は戸惑いを覚える。
「ええ、見ていました。何度もお助けしようと思ったことか。しかし、妖魔を相手に出来るのは、神に選ばれた者のみです。
この私に出来ることと言えば、せいぜい遥佳さんの痴態をこのようにビデオに録画するぐらい」
言って弥生は、手にしていたビデオカメラを取りだした。
「そ、そんな……ビデオって」
「さあ、これを見て、遥佳さんの行為を顧みましょう。ちなみにまず言わせていただければ、痴女としての発声に艶っぽさがあまり感じられないのが問題でした。さあ、さっそく、ビデオを見ましょう」
「え、そんなの、恥ずかしいよ……」
「そうですか。それならば、これを『無修正 お宝映像 巫女触手責め 絶対抜けます』と名付けて、某巨大P2Pネットワークに流して、さらに某巨大掲示板で感想を求めることになりますが」
「そ、そんな……」
「これも神の御心です。さあ、ご一緒にビデオを見ましょう」
腕を引っ張られて、遥佳は強引にビデオを見せられた。
そして、自分が出ているというのに、結構興奮したのだった。

第三章

遥佳は、弥生らと昼食を取っていた。
食卓にいるのは、二人の他に、弥生の双子の娘、美野里と皐月だった。
「遥佳ちゃん、妖魔退治の方はどんな感じ?」
焼き魚をほぐしながら、双子の姉である美野里が尋ねてきた。
ツインテールが特徴の、遥佳が「巫女」と書かれたおみくじを引いた時にいた女の子だった。
ちなみに、遥佳と弥生は巫女装束を着ているが、美野里と皐月は、夏っぽい普段着を身につけている。
「妖魔退治ですか……それは、その」
彼女は大学生のはずで、遥佳よりかは年上なのだろうが、さすがに女の子相手に、触手とセックスしていますとは言いづらい。
そんな言いよどんでいるのを察したのか、
「あ、やっていることなら、私たちもちゃんと知っているから、恥ずかしがらなくても良いよ」
「え、そうなんですか?」
「ええ、娘達も、ちゃんと把握していますので」
答えてきたのは母親の弥生だった。
「うちの神社は、処女性を神聖なものだとは思っていません。むしろ、男と女が交わることこそ、神聖な儀式だと思っています」
「そうなんですか。巫女さんなんて言うと、処女だとばかり思っていましたけれど。だから、僕が巫女にさせられたんじゃないんですか?」
「それは、神の御心だからです。
普段でしたら、私はもちろん、娘二人も、時にはその身をもって、妖魔を浄化することもあります」
「そうだったんですか」
遥佳が、箸の動きを止めて、感心したような声を出す。
「流派によります。そちらの方が多数なのでしょうが、そういう所は、むしろ明治維新以降の近代になって主流になったものですね」
「そういうものですか」
「ですから、私みたいなおばさんでも、まだ巫女をやっていたりするんですよ」
弥生はにっこりと笑う。
「おばさんだなんてとんでもないです。弥生さんは、十分に巫女さん、って言うか、普通の巫女さんなんかよりも綺麗ですよ」
「あら、お世辞でも嬉しいわね」
弥生は微笑んだ。
「ふん、そりゃあ、わたしにはまだ色気がありませんよ」
美野里が、すねたような声を出す。
「まあまあ、お姉ちゃん。巫女さんなんだから、別に色っぽくなくても良いじゃない」
そう言ってくるのは、妹の皐月だった。
姉と同じうす紫色の髪の毛を、こちらはショートにカットしている。
双子で顔が似ているから、見分けさせるためにしているのかもしれないが、それぞれの性格に合っているな、と遥佳は思う。
「で、妖魔退治の方はどうなの?」
話をそらす、というか戻すようにして、妹の皐月が聞いてきた。
「ええ、まあ、昨日と今朝で二匹ですから、順調なんじゃないでしょうか」
「ああ、もう。そんな当たり前のことを聞いているんじゃないのよ」
ぷんすかした顔で、美野里が言ってくる。
「巫女としての体、女の体はどうか、って聞いているに決まっているじゃない」
「巫女として、ですか……」
遥佳は、触手に襲われつつも、つい快感を感じてしまうことに、頬を赤く染める。
「どう、やっぱり女の体の方が、男よりも気持ち良い?」
美野里は、遥佳の首に手を回し、逃げられないようにしてから、うりうりと人差し指でほっぺを突く。
「そ、それは……」
おおっぴらに聞かれて、遥佳はますます頬を染める。
「お姉ちゃん、そんなこと聞いたら駄目だよ。ほら、遥佳ちゃん、恥ずかしがっているじゃない」
「むー」
妹に制せられて、姉は遥佳の首から腕を解く。
「あーあ。私も神の御心って奴で、男になれないかなあ。そうしたら、大学の女の子と、ばんばんセックスするのに」
「お姉ちゃん、それって浄化の意味が無いじゃない」
「ふっふっふ、セックスの下手な男なんかで満足しないように、本当の女の快感を教えてあげる。それも浄化の一つじゃない。
女の体のことは、女の方がよっぽど良く分かるのよ」
「お姉ちゃん、目が笑っていない……」
美野里の妖しい雰囲気に、皐月は軽く身を反らす。
「ここでしゃべるのが恥ずかしいって言うんだったら、どこか居酒屋にでも行かない? そうしたら、アルコールも入って、エロ話も出来るようになるんじゃない」
「お姉ちゃん、遥佳ちゃんは、まだ未成年なんだから、アルコールは駄目だよ」
「それもそうねえ。それじゃあ、代わりに買い物に付き合ってくれない?」
「買い物、ですか?」
突然、話の流れが変わって、遥佳は戸惑いの表情を浮かべる。
「そう、買い物。何を買いに行くと思う?」
「そうですねえ。まあ、化粧品とかですか?」
「ブブー、残念でした。正解は、下着でした。し・た・ぎ、ランジェリーよ」
「ど、どうして僕がそれに付き合うんですか?」
世の中に、ランジェリーショップなるものがあるのは、遥佳も知っていたが、自分には縁の無い場所だと思っていた。
そこに付き合えと言われれば、遥佳は戸惑う。
「そりゃあ、男から見てのアドバイスが欲しいからよ。見た目は巫女、頭脳は青年、その名は浄魔巫女、遥佳。
どんな下着がエロいか、男の視線で一発解答よ!」
「どこの少年探偵ですか、それは」
圧倒されるように、遥佳が呟く。
「さすがに男子高校生を連れて、下着売り場になんて行けないでしょ。これがチャンスじゃない」
「は、はあ……」
言われるものの、遥佳も頭脳は男の子。下着売り場に興味が無いはずは無い。
夏で薄着になっている美野里の体をちらりと見る。
弥生ほどではないが、それでも大きい方の胸が、どうしても目に付く。
ウエストや腕はスレンダーながら、出るところはしっかりと出ているので、弥生とは違う、セクシーという言葉が似合う体つきだった。
(美野里さんと下着を買いに行くってことは、美野里さんの下着姿が見られるんだよな……)
「ねえ、迷ってないで、早く、うん、って言いなさいよ」
遥佳が妄想していたのを、悩んでいるのかと思ったのか、美野里はそう言ってきた。
「そ、それじゃあ、一緒に行きましょう」
「オッケー、決まりね。じゃあ、食事が終わったらさっそく買い物にいきましょう」
言って美野里は、にやりと笑った。
遥佳が、その笑いが意味することに気付くのは、その後のことだった。

「ねえ、これなんか、スケスケで良いんじゃないの。
ううん、こっちの黒いのなんかも、色っぽくて良いわよ」
ランジェリーショップの一角で、美野里はきゃあきゃあ言いながら、様々な下着を手に取っていた。
「ほらほら、遥佳ちゃんも見てるだけじゃなくて、どれにするかちゃんと手にとって確かめなさいよ」
そう言って、美野里は手にしていたブラジャー数組を手渡してくる。
女性の下着を手にするなんてのは、遥佳にとっては初めてのことだった。
そんな後ろめたさから、なんとなく、初犯の下着泥棒はこんな気持ちだろうか、などと思ったりする。
遥佳の意識をよそに、美野里は相変わらず下着を物色している。
「うーん、こういう時に、胸が大きいって損よね。選べる下着の種類が少ないんだもの」
胸の小さい団体が聞いたら、抗議運動でも起こしそうな台詞を、美野里はさらりと口にする。
「は、はあ……そういうものなんですか……」
「そうよ。だからいつもは、カタログ販売で買ったりしているんだけれどね。せっかく遥佳ちゃんに下着を着てもらうんだもん。最初はこういう場所に来た方が良いでしょ」
そうなのだ。てっきり、美野里が付ける下着を買いに来たのだと思っていたのだが、遥佳のために下着を買うのだと言う。
巫女装束で過ごしているのだから下着は要らないと言っても、美野里は聞かない。
せっかく女の子になったのだから、下着を着ける経験ぐらいはしておいた方が良いというのが美野里の言い分なのだが、さっきからの様子を見ている分には、どうも元男の遥佳に女物の下着を付けさせるのを楽しがっているようなのだ。
遥佳は思った。
美野里さん、絶対にコミケの二日目常連だろうな、と。
置かれている下着を片っ端から手にしては、遥佳の胸へと当てて、うーん、と悩むような嬉しそうな顔をするのだった。
「あ、そういえば、遥佳ちゃんのバストサイズって測っていなかったよね。店員さーん、すみません。バストサイズを測ってもらえますか」
「ちょ、美野里さん」
遥佳が止めようとする間も無く、店員がメジャーを持ってやってきた。
「こちらへどうぞ」
「あの、僕は……」
「ほらほら、さっさと中へ入る」
戸惑う遥佳は、美野里に背中を押されて、試着室のような仕切の中へと、店員と共に入れられた。
「お巫女さん、ですか?」
若い店員に尋ねられた。
まあ、巫女装束を着ていれば、誰もがそう思うだろう。
「ええ、まあ、巫女みたいなものです」
さすがに、昨日、いきなり巫女になっちゃいました、とは言えなかった。
「下着は、衣装の下に付けられるんですか。それとも普段着用ですか?」
「ええと、巫女さんは、腰巻きってのを付けるから、下着は付けないんです。これは……普段着用です」
美野里に騙されて連れてこられたとも言えず、無難な答えをする。
「そうなんですか。お巫女さんの衣装は、そうなっていたんですね。わたし、ランジェリーショップの店員なのに、知りませんでしたわ」
僕も昨日までは知りませんでした、とはさすがに言えない。
「それじゃあ、お召し物を脱いでいただけますか」
「は、はい……」
巫女装束の着付けは、弥生にやってもらっていたので、自分で脱ぐのはこれが初めてだった。
しかも、見知らぬ店員を前にしてのことで、遥佳はなんとも不思議な気持ちになってくるのだが、仕方なく脱いでいった。
腰巻きを脱ぎ、乳房が晒される。
「それじゃあ、測りますね」
学校で胸囲測定をしたことはあるが、それとのあまりの雰囲気の違いに、遥佳は戸惑いを覚える。
背後から店員が、メジャーをまわしてきた。
乳房に当てられるのかな、と思っていたら、最初に当てられたのは、その下の部分だった。
いわゆる、アンダーバストって奴か、と遥佳は察する。
そういうものがあるとは聞いていたが、まさかそれを自分が測られる立場になるとは思わなかった。
「はい、アンダーは70センチですね。それじゃあ、次はトップの方を測ります」
トップって何だろう、とぼんやりしていると、店員さんが声を掛けてきた。
「あ、お客様。ちょっと頭を下げてもらえますか?」
何でだろうかと思いながら、遥佳は軽く頭を下げる。
「あ、そうではなくて、おじぎをするように、上体を倒してください。その方が、正しくトップバストが測れますので」
(ああ、トップって、トップバストのことなのか)
ようやく遥佳は理解することが出来た。
そう思いつつ、遥佳は前屈みになる。
「お客様は、こうやってランジェリーショップでバストサイズを測るのは初めてですか?」
「え、ええ、まあ……」
そりゃそうだ、と遥佳は内心で思う。
「そうですか。
こうした方が、正しくバストサイズを測れるんです。そうすると、形にあったブラジャーが選べますからね。自分にあったものを選ばないと、肩こりがひどくなったり、型くずれがしたりしますよ」
そういうものなのか、と思いつつも、自分には関係のないことだよなあ、と遥佳は思う。
「では次に、アンダーからバストを持ち上げてもらえますか」
「こ、こうですか?」
こんなことまでするのか、と思いながら、遥佳は自分の乳房を持ち上げた。
「はい、結構です。それじゃあ、測ります」
再びメジャーが巻かれる。
今度は、トップの部分だった。
乳房を巻かれるのは触手に対しては何度も経験しているが、こうやって若い下着ショップの店員から、バストのサイズを測るためにメジャーを巻かれるとなると、どうにも緊張してしまう。
メジャーがまわされてから、後ろの方で軽く締め付けられる。
「はい、トップは97.5ですから……差が22.5センチということで、カップはFですね」
「そ、そうですか……」
あなたのバストはFカップです、そう言われると、あなたの体は女性です、と遥佳の素性を知らぬ店員から、間接的に言われているかのようだった。
「それじゃあ、引き続き、お買い物をお楽しみ下さい」
そう言って店員は去っていった。
遥佳は巫女装束を再び身につけてから、美野里の元へと戻った。
「どうだった?」
「Fカップだそうです」
「で、アンダーは?」
「え、ええと……」
カップのことばかり頭にあって、さっき言われたアンダーのサイズが、なかなか出てこない。
「どうせ、カップのことしか考えていなくて忘れちゃったんでしょ。まったく男って、ブラのサイズにしか興味がないんだから。ブラを付けるのは女の役目、それを外すのは男の役目、なんて言葉があるけれど、今は女の子なんだから、ちゃんとアンダーのサイズも覚えていなくちゃ駄目よ」
「あ、思い出しました。70です」
「70のFカップね。じゃあ、皐月と同じか。ま、わたしよりかはワンサイズ下だけどね」
言って美野里は、ふふん、と笑う。
やはり女性でも、他人のバストサイズは気になるんだろうか、それとも、元男の遥佳の方が大きいなんてことだったらショックを受けていたからだろうか、などと遥佳は思う。
「それじゃあ、この辺りね」
サイズが記されたコーナーへと並べられているブラの一つを、美野里は手にした。
「試しに、これ付けてみる?」
渡されたのは、黒く、しかも透けているもので、高校生の遥佳から見れば、気恥ずかしくなるような代物だった。
「こ、これですか……ちょっと恥ずかしいんじゃないですか」
「良いじゃないの。誰に見せるもんでも無いし。自分の恥ずかしい下着姿なんて、滅多に見られるもんじゃないわよ」
美野里はいたずらっぽく笑う。
「わ、分かりました……」
「それじゃあ、早く試着室に入った入った」
押されるままに、遥佳は試着室に閉じこめられた。
今度は一人で巫女装束を脱いで、全裸になる。
そして、手にしていたブラを、確かめるかのように、右手でぶら下げて、顔の前にさらした。
(うわ、向こうが透けて見える。これを付けるのか)
女性の下着を、これから身につけるのかと思うと、今の自分の体は女性のものだと分かっていても、なんとなく倒錯的な行為に感じられる。
遥佳は遠慮がちに、両手の人差し指と中指で摘むようにしてブラを持ち、その形を確認した。
(ええと、確かこの紐の間に腕を通すんだよな)
遥佳は前へ習えをするように手を伸ばして、ブラの紐へと手を通した。
そのまま、腕を小刻みに動かして、胸元へとたぐり寄せていく。
せり出した乳房へと、ブラの生地が、ふわりと当たってくる。
(ここでブラを当てて、と)
とりあえず遥佳は、乳房へとブラのカップ部分を押し当ててみた。
柔らかい乳房が、肌触りの良い生地によって、すっぽりと包み込まれた気持ちになる。
腰巻きとも、触手の感触とも違う、心地の良いものだった。
(ふーん、これがブラジャーを着けるって感じなんだ)
女の姿になってから、これまでずっと感じていた、胸元の揺れが治まるような気がして、さっき店員が言っていた、形にあったブラジャーを選んだ方が良い、の意味を理解できたようだった。
(そうだ。背中のホックを付けないといけないんだよな)
遥佳は背中に手を回して、ホックを探り当てた。
(これを結べば……難しいな)
見えない背中での動作な上に、遥佳にとってはもちろん初めてのことなので、どこから手を付けて良いのか分からなかった。
(鏡に映せば、なんとかなるかな)
遥佳は振り返り、背中を鏡へと向けたのだが、腰まで届く、ポニーテールにまとめた髪の毛が邪魔をして、肝心の部分を見ることが出来ない。
髪の毛を持ち上げようとした時、
「うわっ!」
鏡に映っている、自分以外の者の姿に、遥佳は悲鳴を上げた。
天井から遥佳の頭上に向かって垂れ落ちてくる触手の固まり――妖魔の姿が、そこにあった。
見上げると、天井に妖魔が張り付いていて、何本かの触手をうねらせている。
「遥佳様、妖魔です」
「うん……」
答えたものの、遥佳はどう対応して良いのか迷った。
なにしろここは、ランジェリーショップなのだ。その試着室の中で、触手を相手にしてエッチなことをするのは、さすがに気が引ける。
「どうしよう……水引き丸?」
「待ってください。今、妖魔の属性を探りますので」
リボンの姿をしている、水引き丸が結ばれている髪の毛が、わずかに揺れる。
「わかりました。あの妖魔は、下着に憧れているのです。だから、ここで遭遇したんです」
「それってどういうこと」
「あの妖魔は人間だった頃、巫女さんは下着を付けているのかどうかで悩みました。その実情を探る旅に出ること、日本で三十年、中国で三十年、インドで三十年……」
「妖魔になる人間って、行動パターンも似てるの?」
どこかで聞いたような話に、遥佳は呟いた。
「長い旅を経ても、巫女さんが下着を付けているのか分かりませんでした。そうして、彼は世をはかなんで……」
「また正月に餅を喉に詰まらせたとか?」
「いえ、ペットボトルのスポーツドリンクと間違えて、バルサミコ酢を一気飲みして死んでしまったのです」
「バルサミコ酢ってのが微妙だね」
「分かる人にだけ分かってくれれば良いのです」
「で、僕はどうすれば良いのさ」
「死んで妖魔になった彼は考えました。巫女さんが下着を付けているか分からないのなら、自分が下着になってしまおうと。つまり、今回は遥佳様が巫女装束の下に、あの妖魔が下着に変形して、それで生活をしなければならないのです」
「な、なんだってー!」
「さあ、早く、その身を妖魔に捧げて、下着姿になって張り付いてもらうのです」
「分かったよ……って言うか、あんまり分かりたくないけれど」
仕方がないので、遥佳は身につけようとしていたブラジャーを外し、妖魔に向かって仁王立ちのようなポーズを取った。
どろりとした触手が垂れ落ちてきて、遥佳の体へとかかる。
妖魔は、二つに割れて、片方は乳房へと、もう片方は股間へと向かった。
乳房へと張り付くように、妖魔は触手から薄っぺらい形へと姿を変え、そしてブラジャーの形になった。
ブラジャーと言っても、紐が付いているものではなく、腹巻きを胸に巻いたような、いわゆるチューブブラという奴だった。
その質感も、まるでゼリーを胸に塗りつけたような、ねっとりとしたものだった。
股間の方でも、妖魔が変化して、ぺったりと股間に張り付いてくる。
股間の割れ目とかに完全に密着しているようではなく、まるで湿布でも貼り付けているような感じで、どうにも落ち着かない。
「こ、これで良いの?」
遥佳は水引き丸に尋ねる。
「これだけではまだ駄目です。妖魔は、巫女さんの下着になることを望んでいるのです。だから、巫女装束を着て、巫女としての生活をする必要があります。それと、もちろん性欲は残っているので、その合間にはいやらしいことをしてきます」
「ええ、これがエッチなことをしてくるの?」
遥佳は、乳房と股間に張り付いている、妖魔を指さした。
「そうです。しばらくは、そうする必要があります」
「どうしても、そうなの……」
言われるままに、遥佳は巫女装束を身につけた。
弥生に手伝ってもらえないため、かなり雑な感じの着付けだったが、巫女装束の下に、妖魔が形作る下着を身につけているのは不思議な感じだった。
(まさか、女性としての初下着が妖魔製だとは……)
遥佳は改めて、自分の体へと意識をやった。
紐は無いチューブブラと言っても、これまでずっと感じていた、乳房によって胸元と肩が引っ張られる感じが随分と減って楽になった気がする。
股間の方は、何も付けてない時よりかは無防備感が減ったのだが、男の時に履いていたトランクスに比べれば、面積は半分も無いため、いつ股間がはみ出すか心配になりそうな気がする。
「これって、妖魔だから動くんだよね」
遥佳は水引き丸に尋ねる。
「そうです。今は、下着になったことで満足しているようですが、いずれはその性欲を見たそうとしてきます」
「うう……やだなあ」
どうしたものかと考えて、とりあえずは待っている美野里に話をすることにした。
試着室のカーテンを開けて、美野里を手招きして、そして、これまでの経緯を説明する。
「そんなことになっちゃったの?」
さすがの美野里も、驚きの声を上げる。
「ちょっと見せて」
遥佳の胸元をはだけさせて、その中身を確認する。
「ふーん、こうなっているんだ。まるで下着の付喪神ね。まあ、元は人間だから違うんだけれど」
「付喪神って何ですか?」
「道具が古くなると、魂を持つ現象よ。
で、この格好でしばらくいなくちゃいけない訳ね」
「はい」
「まったく……下着を買いに来たら、とんだことになっちゃったわね。まあ、妖魔が見つかったから、良しとしましょうか」
そう言ってから、美野里は、店員に遥佳のバストサイズを測らせた手間の代わりに何着かの下着を買い、遥佳と共に店を出た。
「どう、気分は?」
「ええ、今のところは、貼り付いているだけみたいなんで良いんですけれど……」
駅へと歩いてみると、体を動かしているせいか、さっきよりも妖魔が貼り付いているのがはっきりと感じられる。
「うう、変な気持ち……」
ブラジャーもパンティも初となる遥佳にとっては、まさに初体験の感覚だった。
胸元の方は、最初に感じたように、乳房の重みが減る分だけ、楽になったと言えなくもない。
巫女装束の時には、腰巻きで無理に締め付けて動かないようにしていた。その時にはそういうものかと思っていたのだが、今は腰巻きの方は緩めにしているため、開放感すら感じられる。
ただ、やはり乳房に妖魔製のブラジャーがぴったりと貼り付いているというのは、変わった感じだった。
一歩一歩足を進めて体が左右に揺れる度に、乳房がゆさゆさと揺れて、その揺れがブラへと吸収されていく。
あれだけ柔らかいものの形を保たせられるのだから、やっぱりブラジャーというものは良く出来ているんだな、と遥佳は思う。
腰巻きで締め付けるのとは違う、ブラの形を保たせる仕組みのため、その振動がこれまで以上に感じられる。
一歩動くだけでも、乳房の揺れははっきりと伝わってきた。
まず足を踏み出し、体が上へ移動すると、乳房はそれに逆らうようにして、下へと向かう。
引っ張られるような感じがあってから、自らの持つ弾力のせいで、ワンテンポ遅れて上へと向かう。
かかとが完全に持ち上がり、体の高さが歩みのてっぺんにまでたどり着き、体の方は一瞬止まった上体になるのだが、乳房の方は、そのまま勢いで上に揚がろうとする。
引っ張られているのを感じつつも、足を下ろそうとした所で、乳房の方は天井で跳ね返ったボールであるかのように、下へと向かう。
すとん、と足を下ろし、地面に着地しても、下へ向かっている乳房は、そのまま動き続け、さっきとは逆に、地面へと胸元を引っ張っていく。
そんな引っ張りが収まらないうちに、もう一歩踏み出すと……この繰り返しなのだ。
歩くだけでもこうなのだから、走ったりしたらどんなことになるだろうかと遥佳は思う。
これまで、体育の時間や運動会などで、巨乳の女の子が走っているのを見ると、他の男子と同様に、その揺れに目がいってしまったが、これからはもう少し同情の目で見ることになるのだろう。
胸に比べると、股間の方は、また違っていた。
男の時にはトランクスを着用していたのだが、あれに比べると、パンティの方は、必要最小限を覆っている、という感じだった。
ペニスがあると、歩く度に太ももと擦れる訳だが、それが感じられない。考えてみれば、あんなぶらぶらとしたものが、足の付け根にあるのだから、歩く時には邪魔になると思うのだが、男の体として慣れているので、それが自然なものと思っていた。
だから、股間に何もないままで歩く方が、よほど不自然なものに感じられた。
(うーん、こっちの方がすっきりしているんだろうけれど、あるはずのものが無いってのは不安だよな)
前の方はまだ良いのだが、気になるのは後ろの方だった。
前にぶらさがっていたものが無くなっている分、後ろの方に意識が向かう。
男のものよりも大きなヒップなのにもかかわらず、その表面は、尻の割れ目を中心とした、全体の半分も覆われていないのだ。
それに、男のトランクスに比べて、パンティの方がぴったりと貼り付いているので、余計に覆われている部分とそうでない部分の差がはっきりと感じられる。
しかも、歩く度にヒップが左右に揺れるので、ヒップの表面を擦られているような気持ちになる。
男と違って、内股になって歩いている上に、その足の根本には、男よりも重たいヒップがあるのだから、どうしても左右に揺れる、となってしまうのだろう。
遥佳は、映画で見た、マリリン・モンローの歩き方を思いだしていた。
いわゆるモンロー・ウォークと言われる、ヒップを左右にくねらせながら歩く後ろ姿だ。
あれは、靴の高さを左右で変えて、わざとそうしているのだ、と話で聞いたことがあるが、こうやって女性の体になって街を歩いてみると、モンロー・ウォークとまではいかないまでも、女性があんな歩き方になるのが分かる気がする。
そんな、一歩一歩の度に、男とは違う女の体のことを気にしていると、それに気付いたのか美野里が声を掛けてきた。
「ねえ、さっきから落ち着きが無いみたいだけれど、大丈夫?」
「ええ、今のところ、妖魔は何もしてきていません。ただ、今までずっと慌ただしかったんで、女の人が歩くのは、こんな感じなんだなあ、って思ってたんです」
「そうなんだ。そんなに男と女って、違うの?」
「そうですね。まるっきり」
「ふーん、こうなるとますます、やっぱり私も男になってみたいわねえ」
「なれると良いですね」
自分なんかよりも、よっぽど適任だろうと遥佳は思ったりした。
そうしているうちに、二人は駅へとたどり着いた。
改札を抜け、実家へと戻る列車へと乗り込む。
夏休みの午後ということで、混雑はしていないが、あいにくとロングシートの座席は全部埋まっている状況だった。
ドアが閉まり、列車が発車する。
途端、
「ひっ!」
下着と化した妖魔が、ぞわりと動いたので、遥佳は思わず小さな悲鳴を上げてしまった。
「どうしたの?」
心配そうに、美野里が尋ねてくる。
「あの……妖魔が、動き出したんです」
他の客に聞こえないように、小声で囁く。
「だったら、次の駅で降りようか?」
「それは駄目です」
二人の背後から言ってきたのは、リボンの姿で遥佳の髪の毛をまとめている、水引き丸だった。
「どうやらこの妖魔、電車の中での痴漢プレイをしなければ満足しないようです」
「ってことは、このままでいろって訳?」
遥佳のことを気遣い、怒ったように美野里は言う。
「はい、そのようです」
「あの、僕のことなら気にしないで下さい。これが役目ですから」
「そうは言っても……
せめて、車両の端っこの方に行きましょう」
二人は、なるべく人の目に付かないようにと、通路ドア近くへと向かった。
遥佳がドアの近くに立ち、隠すように、その前へと美野里が立つ。
「つらいでしょうけれど、我慢してね」
そう言って美野里は、遥佳の手を、ぎゅっ、と握りしめてきた。
女の子の小さな手なのに、力強く、そして優しい気持ちがした。
「ありがとうございます」
場所を移動している合間にも、下着と化した妖魔は動きを続けていた。
ヒップの一部分が圧迫されるようになり、ちょうど、人間の手のひらで触られているような感じがするのだ。
触手に体を蹂躙されるのは経験済みだが、いずれも地面に腰を下ろす感じで責められたので、ヒップをまさぐられるのは、これが初めてのことだった。
大きなヒップの表面を、わさわさと撫でられる度に、遥佳はぞわりと鳥肌を立てる。
気持ち良さなど全然無かった。
何よりも、視界の外にある背後から、自分の体を触られるということに耐えられなかった。
無抵抗な所を無理矢理触られているようで、どうにも我慢できない。
まるで、夜中の道を歩いていたら、背後から付けてくるような足音が聞こえてくる、そんな気味の悪さを感じてしまうのだ。
痴漢をされている女の子って、こういう恐怖感を感じているんだろうなあ、と遥佳は思う。
普通の痴漢と違うのは、背後を振り返って、その犯人を捕まえることが出来ないことだ。
今、遥佳のヒップをまさぐっているのは、下着と化した妖魔なのだ。気持ち悪さから後ろを振り返っても、ドアがあるだけだった。
遥佳は、単に痴漢されているのではなく、それを受け入れるしかなかった。
まるで自分が、痴漢をされても、恐怖のあまりに声を出せずにいる、気弱な女の子になってしまった気分だった。
妖魔の責めは続く。
手のひらが当たってくるような動きは、だんだんと勢いが増していき、撫でるだけでなく、ヒップの弾力を確かめるような、押してくる動きも加わってくるのだった。
最初は、闇雲だった動きも、ヒップ全体の形と大きさを測るかのような、大胆な動きへと変わっていったのだった。
「うう……」
そんないやらしい手つきと、痴漢をされている恐怖感を、遥佳はぐっとこらえる。
すると、相手が無抵抗だと気付いた痴漢が、その行為をエスカレートさせるのと同じように、妖魔の動きはますます大胆になっていく。
それまでは、一ヶ所だけだった圧迫感が、左右の二ヶ所に増える。
妖魔なのだから、いくらでも増やせるだろうが、その感触は、人間の男から、両手で左右のヒップを鷲づかみにされているようだった。
そんな感覚が、ますます遥佳を、痴漢されている気持ちにさせていく。
意識がヒップへと集中すると、そこの部分が敏感になってきて、妖魔の動きが、よりはっきりと伝わってくる。
ヒップの丸い曲線に沿って撫で回しつつ、だんだんと圧迫感を強めてくる。
そうしているうちに、遥佳はだんだんと変な気持ちになってきた。
不快感に上書きされるかのように、ただヒップを触られていることだけへと、意識が集中してくるのだった。
手のひらの動きが、ヒップへの感触を通じて、頭に浮かぶ。
その度に、尻全体が熱を帯びたようになり、腰の辺りがむずむずとして、自然と腰を振ってしまう。
(ひょっとして僕、触られて感じている?)
そんな意識の変化に気付いて、遥佳は頬を赤く染めた。
女の体として、触手にまさぐられて快感を感じることは経験してきたが、痴漢のような状況に対して感じてしまうことに、遥佳は元男として、抵抗を感じていた。
そんな自分の頭を冷やそうと、遥佳は車内を見渡した。
ケータイをチェックする人、イヤホンで音楽を聴いている人、漫画雑誌を読んでいる人、ごく普通の人がいる車内なのだ。
(そうだ。こんな中で感じたりしちゃいけない)
そう思いつつ、握ったままの美野里の手を強く握り返すと、美野里は無言のままに、「頑張ってね」と言うような顔つきで、こくん、と頷いてきた。
遥佳は、気丈に背筋を伸ばす。
すると、ヒップを触っていた妖魔の動きが止んだ。
(ひょっとして、もう満足したのかな。でも、これって浄化したことになるんだろうか?)
そんな遥佳の期待は、次の瞬間に、甘かったと思い知らされた。
「ん……」
さっきまでヒップで感じていたのと同じ感触が、今度はブラジャーの方でも起こったのだった。
右の乳房へと、手のひらが貼り付いてくるような感触が湧き起こる。
ヒップほどには大きくない乳房の表面を、手のひらが何度も動き回る。
乳房の方は、触手に何度も責められているが、今回は少し違っていた。
ブラジャーの姿をして、巫女装束の中に収まっているため、その姿を見ることは出来ない。
しかし、胸元では、手のひらがまさぐってくるような動きが伝わってくる。
まるで、目の前に透明人間がいて、それが乳房を触ってきているかのような感じなのだった。
そして、これまでに触手の責めを受け、それを快感と感じ取ってしまっていた乳房は、今回もまた、そんな動きへとすぐに屈服し、受け入れてしまうのだった。
「あん……」
柔らかい乳房を撫で回される快感に、遥佳は思わず溜息を漏らしてしまい、慌てて唇を噛みしめる。
ここは、誰もいない野外などとは違う。みんなの目のある電車の中なのだ。
遥佳は、さっきしたのと同じように、車内を見渡してみた。
すると、さっきは感じなかった、まるで自分が車内の人から見られているような気になってくるのだった。
(みんなが……見てる)
美野里が衝立代わりになっているので、気付かれる心配は無いはずだ。
だが、自分のことが、見ず知らずの乗客に見られているような気がしてならない。
無いはずの視線が気になって仕方がない。
そう思うと、ますます遥佳の意識は敏感になっていくのだった。
ブラの方は、左右が動き出し、乳房をこね回すような動きをする。巫女装束の上からでは見ることは出来ないが、柔らかい乳房が、その形を絶えず変えているのが、手に取るように分かる。
パンティの方も、ヒップ全体を圧迫するような動きになっていて、まるで下から押しあげられているかのようだった。
(みんなに見られている中で、おっぱいとお尻を触られている……)
そんな状況を考え、遥佳は頬を染める。
まるで、見ず知らずの乗客の視線が、意識が、遥佳の体をまさぐってきているかのように思えるのだった。
(ああ……感じちゃ、駄目なのに……)
必死になってこらえていると、車内アナウンスがあり、列車が駅に止まった。
前に座っていた二人が席を立つ。
「ねえ、座ろうか」
「う、うん……」
遥佳と美野里は、手を握ったまま、席へと座った。
列車が発車した所で、妖魔はまた新たな動きを開始した。
(ああ、そこ……駄目……)
さっきまでは外されていた、股間の前の方で、妖魔が動き始めたのだった。
割れ目へと妖魔が集中するようになり、密度が高まったせいか、だんだんと固くなっていく。
その感触は、勃起したペニスを押しつけられているかのようだった。
遥佳は歯を食いしばり、両手で袴を握りしめ、肩をすくめるようなポーズを取る。
それに気付いたのか、隣に座っていた美野里は「頑張って」と言いつつ、身をすくめる遥佳を、上から抱きしめるような格好をしてきた。
「私には、こうするぐらいしかできないけれど……」
柔らかい腕と乳房に包まれて、遥佳の気分は少し落ち着いた。
だが、妖魔の動きは止まらない。
割れ目へと押し当てられたものが、ゆっくりゆっくりと中へと入ってくるのだった。
その入り方は、普通の触手とは違っていた。普通だったら、ペニスのような形を作って、中へと押し入ってくるのだが、今の遥佳の股間へは、まるで隙間に水が染み込むようにして、スライム状のものが入ってくるのだった。
まるで、割れ目の型どりをされているような、じわじわと妖魔に股間を浸蝕されるような、そんな動きだった。
じわり、じわり、とスライム状の妖魔は股間へと入り込んでくる。
挿入感こそ無いものの、ぴたりと閉じているはずの微妙な女体の隙間へと入ってくるその動きは、相手は人間ではないのだ、ということを改めて実感させられる。
入ってくるスライムの量は、だんだんと増えていく。それに押しのけられるようにして、遥佳の膣が広がっていく。
まるで、膣の中にしぼんだ風船を入れられ、それを膨らませられるかのような感触だった。
ゆっくりとした動きの末、とうとう妖魔は、遥佳の中でペニス状の形になった。
しばらくは、遥佳の中を感じるようにして止まったままだったペニスが、ゆっくりと動き始めた。
ずしん、ずしん
挿入したものを、わずかに一突きずつしてくるだけなのだが、体全体が揺さぶられるような気持ちになってくる。
妖魔は、一定のリズムで、膣内を突き上げてきた。
しばらくして、遥佳はそのリズムの意味が分かった。
ちょうど、電車の揺れと同じなのだった。
電車がガタンと揺れる度に、ペニスが突き上げられ、電車の振動と相まって、全身を揺さぶる。
ふと、遥佳は、以前読んだエロ小説の一場面を思いだした。
的に捕らえられた巫女が、股間に触手を挿入されながら、走っている馬に跨らされる場面だ。
その馬が、今の遥佳にとっては、電車に置き換えられているのだ。
無機質な電車が揺れる度に、ペニスが股間へと突き立てられる。
人間とは違う、そして妖魔とも違う、意志を持たないものに、犯されている感じ。
そんな、未知の体験をこらえようと、遥佳は美野里へと寄りかかった。
美野里の腕が、優しく遥佳を包んでくれる。
その一方で、股間には電車の振動が、妖魔のペニスを通じて伝わってくる。
ずしん、ずしん
体が揺さぶられる感じが伝わってきて、それが女の快感に変わっていくのを、遥佳は必死にこらえる。
その時、列車がカーブへとさしかかった。
ぐぐっ、と電車が大きく揺れる。
それに合わせるようにして、股間に入っているペニスも、ぐにゅり、と形を変えて、遥佳の中を掻き回したのだった。
「うう……」
思わず喘ぎ声が出そうになるのを、遥佳は必死にこらえる。
今でも感じている、女の快感への違和感と、それに流されてはいけないという板挟みの中で、遥佳は唇を噛みしめるしかなかった。
ここで、声を上げ、身を悶えさせたら、どんなに楽だろうか。
遥佳はそうも思う。
しかし、我慢すればするほど、その快感は内へと溜まり、ますます遥佳を敏感にさせていく。
列車が次の駅へと近づき、速度が緩やかになる。
(これで少しは楽になるかな?)
遥佳はホームに電車が滑り込むのを見つつ、そう思った。
だが、妖魔はそれを裏切った。
ホームに止まり、乗り換え客が出入りする中で、妖魔のペニスは、激しいピストン運動をしてきたのだった。
(ああ、そんな……)
強烈な突き上げが遥佳を襲い、奥にある子宮を圧迫してくる。
接続列車待ちなのか、列車はホームに停車したままだった。
大勢の乗客が乗ってきている車両の片隅で、遥佳は妖魔に犯されている。
全身を揺さぶるような快感に耐えられず、上半身を倒す。
(こんなに人の目がある中で……こんな目にあってる……)
乗客へと意識が向かう中で、股間の中では、妖魔のペニスはますます早く動いていた。
その振動が小刻みになり、バイブレーターのようになって、遥佳の全身を襲う。
(ああ……こんなのって……感じちゃ駄目なのに……気持ち良い……我慢できない……)
遥佳は自ら腰を動かして、さらなる刺激を求め始めていた。
(やだ、腰が勝手に動いちゃう……駄目だよ……でも、欲しい)
妖魔は、そんな遥佳の欲望を敏感に察し取った。
ぶわり、とペニスが大きく膨れあがる。
ぶるぶる、と脈打ったかと思うと、その先端から、熱いマグマを噴き出したのだった。
「んんん……」
体の最奥へと、熱いものを吹き付けられ、遥佳はこれまで以上の快感を感じ、そしてこれまで以上の忍耐力でそれをこらえた。
ペニスの射精に合わせるようにして、全身が、びくん、びくん、と震えているのが分かる。
奥に吐き出されたものが、子宮口を抜け、子宮へと流れ込んでくるのが感じられる。
新たな刺激が、新たな女としての快感を遥佳にぶつけてくる。
叫びそうになるのを、遥佳は必死に我慢した。
快感の余韻が、全身を満たしていく。
男の、一瞬の射精感とは違う、体中が一杯になっていくような快感だった。
「遥佳様。ここで吸引です」
「そ、そうだね」
快感を、体で、声で発散できなかった分だけ、その跳ね返りが体内で渦巻いている中を、遥佳はどうにかお札を取りだして、自らの体へと向けた。
「吸引っ!」
光と共に、遥佳の体にまとわりついていた妖魔が、お札へと吸い込まれる。
一瞬の出来事に、気付いた乗客はいないようだった。
「ちゃんと終わって良かったね」
隣に座っている美野里が、良い子、良い子、とするように、頭を撫でてくる。
「はい、ちょっと大変でしたけれど」
言って遥佳は、ぐったりとシートにもたれかかった。
そのまま電車は、二人の目的駅へとたどり着いたのだった。

駅を出て、美野里の家である神社へと向かう道すがら、
「遥佳ちゃん、大変だったでしょ。良く我慢できたね」
「はい、美野里さんが抱きしめてくれてたおかげで、少しは楽になれました」
遥佳は嬉しそうに笑う。
「うーん、そのときめきスマイル、最高。それじゃあ、しばらくしたら、遥佳ちゃんに今回頑張ったご褒美をあげるね」
「ご褒美、って何ですか?」
「遥佳ちゃんが男に戻ったら、私とセックスさせてあげる」
「そ、それは……」
突然の申し出に、遥佳は思わず視線を逸らしてしまう。
「何を遠慮しているのよ。据え膳喰わぬは、元男の子だった巫女さんの恥だぞ。
ほら、返事は」
相変わらず美野里から視線を逸らしつつも、美野里とセックスしている自分の姿を想像して、
「は、はい。お願いします」
そう答えてしまうのだった。
「オッケー。残りは二匹だから、すぐだよね。
あ、遥佳ちゃんて、巫女になる時に、お母さんとセックスしちゃったから、初体験は済ませているんだよね。そっかー、初めての相手になれないのは、ちょっと残念だな」
いたずらっぽく、美野里は笑う。
「そうだ。もしも遥佳ちゃんが女の子でいる間に、私が男になっちゃったら、その初体験の相手は私ってことでどう? 妖魔に先を越されたのは悔しいけれど、せっかく女の体になったんだから、やっぱり人間相手とセックスしたいでしょ?」
「は、はあ……」
圧倒されるように、遥佳は曖昧に頷く。
「ま、遥佳ちゃんが女の子でいる間に、私が男の子になれるかって微妙よね」
人差し指をあごに当てて、美野里はしばらく考えるような顔つきをしてから、
「あ、そうだ。遥佳ちゃんが、男に戻った後で、もしも私が男の子になったら、男同士ってのはどう? 攻めにするか、受けにするかは、遥佳ちゃんに選ばせてあげる」
「そ、それはさすがに……」
でも、彼女の性格からしたら、本当にそうしかねないなあ、と思うと、遥佳は尻の辺りがむずむずとしてくるのだった。

第四章

ドアを開けると、湯煙が遥佳の裸身へと当たってきた。
湯船を見ると、総檜作りの立派なものだった。それも、二人同時に入れるぐらいに広いものだ。
(なんか、悪い気がするな……)
全裸になり、湯船を前にして、遥佳は戸惑いを感じていた。
妖魔を封印してから、美野里と共に家に戻った遥佳は、夕食を取った後に、風呂を勧められた。
昨夜は、清めのために湯浴みはしたものの、風呂に入ることは無く、巫女になった遥佳にとっては、これが初めて入る風呂なのだった。
脱衣室で巫女装束を脱ぐ時も、結構興奮してしまった。
今日の昼に、美野里に言いくるめられてランジェリーショップに行って、巫女装束を脱いだばかりではあるが、あの時は勢いに流されるままだったので、あまり実感が湧かなかった。
こうやって落ち着いた状況で、一人で風呂に入るとなると、改めて巫女になってしまった自分の状況を意識してしまうのだった。
巫女装束を脱ぐ時には、まわりに誰もいないのを確認しようと、きょろきょろとしてしまった。
誰かが見ているような気がしてならないと思ったら、それは自分自身なのだった。
巫女として、その装束を脱いでいる自分の中に、その着替えを覗いている自分がいる。
そう思うと、なんだか悪いことをしているような気がするのだ。
(これは自分の体なんだ。今の僕は、巫女の体なんだ)
そう自分に言い聞かせつつ、遥佳は服を脱ぎ、浴室へと入ったのだった。
湯船から湧き出る湯気が、遥佳の裸身をくすぐってくる。
敏感な女性の肌でそれを感じるのは、男として風呂に入るのとは随分と違ったものに感じられる。
男と女で肌質が違うためか、全身がしっとりとした感じになってくるのだった。
そんなことを感じつつ、まずはかけ湯をしようと、椅子を探して腰掛けた。
「うわっ!」
そんな声を上げてしまったのは、湯気のために目の前に鏡があるのに気付いていなかったからだった。
目の前には、全裸になった女の人が座っている。
それも、男の時の癖で、足を広げていたため、両脚の間から、股間が丸見えになってしまっている。
遥佳は慌てて両脚を閉じた。
巫女になってしまい触手に襲われる、ということだけで頭がいっぱいだったため、こうやって女になった姿を鏡に映して見るのは、初めてのことだった。
きゅ、きゅ、と鏡の湯気を擦り落とすと、自分の姿が綺麗に映し出される。
顔立ちを見た感じ、クラスの優等生、と言った感じの女の子だった。
と言っても真面目一本槍という訳ではなく、同級生に問題の解き方を教えたりするような、面倒見の良い方の真面目さが感じられる。
視線を下ろすと、形の良い乳房が胸元に貼り付いているのが見える。
Fカップという大きさながらも、まだ若いだけあって、前へとせり出すように、綺麗な形を保っている。
股間の方は……と思って、閉じた両脚の合間へと視線を移すのだが、なんだか悪いような気がしたので、遥佳は見ようとはしなかった。
遥佳は湯桶を手にして、湯船のお湯をすくい取り、体へと掛ける。
(ああ、気持ち良い……)
ゆったりとした中で浴びるお湯は心地が良かった。
これまでに妖魔に付けられた汚れが落ちていくようだった。
女性の肌の方が、皮膚が薄いせいか、体を通っていくお湯の流れが敏感に感じられる。
その流れ方は、男とは違っていた。
肩からお湯を掛けると、その一部は乳房を避けるようにして流れていき、自然とその出っ張りを強調するようになる。
もう一掛け、今度は乳房に掛かるようにすると、お湯の勢いで、乳房がわずかに揺れるのが感じられる。
湯掛けを終えた遥佳は、立ち揚がって湯船へと向かった。
両脚で湯船に立ってから、ゆっくりと腰を下ろしていく。
「ん……」
股間が湯に入った時、遥佳は思わず声を出してしまった。
男とは違って、お湯が割れ目の間へとわずかに染み込んでくるような感じだったからだ。
このまま中に入ってくるんじゃないかと思ったが、そんなことは無く、それを確認してから、遥佳はさらに身を沈めた。
湯船の底へと腰を下ろし、背中をもたれる。
すると、お湯の中で乳房が、ぷかりと浮くのが感じられるのだった。
(おっぱいって、浮くものなんだ)
脂肪の塊なのだから、浮くのも当然かもしれないが、自分の胸元にある乳房が、水着などに縛られることなく、湯船に漂うようにして浮かんでいるのを見るのは、不思議な気持ちだった。
浮かんでいるため、肩から胸元の辺りが、やけに軽く感じられる。男としては当然な身軽さなのだが、昨日からずっと巨乳の重さを感じていた遥佳にとっては、ずいぶんと楽になった心地だった。
遥佳は、ちょっと体を揺すってみた。
ちょうど、宙に浮かぶ風船の紐を引っ張ったかのように、根本の動きとはワンテンポ遅れて、乳房が動き出す。
同時に、乳房を中心とした二つのさざなみが水面へと起こり、湯船へと広がっていく。
くいっ、くいっ、と体を左右に揺さぶると、乳房がぷるん、ぷるん、と弾む。
お湯に浮かんでいる分だけ、その柔らかさが一層感じられる動き方だった。
そんな風に、女になった自分の体をおもちゃのように遊んでいると、
「遥佳ちゃーん、湯加減はどう?」
脱衣場の方から、おっとりとした声が聞こえて来たのだった。
まだドアが開けられた訳ではないが、遥佳は慌てて動きを止める。
声と、曇りガラスに映るシルエットに見える髪型からすると、双子の妹の方、皐月のようだった。
「皐月さんですか?」
「うん、そうだよー」
「大丈夫です。ちょうど良い湯加減です」
「それは良かった。それじゃあ、お邪魔するね」
え、風呂場でお邪魔するって言うことは、などと考えているうちに、曇りガラスのドアが開かれた。
遥佳は慌てて目を逸らそうとしたが、間に合わなかった。
そこには、バスタオルに身をくるんだ、皐月の姿があったのだった。
裸ではないことを、遥佳はちょっぴり残念に思ったが、それでも戸惑っていた。
「皐月さん、何を? 僕だったら、すぐ出ますから、もうちょっと待ってもらえますか?」
「そうじゃなくって、遥佳ちゃんの背中を流してあげようと思って来たの」
「いいですよ。自分で洗えますから」
「でも、女の子のお風呂の入り方って、男の子とは違うんじゃないの。髪の毛の洗い方とかも結構大変だし」
「そういう、ものですか?」
「それに、遥佳ちゃんばっかり苦労しているから、そのお礼って意味もあるんだ」
そう言われると、遥佳もむげには断れない。
「そういうことなら、お願いします」
「うん。それじゃあ、こっちに座って」
皐月は、腰掛けを置いて、その後ろへと回った。
遥佳は風呂から上がり、差し出された腰掛けへと座り、背中を皐月へと向ける。
「それじゃあ、始めるねー」
皐月は、スポンジにボディーソープを塗し、遥佳の背中へと当てて、ゆっくりと上下に動かし始めた。
遥佳が男の時に自分で、がしがしと擦るのとは違う、陶器を磨くような、丁寧な動かし方だった。
背後には、バスタオルを巻いただけの皐月さんがいて、自分の背中を擦っているのだと思うと、遥佳はドキドキしてくる。
女の子と一緒にお風呂に入るなんてことがいつかはあれば良いかと思っていたが、それがまさかこんな形――自分も女の子になって、背中を流されるとは思いもつかなかった。
自分が女の子だから、皐月も無防備な姿で一緒に風呂に入っているのだとは思うものの、それでも嬉し恥ずかの状況であることには違いない。
正面の鏡を見れば、後ろで、かいがいしく背中を洗っている皐月の姿が見える。
その前には、女の姿になっている、遥佳の姿がある。
これで、自分が男の姿だったらなあ、とも思うのだが、そうだったら皐月に背中を洗ってもらうなんてことはなかったろう。
そう思うと、やっぱり女の子になって良かったと遥佳は結論づけるのだった。
「はい、背中、終わったよ」
そう言って、皐月は背中についた石けんをお湯で流し落とした。
「それじゃあ、次に前を洗ってあげるね」
自然な口調で言ってくる皐月の声に、一瞬、遥佳はそのまま従おうとしたが、その意味することに気付いて、
「え、前って、前ですか?」
意味の分からないことを口走ってしまった。
「遥佳ちゃん、あんまりおっぱいとかアソコの洗い方とか、分からないでしょ」
「は、はあ……そうですけど」
確かに、遥佳にはそんなことは分からない。なんとなく、スポンジで慎重に洗えば良いと思っていただけだった。
「それともあれかな……自分で洗ってみたいの? やっぱり男の子だもん、興味あるんだよね?」
恥ずかしいことを質問するかのように、皐月は伏し目がちになり、上目遣いになって尋ねてきた。
言われた遥佳も、皐月が感じている恥ずかしさが伝染したような気持ちになってしまった。
いくら自分の体だからと言って、自分で洗うのは、女の自分に対して申し訳ないような気がする、なんて良く分からない気持ちになったのだ。
「そ、そんなこと無いですよ。お願いします」
「わかった。それじゃあ、こっちを向いて」
言われるままに、遥佳は体を回して皐月の方へ体を向けた。
女性相手でも――むしろ女性相手だからこそ――女性になった自分の体を見られるのは、なんとなく恥ずかしく遥佳は感じた。
「それじゃあ、洗うね。ごしごし、と」
そう言って皐月は、遥佳の腕から洗っていった。
だんだんと上に移動してきて、脇の下へと近づいてきた。
皐月が遥佳の腕を持ち上げると、脇の下が晒される。
さらけ出された部分を見て、
「あ、そうか。遥佳ちゃん、女の子になったばかりだから、むだ毛の処理とかはしていないんだね」
言われて脇の下を見てみると、綺麗な脇の下から、脇毛が生えていた。
男としては見慣れている風景であり、男に比べれば随分と薄いのだが、それでも綺麗な女の子の脇の下から毛が生えているというのには違和感を感じてしまう。
今の今までまるっきり意識していなかったことではあるが、女性としての遥佳の体を粗末に扱っているようで、なんとなく申し訳ないような気がした。
「そうですよね。女の子って、脇毛とか、処理するんですよね」
「そうだよ。あたしはかみそりで剃っているよ。お姉ちゃんは、この前、永久脱毛したって自慢していたけれどね」
「そうなんですか」
脇毛の処理なんて言う、男の時にはまるっきり意識したことのないことを聞かされて、遥佳は妙に感心してしまった。
男の時には、髭を電気かみそりで剃っていただけだが、自分が脇の下にかみそりを当てて毛を剃っている場面を想像すると、女の人って大変だな、と思うのだった。
「まあ、遥佳ちゃんは、すぐに男の子に戻るから処理はしなくても良いよね。だから今日は洗うだけ」
皐月は、遥佳の脇の下を擦り始めた。
「くすぐったかったら言ってね」
言われて、遥佳はどきりとした。ちょっとくすぐったいと思っていたのだが、女の子に脇の下を洗われるシチュエーションにドキドキしていて、もしもくすぐったいと言ったら止められてしまうかもしれないと思って、そう言わずにいたのだった。
「大丈夫でう」
少し声が裏返り、しかも最後は噛んでしまった。
だが、皐月は気付かないように、そのまま脇の下を洗った。
皐月の手が、さらに下へと動く。
乳房へと、スポンジが触れてきた。
ふもとから乳首に向かってと、ゆっくりとスポンジが動き、綺麗なその形をなぞるようにして動いていく。
女の子の手で、自分の胸元にある女の子のおっぱいを洗われている……そう思うと、遥佳はドキドキとしてくる。
触られるくすぐったさと、柔らかい乳房がわずかに形を変えていくのを気にしていると、
「どう? くすぐったくない?」
「大丈夫でせう」
緊張のあまり、さっき以上に噛んでしまった。
「でせう、って変なの。旧仮名遣ね。でも面白いね。あたしも使ってみよう」
冗談と思ったのか、皐月はくすくすと笑う。
皐月の洗う先が、乳首へと向かう。
「今度は、くすぐったくないでありんすか?」
「いや、それって旧仮名遣いじゃないです」
「あ、そうだね」
てへ、と皐月は舌を出した。
皐月は女子大生で、遥佳よりかは年上のはずなのだが、その仕草は妙に女の子っぽく、遥佳はドキリとしてしまう。
こんな可愛い女の子にお風呂で体を洗われているんだから、女の子になったのも悪いもんじゃないなあ、と思うのだった。
「それじゃあ、続けるね」
皐月の手先は、遥佳の腹部へと移っていた。
だんだんとスポンジが下へと降り、やがて、股間へとたどり着いた。
すると皐月は、スポンジを左手に持ち、右手の指先へと、ボディソープを付けたかと思うと、その指先を股間へと延ばしてきた。
思わず遥佳は、股間を閉じる。
「スポンジで洗わないんですか?」
「そうだよ。ここは大事な部分だから、指先で洗うもんなんだよ」
「そ、そうなんですか」
大事な部分を直に指先で触られることに驚いた遥佳だったが、そういうものだと言われて、どうにか納得する。
同時に、自分で洗わないで良かったな、と思う。おそらく自分だったら、いつもの習慣で、スポンジを擦りつけていたことだろう。そうしていたら、どんな目にあっていたことやら。
「そ、それじゃあ、お願いします」
遥佳は、緊張気味に足を開く。
皐月の指先が、ゆっくりと遥佳の股間を動く。
まずはクリトリスから入って、割れ目を包む襞々を撫でるようにして動いていく。
そんな指先の動きが、遥佳には敏感に感じられる。
お風呂場で、女の子に股間を指で触られる。
男だったら、確実に勃起しているシチュエーションだ。
だが、今の遥佳には大きくなるものはなく、ただ女体の精密さを思い知らされるばかりだった。
なんとなく感じられる恥ずかしさから、どうしても無言になってしまい、風呂場だから、くちゅくちゅという音がやけに響いてしまう。
指先の動きが止まり、皐月が顔を上げてきた。
「なんだか、照れちゃうね」
皐月も恥ずかしいと思っていたようだ。
そう言ったかと思うと、皐月は左手に持っていたスポンジを頭の位置まで掲げて、前後に動かして、
「ガチョーン」
と言ってきたのだった。
突然の行為に、遥佳は茫然とする。
言った皐月は顔を赤くして、
「あ、すべっちゃったかな? なんだか照れちゃうんで、一発ギャグで場を和ませようとしたんだけれど。手にしていたのがボディーソープなだけに、すべっちゃいました」
そんな皐月の仕草を見て、ワンテンポ遅れて、遥佳は笑い出した。
ギャグそのものに対してでなく、そんなギャグをする、皐月が可愛いと思ったからだった。
釣られるようにして、皐月も笑い出す。
「皐月ちゃんって面白いね」
笑いながら、遥佳が言う。
「良く大学でもそう言われるんだけれど、面白いかなあ?」
「うん、とっても。それに、なんだか和む気がしてくる」
「あ、そう言われると嬉しいかも」
「そうだよ。皐月さんは、癒し系なんだよ」
「そうなんだ。どうもありがとう。それじゃあ、次は足を洗ってあげるね」
足ぐらいは自分でも洗えるし、足まで洗わせるのは悪い気もしたが、皐月に甘えるつもりで、そのまま続けてもらうことにした。
足の爪先までスポンジは動き、どうにか終わりとなった。
皐月はシャワーを手にして、遥佳の体についた石けんを洗い落としていく。
上半身からお湯を当てていき、だんだんと降りていき、股間へと来た時に、その部分に集中的にシャワーが当たるように、位置を固定してきた。
シャワーのお湯が、割れ目の中へとわずかに入ってくるのが感じられる。
ちょっと戸惑った遥佳に気付いたのか、
「あ、ここの部分は、念入りにシャワーを当てるんだよ」
先にそう言ってきたのだった。
「そうなんですか」
やはり、女の子が体を洗うのって大変なんだな、と遥佳は改めて思った。
足までシャワーが当たり、どうにか体を洗うのが終わった。
ずいぶんと長い時間がかかったなあ、と遥佳は思った。
「それじゃあ、次は髪の毛だね。じゃあ、また背中を向けて」
まだ続くのか、と思いつつ、なるほど女の子は長風呂だというのは、こういうことからなんだな、と遥佳は感じた。
こちらも長い時間の掛かった洗髪を終えて、遥佳は再び湯船へと入った。
皐月は、風呂から出て行くのかと思いきや、そのまま体に巻いていたバスタオルを外し、今度は自分の体を洗い始めたのだった。
遥佳は慌てて視線を逸らす。
「皐月さん、見えちゃいますよ」
「大丈夫だよ。お風呂はお姉ちゃんと一緒に入り慣れているから、見られても気にならないよ」
「でも、僕は男の子ですし」
「今は女の子だから平気ー」
「いや、そういう問題では……」
そう言うものの、やっぱり遥佳だって、女の子の入浴シーンが見たくない訳では無い。
皐月のほんわかさに甘えるようにして、そのまま一緒に風呂にいて、皐月が体を洗う場面を、ちらちらと見たのだった。
全身を洗い終えたかと思うと、皐月は立ち上がり、遥佳が入っている湯船へと、向かい合うようにして入ってきたのだった。
広い湯船だから、女の子二人が入っても、まだ十分余裕があった。
ただ、目の前で、裸の女の子が風呂に入っているのを見るのは、遥佳には刺激が強すぎた。
「あの……バスタオルとか巻いたらどうですか」
「温泉じゃないんだから、こっちの方が楽で良いよ」
「でも、僕から丸見えになっているんですけれど……」
「良いよ。見られたって減るもんじゃないし。あ、でも、見られて腰回りの贅肉が減ってくれたら嬉しいな」
なんだか良く分からないことを、皐月は言う。
まっすぐ皐月の体を見るのも気恥ずかしく、かと言って目をそらすのはもったいないと思い、遥佳は、ちょうど二人の間ぐらいの湯面を見つめていた。
その時、天井から、ぽちゃん、ぽちゃん、と緑色の粘液が、垂れ落ちてきたのだった。
二人が見上げると、そこには緑色をしたどろりとした固まりが天井一面に貼り付いていたのだった。
遥佳は緊張して身構える。
先に口を開いたのは、皐月だった
「これってひょっとして……カビ?」
「違います」
遥佳は突っ込むように、呟いた。
「あれは多分、妖魔です」
「その通りです。妖魔です」
脱衣場の方から、髪の毛から外していた水引き丸の声が聞こえてくる。
ぽたり、ぽたり、天井から垂れ落ちてくる妖魔の量は増えていき、湯船をだんだんと緑色に染めていく。
二人は慌てて、湯船を出て、様子をうかがった。
湯船に落ちる妖魔の量は、さらに増える。
とうとう、湯船はすっかり緑色になり、さらには、まるで一つの生き物のように、うねうねと動き、その表面からは何本もの触手が生えてくるのだった。
「遥佳様、早く巫女装束に着替えてください」
脱衣場から、水引き丸の声がする。
がらりと曇りガラスのドアを開けて、水引き丸に尋ねる。
「やっぱり、また犯されなきゃならないんだよね」
「そうです。そのためにも、早く巫女装束に」
「今、裸なんだけれど、着替えなきゃ駄目なの?」
「この巫女装束には、妖魔の意識をこちらに向かわせ、その分早く浄化させる力があるのです。ファンタジーRPGで、女戦士がビキニタイプの鎧を着ているのと同じ理屈なのです」
「多分、その理屈って違うと思う……」
「さあ、早く!」
「わ、分かったよ」
言われるままに、遥佳は巫女装束を身につけていく。体を拭く余裕も無かったため、肌に触れる腰巻きが、ぺたりと貼り付いてくる。
さあ、と妖魔に向かおうとした所で、
「遥佳ちゃん、あたしも一緒にいていいかな?」
おっとりとした顔の中に、真剣な目つきを浮かべて、遥佳を見つめてきたのだった。
「駄目ですよ。妖魔なんかに犯されるのは、僕だけで十分です」
「でも、遥佳ちゃんばっかりじゃ大変でしょ。水引き丸も言っていたけれど、巫女装束で妖魔の気を惹くんでしょ。だったらあたしも着替えてくる」
止める間もなく、皐月は脱衣場を出ていった。
「どうしよう……」
遥佳は水引き丸に尋ねる。
「確かに、皐月様の言う通り、巫女の数が多い方が、妖魔の興奮の高まりも早まります」
「でも、皐月さんに悪いし……」
「皐月様もこの家に生まれた運命は理解しています。さあ、早く妖魔の所へ」
遥佳は仕方なしに、妖魔のいる浴室へと向かった。
湯船の中は、さっき以上に触手で満ち溢れ、鰻の養殖場を思わせるものがあった。
その表面からは、早く入ってこいと言わんばかりに、触手が伸び、うねうねと動く。
「うう、気持ち悪い……」
言いながら、遥佳は触手だらけの湯船へと、足を入れた。
体が入る部分の触手が動き、人間一人が入れるスペースが空く。
足の裏が触れると、元々がお湯だったからか、いつも以上にどろりとした感じが伝わってくる。
遥佳は、触手の中へと身を沈める。
肩まで入るのと同時に、触手が一斉に遥佳の体へと貼り付いてきた。
「ひぃ!」
固い触手とは違った、どろりとしたスライム状の妖魔が、巫女装束の隙間へと入り込んでくる。
体中に、べったりとスライムが貼り付き、まるでぬるぬるとしたレオタードの水着を着ているような気分になる。
その時、がらりとドアが開いた。
「遥佳ちゃん!」
そこには、巫女装束に着替えた、皐月が立っていた。
「皐月さん……ここは僕に任せてください」
「ううん、あたしにも手伝わせて」
言って皐月は、触手風呂へと足を入れる。
「これも巫女の役目だし。それに、あたし、遥佳ちゃんを応援したいから……」
皐月は、少し頬を染めつつ、上目遣いに遥佳を見つめてくる。
ずぶり、ずぶり、と皐月の体が触手に埋まっていき、胸元までがすっぽりと触手に包まれた。
「だから、一緒に頑張ろう」
「皐月さん、ありがとうございます」
そんな二人のやりとりをよそに、触手はますます遥佳の体に絡みついてきた。
胸から下全体が、すっぽりとスライム状の妖魔に包み込まれる。
全身に貼り付かれると、嫌でもその形状を意識してしまう。
胸の部分は前へとせり出し、股間の部分には何もなく、ヒップは丸く膨らんでいる。
遥佳の皮膚を覆っている妖魔に、変化が起こった。
その表面が、つるりとしたものから、だんだんとうねりを作り出すようになってきたのだった。
細かい襞々が、体中に巻き付いてくるような感じになる。
その一本一本が、遥佳の体をくすぐってくるのだった。
「ひゃうぅ、くすぐったい……」
妖魔の責めは全身に渡っていた。
指先から脇の下、乳房や股間はもちろんのこと、足の裏までに及ぶ。
その全身に細い襞々が動く感じは、まるで体中を同時に舐め回されているかのようだった。
「んあぁ……あは……」
これまでに感じたことのない責めに、遥佳は身をよじらせる。
すると、そのよじれに対して、妖魔の張り付き方は、さらにきつくなっていくのだった。
目の前にいる皐月を見ると、彼女にも同じ責めが行われているようだった。
頬を赤く染め、歯を食いしばるような表情を見せてくる。
申し訳ない、と思うと同時に、触手に襲われる巫女の姿とは、こんなにエッチなものなのか、とも遥佳は思ってしまい、そう思ってしまったことを、心の中で皐月に詫びる。
そんな遥佳の視線に気付いたのか、触手が新たな動きをした。
二人の合間にいた触手が両脇へと動き、二人の間に空間が出来た。
遮るものが無くなり、皐月の姿がさらけ出される。
その姿は、触手で出来た壁に貼り付けられた巫女のものだった。
巫女装束の中には、遥佳と同じように、スライム状の妖魔が入り込んでいるようで、時折巫女装束が下から持ち上げられ、波を作っていく。
そんな皐月の様子を見ていると、今の自分も同じ格好をしているのか、と思い知らされ、遥佳は恥ずかしさを感じてしまう。
全身に貼り付いている妖魔の中で、何ヶ所かの動きが激しくなった。
「ああん、胸……」
遥佳が呟く。
下側を包んでいた妖魔が上へとはい上がり、乳房全体を包み上げてくる。
まるで型どりをするかのように、スライム状の妖魔が貼り付いてきて、元々大きな乳房を、一回り大きなものにする。
巫女装束越しのため、直に見ることは出来ないが、遥佳の乳房は、まるで巨大な舌が貼り付き、べっとりと舐め回しているかのようだった。
ぬめぬめとした巨大な舌は、動物が獲物を味わうようにして、遥佳の乳房を動き回る。
乳房を包み込み、一方へとねじるような動きは、人間にはもちろん、触手にも出来ない動きだった。
体の柔らかい部分が回転するぐらいにこね回される感覚――乳房を持っている、女性の体ならではの責められ方だった。
そうしているうちに、だんだんと乳房の中が熱く火照ってきた。
「ん……」
ねっとりとした責めをされる度に、だんだんと乳房の表面が敏感になり、より一層、妖魔のまとわりつく感じが伝わってくる。
そして湧き起こる、乳房からの快感。
乳房で快感を感じるのは、何度経験しても、男の遥佳にとっては不思議な感覚だった。
本来は感じるはずの無い場所で感じてしまうだけでなく、その強さは、身をくねらせてしまうほどなのだ。
皐月も同じ責めをされているようで、巫女装束の胸部分が、渦を巻くように動いているのが見て取れる。
責められているのは、乳房だけでは無い。
ぺったりと妖魔が貼り付いている股間の部分でも、乳房のように巨大な舌が舐め回してくるのだった。
それも、人間のように、上下に舐めてくるのではない。
スライム状になっているのを利用して、絶えず股間の割れ目の下から上へ、そしてクリトリスへと、舐め上げてくるのが繰り返されるのだった。
人間が舐めるような、わずかのタイムラグも無い、連続的な責めだった。
「ああ、ああっ……」
遥佳は思わず声を上げてしまう。
そして、いつもだったら一人だが、今は目の前に皐月がいることに気付く。
皐月の方はと見ると、やはり股間の辺りがもぞもぞと動いていて、同じような責めをされているようだ。
だが、声を上げることは無かった。
ぷるぷると体を震わせながら、ぎゅっと口を閉じているその様は、まるで遥佳に喘ぎ声を聞かれるのを恥ずかしがっているかのようだった。
一方の遥佳は、声を出さずには居られない。
AVなんかを見ては、女優が快感に声を出すのに興奮していたが、あれは演技だけでは無いのだな、と遥佳はぼんやりと思った。
我慢しようとしても、呼吸が苦しくなって、自然と声が漏れてしまうのだ。
それも、AVのようにイヤホンやスピーカーを聞くのではなく、生の音声が聞こえてくる。
しかも、そんな色っぽい声を出しているのは、自分自身なのだ。
いわゆる骨伝導という奴で、自分が声を出している分、他人の声よりも、一層頭に響いてくる。
耳元で喘ぎ声を聞かされているどころではない。頭の中に、喘ぎ声を注ぎ込まされているようなものなのだ。
自然に漏れる声に、男としての遥佳の興奮はさらに高まり、それは女性の体としての敏感さをさらに高めていくのだった。
「ああん、あはっ!」
股間への刺激を繰り返され、遥佳は声を上げ、身悶える。
乳房と股間から湧き起こる敏感さの上昇は、快感と共に全身へと散らばっていく。
釣られるようにして、これまでは意識することの無かった部分までもに、スライム状妖魔の動きを感じてしまうのだった。
首筋の、うなじの部分がくすぐられる。
息を吹きかけられて、びくりと反応してしまうことがあるが、その比ではない。くすぐったさを通り越して、撫でるような穏やかな快感を感じてしまうのだった。
乳房や股間から湧き起こるような、ストレートな感じではない。さざなみのような刺激に、つい体の方が、思わずくねらせてしまうような、そんな微妙な感じなのだ。
もちろん、男のペニスが感じるような、直裁的なものとはまったく違う、女体の敏感さならではの、ごくささやかな、それでいて、つい反応してしまう感覚なのだ。顔のごく近くにある、見えない部分が刺激されていることへの意識もあるのかもしれない。
妖魔の動きは、うなじから背中へと動いていく。
背筋に沿って、巨大な舌が舐め下ろしていくのが感じられる。
「ああ……それって……」
うなじとは違った、背中をのけぞらせてしまうような刺激に、遥佳は思わず声を上げてしまう。
後ろから背中を舐められる感覚は、そこに誰かが居て、遥佳の体を味見しようとしているかのようなのだ。
正体の分からない相手に体をなぞられているようで、これから起こりうることへの不安感と、それでも女体が感じてしまう期待感がない交ぜになる。
「あは……駄目……」
背中をくねらすと、それに合わせるようにして、舐める向きも変わってきて、絶えず背筋を舐め回してくるのだった。
妖魔の責めは、大きな部分だけに止まらない。
(え、何……?)
どこだか分からないが、体の一部から、ささやかな快感が伝わってくるのだ。
敏感になった全身に意識を巡らせて、ようやく分かった。
それは、足の指先の合間からやってきているのだった。
これまで、性感帯だとは一度も意識したことの無い部分だった。
(こんな場所が気持ち良いなんて……)
その部分も、うなじや背中と同じように、性器ほどの強烈な快感を起こす訳ではない。しかし、体の他のどの部分とも違う、まさに足の指の合間ならではと言える、妙な倒錯感の伴った快感なのだ。
遥佳の頭には、SMの女王様が、男の奴隷に足を舐めさせている場面が浮かぶ。体の端までも奉仕させ、全身を舐め回させる。妖魔に責められているのは遥佳のはずなのに、足の指の合間という細かい部分まで舐められていると、逆に妖魔を仕えさせているような、不思議な感覚が湧き起こるのだった。
「あ、あぁん……」
目の前から、皐月の喘ぎ声が聞こえてきた。
見ると、やはり遥佳と同じように、足の爪先までもがすっぽりとスライム状の妖魔に包み込まれている。
おそらくは、遥佳と同じ責めをされて、我慢できずに声を出してしまったのだろう。
その声は、どうにか我慢しようとしても思わず漏れてしまっているようで、我慢しようとする皐月の健気さと可愛いらしさ、そして我慢しきれないほどに快感を感じている様が感じられた。
触手に責められ、声を上げ身悶える巫女。これまでに、遥佳が何度も体験したことではあるが、こうやって映像として見るのはこれが初めてだった。
皐月には悪いと思いつつも、つい興奮してしまう。
男であれば、触手に変わって、そのまま抱きつき、挿入したくなるような映像だ。
だが、今の遥佳には、挿入すべきものは付いていない。
代わりにあるのは、触手に挿入されるべき器の方だった。
その器へと、触手が入り込んできた。
「ああん、入っちゃダメ……」
目の前の皐月が、腰をくねらせて抵抗するが、それが徒労に終わってしまうことは、遥佳も身をもって感じていた。
割れ目へと、触手が入り込んでくる。
それも、普通にペニスが入ってくるのとは違っていた。
どろりとした水のような姿を活かして、まるで一本の太い水流のように、どくどくと侵入してくるのだった。
穴を穿(うが)つように、妖魔の水流が当たってくる。
奥へ奥へと入ってくるにつれ、初めはさらさらとしていた妖魔の動きは、だんだんとしっかりとしたものへと変わっていった。
同時に、その動きも変化していった。
初めは押し入ってくるだけの動きが、今度は逆に、膣内を上から下へと流し落としていくような動きへと変わったのだった。
しかし、膣内から妖魔が流れ出ていく感じはなく、相変わらずその先端は奥へと入ってくるのだった。
妖魔の動きは、噴水と同じような動きなのだった。
その中心で水を噴き出し、頂点までたどりついた水は、周りへと広がって流れ落ちていく。
妖魔の動きは、まさにそれだった。
入り込んでいる部分の真ん中へと、自らの一部を流しこんでいき、奥まで達した所で、今度は外側から膣襞を掻き下ろしつつ、外へと出て行く。
絶えず膣内を掻き下ろしていくという、人間はもちろん、普通の触手にも出来ない、スライム状の妖魔ならではの動きだった。
「ああん、変だよ。入ってくるのに、出て行くぅ」
そう叫んだのは、遥佳ではなく皐月の方だった。
皐月の方が、妖魔を相手にしたことは多いはずだが、このタイプは初めてだったのだろう。その動きと、それが生みだしてくる感覚に戸惑いつつ、声を上げていく。
「ああん、あはっ!」
もはや皐月は、喘ぎ声を我慢する様子は無かった。
まるでフルマラソンを終えたマラソンランナーが呼吸をするように、激しく声を出すのだった。
声を出しているのは、遥佳も同じだった。
「あくぅ……んん……あはっ」
こもった浴室へと、二人の喘ぎ声が響く。
二人の巫女が、妖魔に全身を包まれ、触手を股間に受け入れ、身をくねらせる。
どんな男でも興奮するような場面が、繰り広げられていた。
「ああん、入ってくるぅ……皐月、ダメになっちゃうぅ」
皐月は身をくねらせ、いつしか自分から腰を振るようになっていた。
巫女装束による腰振りは、なまじ全裸によるものよりも、遥佳を興奮させた。
そして、いつのまにか自分自身も腰を振っていたことに、遥佳は気付いた。
意識しないままに、勝手に腰が動き、妖魔の動きを受け入れ、より激しいものにする。
股間に入り込んでいた妖魔の先端は、とうとう子宮口にまでたどり着いていた。
膣と子宮を区分けする、わずかな境目へと、触手の水流は絶えず当たってくる。
それは、ピストン運動とはまったく違う、無限挿入運動とでも言うものだった。
「ああ、そこ、ダメ……ダメだったらぁ」
皐月はびくん、びくん、と全身を震わせ、口では嫌だと言いながら、体ではもっともっととねだる。
「ああ、皐月、ヘンになっちゃう……もう、イッちゃいそう……」
その声に、遥佳はびくりと反応した。
巫女の姿になって以来、妖魔に何度も犯されて、女の快感を味わわされてきたが、女の絶頂というものは、まだ体験したことが無いのだった。
男の絶頂を上回る女の快感に戸惑いつつ感じてきていたが、さらにその先にある女の絶頂となると、未知のものへの好奇心と恐怖を感じてしまう。
「ああ、イクっ、イクっっ!」
首を激しく左右に振り立て、皐月は叫ぶ。
それに合わせるようにして、触手の動きも激しくなってきた。
それまでは膣内を一直線に流れていた水流が、まるでいきなり水を流されたホースのように、うねうねと暴れ始めたのだった。
「ああん、そんなことされたら……皐月……」
皐月は腰を振り、全身を反らせ、頭をのけぞらせる。
より高まりへと達していたのは、遥佳も同じだった。
快感がますます高まっていき、これまでのものを合わせた以上になる。
しかし、まだその先がありそうだった。
この快感が、いつまでも高まっていきそうだった。
男の、射精の直前で急激に快感が増し、射精と同時に終わるのとは、まったく違っていた。
遥佳が快感の地平線を感じている時に、皐月の舌っ足らずさの混じった叫び声が聞こえてきた。
「ああ、イクっ、イクぅ、イッちゃうぅ!!!!」
皐月の中で爆発が起こったかのように、彼女の体が、大きく、びくん、と震えた。
同時に、皐月と遥佳の中で、妖魔が叫び声を上げたような気がした。
どびゅぅぅぅ、どくん、どくん……
二人の胎内へと、妖魔の欲望が注ぎ込まれる。
「んあああぁっっ!」
熱い塊が流れ込んでくるのを、遥佳は叫び声を上げつつ受け入れた。
射精の瞬間に、遥佳の快感はますます高まった。
そんな遥佳に向けて、妖魔はだめ押しをするように、二度目、三度目の射精をするのだった。
「ああ、流れ込んでくる。僕の中に、入ってくる……」
これまで激しかった妖魔の責めが終わった。
だが、遥佳の中では、相変わらず快感の余韻が、少しも減ることなく、渦巻いているのだった。
「遥佳様、遥佳様」
後ろから、水引き丸が声を掛けてくる。
「分かっているよ」
遥佳は呟いて、お札を取りだした。
「吸引!」
途端、遥佳と皐月の二人の周りで渦巻いていた妖魔の姿が、お札へと吸い込まれる。
二人は、ぐったりとした体の中で、とすん、と腰を浴槽へと下ろす。
「終わった、の?」
皐月が、呼吸を整えながら、尋ねてくる。
「はい、無事に吸引しました」
遥佳は、お札を見せつける。
「そうなんだ。やったね」
言って皐月は、ガッツポーズをした。
「それにしても……遥佳ちゃんには、恥ずかしい所、見られちゃったな。あたしが、イクところ」
「は、恥ずかしくなんか無いですよ。皐月さんが一緒で、僕、助かりました」
「遥佳ちゃんの役に立てて、嬉しいな」
そう言うと、皐月は遥佳へと近づいてきた。
「でも、一番頑張ったのは遥佳ちゃんだよ。だから、これはそのお礼」
二人の顔が近づき、ちゅっ、と唇が触れあう。
戸惑う遥佳をよそに、皐月はすぐに顔を離し、立ちあがった。
「じゃあ、あたしはレポートがあるから部屋に戻るね。遥佳ちゃんは、ゆっくり休んで」
言われた遥佳は、相変わらず浴槽に座ったままだった。
唇に残る感触は、これまで触手に犯されていた以上に鮮烈に残っている。
女の子として初めてするキスは、甘酸っぱい味がした。

第五章

何かがやってくる。
そんな気配に、遥佳は目を覚ました。
目を開けると、あてがわれた和室の天井が見える。
枕元へと置いてある、リボンの姿をした水引き丸へと声を掛けた。
「何かが、近づいてきてる」
「はい、妖魔の気配です。間違いありません」
「裏山、の方だね」
確認するなり、遥佳は布団から抜け出し、枕元に置いてある巫女装束を身につける。
部屋には自分しかいないのが幸いだった。
風呂場で皐月も一緒に妖魔に犯されたように、他の人を巻き込むことは、出来ることならしたくない。
残る妖魔は、この一匹だけだ。
遥佳は、リボンの姿をした水引き丸で長い髪の毛を縛りつつ、はちまきを巻くような心持ちになった。
弥生たちを起こさないようにと、ゆっくりと玄関に向かい、外へと出て、裏山を目指した。
暗闇で刺激の少ない中なので、妖魔の気配が一層はっきりと感じられる。
できることなら、あまり近づきたくない気分だった。
草食動物が、自分が肉食動物に狙われていると感じた時、そんな感覚なのだ。
しかしそれでも遥佳は向かわなければならない。
月夜の中を、裏山に出来ている、獣道を歩く。
夜でも外灯の明かりに慣れてしまっている遥佳にとっては、まるで人外の地に迷い込んでしまったかのようだった。
がさがさと雑草を踏みしめて歩いていく度に、背筋がぞっとするような、妖魔の気配はますます高まっていく。
山の頂上まで来た時に、遥佳は見つけた。
肌色で、赤ん坊ぐらいの大きさの肉塊が、ぶよぶよと蠢いているのだった。
無言のままに、遥佳はそれをじっと見つめてから、水引き丸に尋ねた。
「あの妖魔の属性は何?」
しばらく探るような間があってから、答えが返ってきた。
「胎内回帰願望です」
「タイナイカイキ、って何?」
「女性の胎内に赤ん坊として戻りたい、という意味です」
「女性の胎内に? 赤ん坊として?」
そう言って、遥佳は自分の腹を見つめた。
水引き丸の言う通りだとすると、妖魔は遥佳の胎内に入りたいとなる。
つまりは、遥佳が妊娠するということだ。
これまでに、女性として何度も妖魔に犯されてきて、それには慣れてきていたが、さすがに妊娠するとなると、いくら自分が女性の体だからと言っても、抵抗がある。
しかし、と遥佳は自分に言い聞かせる。
これも、女の体を持った、自分の役目なのだ、と。
遥佳は、妖魔に近づいていった。
それに気付いたのか、塊と化していた妖魔の表面から、何本もの触手が伸びてきて、遥佳の両手両脚に絡みつき、体術のように遥佳のバランスを崩させ、背中から地面へと倒す。
絡みついてきた触手は、両手両脚に巻き付いたまま、遥佳を動けないようにしている。
地面へと仰向けにされた遥佳の元へと、妖魔が近づいてきて、さらに触手を伸ばしてくる。
伸びてきた触手は、遥佳の胸元に近づき、小袖と腰巻きをはだけさせ、乳房を露わにさせる。
胎内回帰というから、いきなり股間の方に入り込んでくるかと思っていた遥佳には意外な気がしたが、今はそれを受け入れるしかない。
さらに、二本の触手が、さらけ出された乳房へと近づいてきた。
触手の先端は、これまでとは違っていた。
いつもは男のもの以上の太さを持っていたはずなのに、今回はやけに細い。まるで長い注射針のようだった。
まさか、と遥佳は思う。
二つの先端は、狙いを定めたかのように、まっすぐに遥佳の両乳首へと伸びてきて、その先端へと貼り付いた。
触手の動きは、それで終わらない。
じわり、じわり、と遥佳の乳首の中へと、二本の細い触手が入ってくるのだった。
「うわ、入ってくるよ。僕のおっぱいに、触手が入ってくるよ」
注射のような痛みは無かった。
だが、乳房の中に触手が入ってきたことはこれまでに無く、普通の人間であれば、決して体験できないことを、今の遥佳はされているのだった。
元来、女性の乳房からは母乳が出るようになっているから、何かが通り抜けることは可能なのだろうが、その中へと触手が入ってくるとなると、やはり不気味なものがある。
乳房という、女性にとって神聖なものが、おぞましい妖魔の触手によって犯されているような気がしてくる。
触手の侵入は、なおも続いている。
敏感な乳房の中で、触手がゆっくりゆっくりと探るように埋もれこんでくるのが感じられる。
気持ち良さなど無かった。
逆に、痛みも無かった。
ただ純粋に、乳房が触手によって浸食されているのだ、という事実だけが遥佳の目の前に突きつけられる。
入り込んでくる触手に、新たな動きが起きた。
直接見ることは出来ないが、乳房から伝わってくる感覚からは、触手がその中で枝分かれをしていき、さらに奥へと入り込んでくるのが感じられるのだった。
それはまるで、植物が大地に根を下ろすかのようだった。
自分の乳房が触手に支配されていく、そんな気持ちに、遥佳はぞっとする。
触手はなおも身を進め、乳房の中で枝分かれを繰り返していく。
遥佳の頭に、乳腺、という言葉が浮かぶ。
乳房の中にある、母乳を分泌するための器官だ。
おそらく触手は、その乳腺の中へと入り込んでいるのだろう。
母乳が流れるのに逆流するかのように、触手が入り込んでいるのを、乳房の感覚越しに感じるのは、まるで、女になった自分の体を解剖されているかのようだった。
乳房の中程まで触手が達した時に、その動きが止まった。
しかし、遥佳が安心する暇は無かった。
「な、何かが出てるよぉ」
乳房の中へと張り巡らされた触手の表面から、何かが染み出し、遥佳の乳房を内側から圧迫してきているのが感じられる。
同時に、乳房が熱く火照っていく。
内側から炙られるような感覚に、遥佳は身をよじりつつ、乳房をじっと見つめる。
変化が、遥佳の乳房に起こった。
「な、何?」
触手が吐き出すもので乳房が圧迫される感じが、だんだんと外へ外へと広がっていった。
「おっぱい、大きくなっていく……」
遥佳の眼下に広がる、二つの膨らみが、だんだんと大きくなっていくのだった。
その感覚は、まるで男のペニスが勃起していくのと同じような感じだった。
その中心へと熱いものが集まっていき、脈打ちながら、だんだんと大きくなっていき、同時に神経が過敏になっていく。
人間の器官の大きさが変化するなんてのは、遥佳にとってはペニスぐらいしか頭にないからそう思ったのだが、いくつか違いもあった。
ペニスの場合だと、大きくなるのと同時に固くなり、痛いほどになるのだが、今の場合は、そういうことは無かった。
柔らかさとその丸みを帯びた形は保ったままに、まるで風船が膨らむようにして、徐々に大きくなっていくのだ。
すでにその大きさは、ブラのサイズで言えば、2カップぐらいは大きくなっていた。仰向けになっている姿勢ではあるが、若さによる弾力のためか、それとも触手が流しこんでくる成分のためか、乳房は大きくなっても垂れることなく、その綺麗な形を保ったままだった。
表面積が大きくなり、乳房越しに感じる空気の感触が増えてきて、同時に、胸元へとのしかかってくる乳房の重みが、だんだんと増してくる。
まるで、乳房にのしかかられているような気がしてきた。
乳房の膨張は止まらない。
その大きさは、弥生のものすら超えていて、下を向いている遥佳の視界を覆い付くさんばかりになっていた。
眼下で自分の胸元にあるものとして見下ろしている、という効果もあるのだろうが、それは遥佳がこれまでに見てきたどの乳房よりも大きく見えた。
乳房の変化は、それだけではない。
それどころではなかった。
乳房が大きくなるのと同時に、その中で、何かが渦巻いているのが感じられた。
触手の動きとは違う、もっとどろどろとしたものだった。
その感覚は、触手が何かを吐き出しているのとは違い、乳房の方から何かが出されているようなのだ。
口から唾液が染み出るように、乳房の中から何かが染み出ている、そんな感じなのだ。
「な、何、これ?」
自分のものとは思えないほどに大きくなった乳房の中で、さらに起こる変化に、遥佳は戸惑い、声を漏らす。
乳房の中から染み出てきたものは、徐々に溜まっていき、内側から乳房を圧迫する。それによって、乳房はさらに一回り大きくなったかのように見えた。
その感覚は、射精寸前のペニスなど比ではない。まるで、乳房が破裂してしまうかのような、強烈な圧迫感なのだ。
「く、苦しいよ。おっぱい、苦しいよ」
遥佳が身をくねらせると、巨大な乳房が激しく揺れる。
その大きさと重さは、逆に遥佳の体の方を揺さぶってくるぐらいだった。
途端、乳房へと埋まり混んでいた触手が、動いた。
後退したかと思うと、その全身を一気に遥佳の乳房から引き抜いたのだった。
「あはぁぁ!」
乳房に入っていたものが突然抜けだし、遥佳は驚きの声を上げる。
だが、遥佳が驚くのは、むしろこれからだった。
触手の先端が抜け出るのと同時に、乳首の先端から、白濁の液体が飛び散ったのだった。
「うわっ!」
自分の乳首から溢れ出たものに、遥佳は驚きの声を上げる。
白濁液は数センチほど飛び上がり、宙で折り返して、遥佳の巨大な乳房へと掛かっていく。
遅れて、甘い牛乳のような臭いが漂ってきた。
自分の乳首から吐き出された、白濁の液体、それがいわゆる母乳であると遥佳が気付くのに、結構な時間がかかってしまった。
しかし、その正体が分かっても、遥佳には、自分の乳首から母乳が出ていることが、まだ信じられなかった。
母乳なんてものは、赤ん坊を産んだ母親だけが出すものであり、それを自分が出していることが理解できない。
茫然と自らの乳首を見続ける遥佳の前で、その乳首からは、さっきほどの勢いは無いものの、たらたらと母乳が垂れだしているのが見て取れる。
射精とは違い、強烈な放出感のようなものは無かった。自然と、体に溜まったものが外へと出て行く感じなのだ。
逆に言えば、まだ出し足りない気持ちだった。巨大な乳房の中には、まだ母乳が沢山残っているようなのだ。
そんなもどかしさを感じていると、さっきまで遥佳の乳房に埋まっていた細いものとは違う、新たな触手が遥佳の乳首へと貼り付いた。
それと同時に、巨大な乳房へと、左右に一本ずつ触手が絡みついてきた。
絡みついてきた触手が、ぎゅぅ、と乳房を絞り上げる。
「うわぁ!」
すると、押されるようにして、まだ乳房の中に残っている母乳が、乳首を抜けて外へ出て行く。
「ああ、僕の母乳、吸われてる……」
溢れ出た母乳は、乳首へと吸い付いていた触手へと飲み込まれていく。
乳首に貼り付いている触手は、水を飲む時の人間の喉のような動きをした。
「ああ、飲まれてる……」
体から溢れる体液が触手に飲まれていくのは、何か大事なものが奪われていくような気がした。
しかし同時に、母乳によって張っていた乳房が軽くなり、開放感のようなものも感じられた。
それに合わせて、遥佳はこれまでに感じたことのない感情が浮かんできた。
母乳を吸ってくる触手のことが、愛(いと)おしいと思えてきたのだ。
遥佳は慌てて首を振って、そんな気持ちを振り切った。
溜まっていた母乳が出されたためか、乳房は少し小さくなったようだが、それでも巨大と言って良いほどの大きさを保ったままだった。
母乳を飲み終えた触手の先は、遥佳の下半身へと向かった。
巨大な乳房が邪魔して見ることが出来ないが、袴が脱がされ、、腰巻きがはだけられるのが感じられる。
そして、乳房に遮られて見えないままに、股間の割れ目へと、触手の先端が当たってくるのが感じられた。
乳房への刺激はあったものの、快感として感じなかったため、膣の部分は濡れていなかった。
だが、そんな中へも、触手は自らが吐き出す粘液をローションとして、ゆっくりと中へと入ってくる。
女の体になって、何度も体験させられた膣への挿入。
何度味わわされても、それは男の遥佳には理解できない感覚だった。
だが、それを実感させるようにと、触手はずぶずぶと遥佳の中へと入ってくる。
膣壁で感じる触手の形は、先の方が亀頭状に膨らんでいて、竿の部分には膨らんだイボイボが付いているものだった。
まるで、男の願望を体現したような形を感じつつ、遥佳は挿入されたものがピストン運動をし始めたのを感じた。
じゅぷり、じゅぷり、と股間の部分で音がする。
同時に、体の中が、ずしん、ずしん、と突き上げられる感じがする。
両手両脚は触手に絡まれて固定されたままなので、触手の突き上げが、そのままダイレクトに全身に響く。
「ああ、あは……」
乱暴な動きのため、遥佳はすぐには快感を感じることが出来なかった。
そのため、膣もあまり濡れずにいた。
妖魔の方もそれに気付いたのか、新たな責めが加わってきた。
「ひぃぃ!」
膣に触手を挿入されたまま、クリトリスへと、別の触手が貼り付いてきたのだった。
女性の小さな勃起部分へと貼り付いてきた触手は、それを隠すように包んでいる皮を剥き、過敏な粘膜へと吸い付いてきた。
「ああ、吸っちゃダメぇ……」
まるで、弱点を露わにされてしまったかのように、遥佳は呟く。
クリトリスの吸引による効果は絶大だった。
それだけで全身が火照り、体中が敏感になっていき、乳首が勃起し、膣が濡れ始めてきたのだった。
未だに慣れない女性の快感を感じつつ、どうして女性の体には、クリトリスなんてものがあるのだろうかと遥佳は思った。
男の時には、女性を愛撫する際に触るエッチな器官だと思っていたのだが、こうして女の体になってクリトリスを触られると、男のペニスとは違う、快感を感じるだけの器官が付いていることに、女体の不思議さを感じてしまうのだった。
「あは、ああん」
ペニスに比べればはるかに小さい器官が触られる度に、遥佳の女としての快感は高まっていく。
わずか一ヶ所が触られているだけなのに、それにつられて全身が火照って敏感になっていくのも、ペニスには無い現象だった。
女のエッチなスイッチを押されているうちに、だんだんと膣の方も快感を感じるようになってきていた。
膣襞がうねり、表面から愛液が溢れていくのが感じられる。
こちらも、男には無い器官の動きだった。
膣に挿入をされながら、クリトリスを吸われるという、人間の男相手には体験することの出来ない愛撫を受けつつ、遥佳は女の快感に翻弄されていく。
ずぶり、ずぶり、触手の挿入は、だんだんと激しくなってきていた。
膣の方が刺激を求めてくるのに合わせてか、触手の方も、太さは一回り大きくなり、雁首やイボイボの出っ張りも、よりはっきりとしたものになってきていた。
触手ならではの変化を感じつつも、遥佳の膣は、それを受け入れ、より大きな快感へと変化させていた。
それと同時に、遥佳に入り込んでいる触手の根本辺りから、新たな突起がむくむくと膨らんでいくのが感じられた。
挿入と合わせて、膣内入り口近くの部分がつんつんと圧迫される。
「な、何?」
触手が何をしようとしているのか分からずに、遥佳は戸惑った。
だが、触手の重点責めは続いている。
そうされているうちに、遥佳は新しい感覚が、膣の中で生まれていることに気付いた。
「これ、何?」
膣への一点責めは、遥佳の体へと、男の快感とはもちろん違うどころか、これまでに感じてきた女の快感とも違う感覚を産み出し始めていたのだった。
その部分が圧迫される度に、体中の力が抜けるような気持ちになる。
まるで、すとんと体が落ちていくような感覚なのだ。
「ああ、な、何?」
未知の快感に遥佳は戸惑い尋ねるが、触手は答えようとしない。
さらなる刺激とそれが生み出す快感によって、遥佳へとその意味を教えようとしているかのようだった。
「ああ、良いよ、こんなの……初めて……駄目、変になっちゃいそう」
クリトリスから起こる電気のような快感とも、膣から起こる揺さぶられるような快感とも違う、その部分が圧迫され快感に埋もれるような気持ち。
戸惑う遥佳の脳裏に、一つの単語が浮かぶ。
(もしかして、これがGスポット?)
AVで見た、膣内のここを責め立てられると、女性は声を上げてしまう部分。
名前と、女性にはそういう部分があるとは知っていたが、まさかそれを、身をもって知ることになるとは遥佳は思わなかった。
そして遥佳は、再びAVの場面を思いだした。
あそこを刺激された後の女性の姿を。
Gスポットがさらに圧迫されているうちに、遥佳はだんだんと新たな感覚が湧き起こるのが感じられた。
それは女になった遥佳には、懐かしい感覚とも言えた。
男の射精感のようなものが湧き起こり、そこから何かが噴き出そうとしているのが感じられる。
「ああ、ああぁっ、何か、出るっ!」
膣の中から、さらりとした液体が、勢い良く噴き出されるのが感じられる。
大半は膣内に入っている触手に当たっているようだが、一部は膣の外へと吐き出されているようだ。
触手が刺激を続ける膣からは、ぴちゃ、ぴちゃ、という水っぽい音が聞こえてくる。
「僕、潮吹きしちゃったんだ」
AV女優ぐらいしかしないだろうと思っていた経験を、遥佳はしてしまった。
快感もさることながら、そういう経験をしたこと自体に、遥佳は驚いていた。
新たな快感を経て、膣の中はさらに敏感になっていた。
「ああん、あはっ、凄いの、入ってくる……」
遥佳の胎内で、またしても変化が起こった。
子宮が、精液を求めるようにして、疼きつつ、だんだんと下へと降りてくるのだった。
男の体には無い、女の器官独特の動きに戸惑いつつも、遥佳はその子宮が、子宮口を通じて、挿入してくる触手に圧迫されるのを感じていた。
突き上げてくる触手と、降りてくる子宮に挟まれるようにして、その合間にある子宮口が圧迫される。
子宮と同様、子宮口も男には無い器官だ。
膣の行き止まり、ペニスがぶつかってくる場所、そして、精液の通り口。
そんなことを思っていると、そこからも、これまでとは違った快感が湧き起こる。
これまで、衝撃として感じていた快感が、だんだんと体になじんできて、満足感のように感じてくるのだった。
子宮口を通じて、体中にばらまかれ体中を掻き回していた快感が、体に合うように作り替えられていく、そんな感じなのだ。
「ああ、そこ、良い。もっと、奥に……」
自然と、遥佳の腰が動き、触手をもっと奥へと誘い込む。
それに合わせるように、触手の突き上げはさらに激しくなった。
「ああ、欲しい……欲しい……お願い、もっと強くして」
ずん、ずん、と触手の突き上げは、子宮口を突き破らんばかりになっていた。
それに合わせるようにして、快感もますます高まっていく。
まさに、射精という終わりの無い、女の体ならではの永遠上昇とも思えるものだった。
「ああん、あはっ、良いっ、良いよぉ……」
遥佳の頭は、膣の中で動く触手のことで一杯になる。
その触手が、遥佳の中で大きく膨れあがった。
(ああ、来る……)
かつて男としてペニスを持っていたことと、何度かの触手の接触で、それが何を意味するのか、遥佳は感じ取った。
すでに触手で一杯になっている膣の奥へと、熱いものが吐き出される。
「あふぅぅ、来る、来るっ、入って来るぅ……」
どぷり、どぷり、と触手の先端から、熱い塊が流しこまれて、子宮口を抜けて、子宮へと入り込んでくる。
「ああ、あはぁぁぁ……」
これまで求めていたものが満たされる感じに、遥佳は満足げに溜息を漏らす。
びゅるるくぅ、びゅくり、びゅくぅぅ
「え、何?」
すぐに終わるはずの放出が、いつまでも遥佳の中で続いているのに、遥佳は戸惑いの声を上げた。
もうすでに、子宮の中は触手が吐き出した精液で一杯だった。
子宮が精液で溢れんばかりになっている感じは、胃が満腹になっているのとは違って、圧迫感もさることながら、性的な満足感も感じられた。
だが触手は、そこへさらに精液を流しこんでくるのだった。
「だ、駄目。それ以上は、入らないよ」
そんな遥佳の言葉を無視して、触手は射精を続けていた。
普通の精液であれば、子宮が一杯になれば、行き場を失い逆流し、膣口へと溢れていくはずだ。
だが、そんな様子は無く、子宮へはさらに精液が溜まっていく。
「ど、どうして?」
遥佳の子宮は内側から圧迫されて、ついには段々と膨れていった。
巨大な乳房に阻まれて、直接見ることは出来ないが、腹部がわずかに前へとせり出していくのが感じられた。
最初はどろりとしていた触手が吐き出した精液は、子宮の中で固まるようにして、だんだんと形を持ったものへと変わっていくのだった。
遥佳の子宮への侵入はなおも続く。
それはもはや、射精という形を取っていなかった。
膣の中に入っている触手がその形を細くして、子宮口を通り抜けて子宮へと入り込み、その中で新たな形を作り上げているのだ。
遥佳の両手両脚を縛っていた触手が解かれ、股間へと向かう。ずるり、ずるり、と触手が這う音と共に、膣へと触手が入り込み、さらに子宮を膨れあがらせる。
胎内回帰――水引き丸に言われた言葉が思い浮かぶ。
この触手は、その身の全てを、遥佳の子宮へと入れようとしているのだ。
遥佳を縛っていた触手の半分以上はその姿を消していた。
そして、新たな居場所――遥佳の子宮へと入り込んでいたのだった。
手足が自由になった遥佳は、両手を付いて体を起こそうとした。
膨れあがった腹部に重さと圧迫感を感じる中で、どうにか上体を持ち上げる。
そして腹部を見ると、そこには小袖と腰巻きから付きあがるようにして、膨れあがった腹部があったのだった。
太っているのとは違う、下腹部を中心に、前へ前へとせり出している様は、まさに妊婦の腹だった。
その間にも、触手は自身の身を遥佳の中へと入り込ませていく。
遥佳の目の前で、自分の腹部が大きくなっていく様が見せつけられる。
その様子は、妊婦の中で赤ん坊が大きくなっていく様を、早送りで見せられているかのようだった。
「妊娠……まさか……妖魔が入っているだけだろ……」
満月のように膨れあがった自らの腹部を見つつ、遥佳は茫然とする。
妊娠、それは受け入れがたい事だった。
これは妖魔が子宮に入っているだけで、僕が妊娠した訳じゃない……遥佳は必死になって、自分に言い聞かせる。
このことは、巫女になってしまったこと以上に、衝撃的なことだった。
さらに遥佳を驚かせ、困惑させ、恐れおののかせることが起こった。
膨れあがった腹部が、内側から蹴られるような動きが伝わってきたのだった。
その感覚はまさに、話でしか聞いたことが無いが、赤ん坊を腹部にやどした妊婦が口にするっものだった。
遥佳を、子宮内の動きとは別の、さらなる恐怖が襲う。
「い、痛い……」
妖魔に入られて、すっかり膨れあがった子宮が、ずきん、ずきん、と痛むのだった。
「これってまさか。陣痛?」
男の体には無い器官で体験する痛みが、断続的に遥佳を襲い、戸惑わせる。
触手によって与えられていた快感は姿を消し、痛みだけが伝わってくる。
遥佳が認めたくない痛み――陣痛は、だんだんと激しくなってくる。
もはや、上体を持ち上げられてはいられずに、横になるのだが、それでも我慢できない。
体を横にすると、子宮口の部分が広がるのが感じられた。
痛みはさらに強くなり、同時に、子宮が中にあるものを押しだそうとしているのが感じられる。
息が出来ないぐらいになる中で、遥佳は痛みを我慢し、子宮の動きに身を任せるしかなかった。
「ああ、出てくる……」
子宮が煽動し、子宮口が開き、中で固まっていたものが、徐々に遥佳の胎内から出て行く。
出産。
それが、今の遥佳が体験していることなのだった。
「うわぁぁぁ」
体が引き裂かれるような痛みが感じられる。
同時に、何かが子宮口を一気に抜け出ていくのが感じられる。
子宮に、ぽかりと穴が空いたようになり、同時に、両脚の間で、何かが蠢いているのが感じられる。
遥佳は上体を起こした。
さっきまで膨らんでいた腹は、元に戻っている。
そして、股間の中では、この山頂に来た時に見たのと同じような、肌色をした塊が、うねうねと動いている。
「遥佳様、吸引です!」
遥佳の背後から、水引き丸が叫ぶ。
遥佳は袂からお札を取り出し、妖魔へと向けたのだが、言葉が出てこなかった。
なんとなく、これまでに感じたことのない感情が、妖魔に対して湧き起こる。
母乳を吸われた時に、ちらりと感じた感情だった。
しばらく妖魔を見つめていて、遥佳はそれが何であるかに気付いたような気がした。
おそらくは――母性本能。
認めたくないが、遥佳はこの妖魔に対して愛(いと)おしさのようなものを感じてしまっているのだった。
「遥佳様、早く」
水引き丸が再び声を掛けてくる。
遥佳は、しばらくためらった末に、自分は男なのだと自分に言い聞かせつつ、
「ごめん、吸引!」
目をつぶったまま、お札を妖魔へと向けた。
お札へと、妖魔が吸い込まれていくのが感じられる。
目を開けると、そこには妖魔の姿はなかった。
遥佳は立ち上がり、はだけた巫女装束を直そうとして、再び腹部を見た。
その形は元に戻っており、妖魔が中に入っていた気配は無い。
巫女装束を整えつつ、遥佳はさっき感じた気持ち――母性本能のことを思いだしていた。
これまで、女になって感じたことと言えば、痛みと快感ばかりであったが、ああいう感情を感じるのも、やはり女になったからだろうか。
男であるはずの自分がそんなことを感じてしまうことに、遥佳は戸惑いを覚える。
遥佳は改めて、肉体だけの違いに止まらない、男女の差というものを感じつつ、お札を手にして神社へと戻っていったのだった。

終章

神社へと戻った遥佳は、とりあえずは吸引し終えたお札を置いておこうと、本殿へと向かっていた。
確か、これまでに吸引し終えたお札を受け取った弥生は、本殿でご神体を祀ってある場所の前に置いていたはずだった。
真夜中なので、弥生たちはまだ寝ている。起こすのも悪いと思って、遥佳は足を忍ばせて歩いていく。
本殿に入って奥を見ると、これまでに吸引してきた4枚のお札が並べてあった。
その横へと、遥佳は手にしていたお札を置いた。
「これで良し」
後は男の子に戻るだけだ、と思いつつ、遥佳は5枚のお札を眺めた。
すると、風が吹いている訳でもないのに、それらのお札が、ぴくりと動いた。
虫が這うようにして、お札は並び方を変えていく。
(何だ?)
5枚のお札は、重なり合い、星形がひっくり返ったような形になった。
その途端、
「うわっっ!」
まばゆい光と物凄い爆風が起こり、遥佳は本殿の外へと跳ね飛ばされた。
外へ放り出されるのと同時に、本殿を突き破るような、めりめりと言う音が響いてくる。
バキッ、バキッ、と屋根が崩される音がしたかと思うと、乳白色をした何本もの巨大な触手が、本殿を突き破り、その姿を夜空へとさらしたのだった。
5メートルぐらいはあろうかという高さになった触手の群を茫然と見つめる遥佳。
その様子は、巨大なイソギンチャクが暴れているかのようだった。
「何があったのですか?」
音を聞きつけたのか、寝間着姿の弥生と美野里、皐月が姿を現した。
「さっき妖魔を吸引して、そのお札を並べたら、こんなことに」
辺りを探るように動き続ける巨大触手を前に、遥佳は弥生に説明した。
「そうですか。もしかすると、これこそが妖魔の狙いだったのかもしれません」
「どういうことです」
「短期間のうちに5匹が吸引されて、一ヶ所に集まる。それによって、さらに巨大な力を持とうということです。
こうなると分かっていたら、もっと早くそれぞれのお札を処分していたのですが、何しろこの地区の燃えないゴミの収集日は週に一度と決まっていますから……」
弥生の最後の台詞を、遥佳は突っ込むことなくスルーした。
そんなやりとりをしている遥佳らに気付いたのか、巨大触手がその手を伸ばしてきた。
「きゃぁ!」
太い触手が4人それぞれの腰へと巻き付き、彼女らを宙に浮かべる。
捕まえられてしまった4人へと、数十本の細い触手が絡みついてくる。
遥佳を除く弥生ら3人は、巫女装束で無く寝間着だったためか、着ていたものを破り裂かれ、全裸へとさせられてしまう。
触手はそれぞれの両手両脚に絡みつき動けないようしにしてから、もう一本、太い触手を、それぞれの前へと延ばしてきた。
正面に現れた触手は、うねうねと動き、まるで粘土細工のようにその姿を変えていった。
上から丸い部分がくびれ出て、左右から触手が伸びていく。
最初は単なる球だった上の部分は、だんだんと凸凹が出来ていき、何かの形を作ろうとしているのが見て取れる。
左右に伸びた触手の先端は、5本に分かれて、人間の指のような形を作っていった。
それで、球の部分が、人間の顔になろうとしているのがわかった。
目の部分がくぼみ、鼻の部分が出っ張り、口の部分が開かれる。
頭からは細い触手が生えてきて、髪の毛一本一本を作り出していく。
その顔つきには、どこか見覚えがあった。
(もしかして……僕?)
その大人しそうな顔つきは、紛れもなく、遥佳が男の時のものだった。
顔だけでなく、腕、胸と体が形作られていく。
足から下の下半身は巨大な触手のままで、付け根の部分には、巨大なペニスがそそり立っていた。
それは、遥佳が男だった時のものを、形状はそのままに、サイズを二回り以上大きくしたものだった。
周りを見ると、弥生ら三人の前にも同じように触手が伸びていて、男遥佳の姿へと変じていた。
目の前の触手遥佳が、にやりと笑った。
そのまま、体を近づけてきたかと思うと、巨大なペニスを、遥佳の割れ目へとあてがい、そのままず体を進めてくるのだった。
まだ何の愛撫もされておらず、遥佳の股間は濡れていなかったが、触手が吐き出す粘液を潤滑油として、ぶずぶと埋め込まれてくる。
「や、止めて」
抵抗したのは、まだ準備が出ていないせいもあるが、それ以上に男としての自分自身に犯されることに嫌悪感を感じたからでもあった。
実体は触手であるが、その凶暴とも言えるペニスを伴った男遥佳の姿を相手にするとなると、男としての己の欲望を、見せつけられているような気になってくるのだった。
だが、触手遥佳は無言のままに、ペニスを埋め込んでくる。
「かはぁ……」
巨大なペニスが根本まで埋め込まれ、遥佳の子宮口までを一杯にする。
その時、遥佳の脳裏に、懐かしいような感覚が浮かんできた。
股間からは、ペニスを入れられ、膣内をふさがれている感覚が確かに伝わってきているのだが、同時にペニスがうねうねとした膣によって挟まれている感覚も伝わってくるのだった。
(何、これ?)
不思議に思っている遥佳をよそに、触手遥佳は腰のピストン運動を始めた。
遥佳の体から、ペニスが引き抜かれ、膣内を雁首が擦っていく。
それと同時に、雁首が膣襞によって擦られる感じも伝わってくるのだった。
(ひょっとして、触手が感じていることが、僕に伝わってきている?)
股間へと意識を集中してみると、触手が前後する動きに合わせて、男としてペニスが刺激される感触が伝わってくる。
(や、やっぱり……これって男の感覚だ)
久し振りに味わう男の快感に、体は女である遥佳は戸惑う。
だが、触手が腰を振る度に、その感覚は遥佳へと伝わってくる。
それも、どうやら一つではないようだった。
ペニスの感覚が、いくつにも重なって感じられるのだった。
挿入するものもあれば、子宮口へ亀頭を押し当てるものもあり、雁首で膣襞を擦り下ろすものもある。
(もしかして……)
そう思って遥佳は、触手に絡められている弥生らの姿を見た。
遥佳と同じように、男遥佳の姿をした触手に、ペニスを挿入され、ピストン運動をされている。
遥佳に伝わってくる複数のペニスの感覚は、弥生らの中に入っているそれなのだった。
(凄い、こんなのって、ありえない……)
同時に、4人の女性へと挿入する。しかもそのうちの一人は、自分自身なのだ。
人間であれば味わうことの出来ない快感の四重奏に、遥佳の心は流される。
これをもっと味わいたい、と思っていると、遥佳の胸元へと、触手遥佳の腕が伸びてきて、両の乳房を鷲づかみにした。
胸元へと、ねっとりとした手が貼り付いてくるのが感じられる。
それと同時に、遥佳の手のひらには、4つずつの乳房が当たるのが感じられる。
弥生、美野里、皐月、そして自分自身のものだ。
大きく柔らかい乳房、張りがある乳房、形の良い乳房、そして自分自身の乳房。
まるで、おっぱいに包み込まれているかのようだった。
(ああ、気持ち良い……)
決して味わうことの出来ない乳房の感触を楽しみながら、遥佳はもっともっとと思う。
そんな遥佳の前で、触手遥佳の背後から、無数の触手が伸びてきた。
大小様々な触手は、遥佳の全身へと絡みつき、女体にある無数の性感帯を愛撫していく。
そんな触手の動きに合わせて、遥佳の脳裏には、その触手一本一本がペニスの感覚を持っているような感じが湧き起こる。
(ああ、気持ち良い……こんなの、初めて……)
久し振りに味わう男の快感――普通の快感を無数に重ねたような快感――に、遥佳は溺れそうになっていく。
「男の快感に負けてはいけません」
ふわりとした意識の中に、弥生の声が響いた。
弥生は、口に埋め込まれていた触手をかろうじて引きはがし、遥佳へと叫んできた。
「この妖魔は、遥佳さんが男としての欲望が大きくなるほどその力を増します。もっと、今の体に素直になるのです。巫女としての、女としての体になりきって下さい。そうして、巫女が持つ真の力を開放するのです」
言われて遥佳は、はっ、となる。
そして、男としての快感から、なるべく逸らすようにして、女としての感覚に集中する。
乳房が手のひらと触手によって責められている。乳房の表面が手のひらでこね回されると同時に、乳首へと触手の先端が吸い付いてくる。
クリトリスへと、細い触手が貼り付き、ちゅうちゅうと吸い立ててくる。
膣内へと巨大なペニスが入り込み、子宮口までを貫いてくる。
これまでに何度も味わってきた、女ならではの感覚だった。
遥佳は、そこへと意識を集中する。
(ああ、やっぱり女の快感……気持ち良い……)
男と違って、体の何ヶ所で同時に感じる、別々の快感。
さざなみのような優しいものから、雷のように激しいものまで、様々な快感が、遥佳の中で渦巻く。
「ああん、良いよ、女の体、気持ち良いよぉ」
遥佳は女として、喘ぎ、悶える。
そのうちに、遥佳の体は快感で溢れんばかりになってきていた。
体をくねらすこと、呼吸をすること、そしてそんな自分自身を思い浮かべることすらも、快感に感じてきた。
人間が感じうる五感の他に、快感という、新しい感覚が芽生えたようにすら思えた。
同時に、様々な種類だった快感が、体の中で一つの大きなうねりになる。
複数の波が重なり合い、より大きな波になるように、快感の相乗効果とでも言ったものが生まれていく。
膣が感じる。
子宮が感じる。
乳房と乳首が感じる。
それだけではない。
爪先や髪の毛先までもが、性感帯になったかのように、遥佳を揺さぶっていく。
女の快感はどこまでも高まっていくのは知っていたが、この上昇具合はこれまでに感じたことのない程だった。
まるで、男が射精する瞬間、一気に快感が高まるのと同じペースでの上昇が、ずっと続いていくのだ。
「ああっ、駄目。こんなのって……ヘンになっちゃうよっ、僕、もう……何、これ?」
遥佳は、体がふわりと水の中に浮かんでいるような気がした。
意識が体という枠を突き破り、快感の海へと放り出される。
快感という感覚だけになった遥佳は、無限の時間と空間とも思えるほどの中を舞っていた。
「ああっ、来る、来るよっ、何か、来ちゃう……」
全身が、裏返るような爆発が湧き起こった。
もはや、遥佳に体など関係なかった。
無限とも言える女の快感こそが、遥佳の実体となっていた。
女の、快感。
そう思った瞬間、無限の彼方から、何かが入り込んでくるような気がした。
触手が与えてくるのとは全く違う、無限の快感を全て受け入れるような、無限の意識。
光が、見えた。
海の深くに潜ってから浮かび上がる時に水面越しに見る太陽のように。
遥佳の意識が、ゆっくりと快感の海から浮かび上がる。
そして、快感の水面から顔を上げた瞬間、
「イク、イク、イクぅぅぅぅーーーー!」
海から上がり、深呼吸をした時に、酸素が体中に行き渡るかのように、快感が体を満たしていく。
全身が心地良い。
もはや、触手の刺激など関係ない。
ただ、女でいること自体で満足なのだ。
(これが、女の人の絶頂……)
同時に、遥佳の意識は、海面の上に浮かぶ太陽のまぶしさにかき消されるようにして、ゆっくりと真っ白くなっていった。

遥佳が目を覚まして最初に目に入ってきたのは、見守るように覗き込んでくる、弥生、美野里、皐月の顔だった。
どうやら、仰向けに寝させられているようだ、と遥佳は気付く。
「起きたようですね」
「戻ってきたのね。良かった」
「あたし、心配だったよ」
三人が口々に言ってくる。
そんな彼女らに答えようと、遥佳は上体を起こした。
そして気付いた。
全身を包んでいるのが巫女装束ではなく元々着てきた男物の服であり、そしてその下には乳房などは無く、感じ慣れた男の体があることに。
「僕、戻ってる?」
口から出てくる声も、甲高い女のものではなく、聞き慣れた遥佳自身の声だった。
「はい、あの後で遥佳さんの体は元に戻りましたので、わたしが着替えさせておきました」
正座をして、背筋を伸ばしたままに、弥生が言ってくる。
「あの後って……あの妖魔はどうなったんですか?」
「遥佳さんが、女としての絶頂に達した瞬間に、人と神の間がつながり、神の力により、全てが浄化されました。
人と神の二つの次元に、縁(えにし)が渡される、これを業界用語では、二次元縁渡(エンド)と言います」
相変わらず弥生の台詞後半はスルーして、遥佳は言葉を続ける。
「それじゃあ、僕は役目を完全に果たしたんですね」
「はい、全ては遥佳様のおかげです。どうもありがとうございました」
言って弥生だけでなく、美野里と皐月も頭を下げる。
「そんな……僕はただ……」
「謙遜する必要はありません。遥佳様には感謝しております。
ですから、これは約束のお礼でございます」
弥生は、袂からお守りを取りだして、遥佳の前へと差し出す。
「これって、どんな大学にでも合格できるって言う」
「はい、これさえあれば、どんな女子大にも合格できると言う、霊験あらたかなお守りです」
「女子大って、それじゃあ、僕、駄目じゃん」
「あの際に、『私も、娘たちも』と言いました通りです。まあ、叙述トリックですね」
相変わらず正座をしながら、弥生は言ってくる。
巫女になる前に期待していたことは叶えられなかった訳だが、遥佳はさほど残念だとは思わなかった。
巫女として女の快感を味わったこともさることながら、弥生や美野里、皐月らの役に立てたことだけでも満足だった。
「まあ、これは今回の記念にもらっておきます」
遥佳は、まだ弥生の温もりが残るお守りを手にして、ポケットに入れた。
「ねえねえ、遥佳ちゃん……あ、今は遥佳君、か。わたしとの約束、覚えてる?」
美野里が身を乗り出して、遥佳の顔を覗き込んでくる。
「約束って……あ」
思いだし、遥佳は、ぽっ、となった。
男に戻ったら、セックスしようと約束していたのだった。
「あ、あれは……本当に良いんですか?」
「良いわよ。遥佳君って、女の子の時も可愛かったけれど、やっぱり男の子の時の方が可愛いよね。わたし、もっとその気になっちゃった」
「あの……今はこれまでのことで頭がいっぱいなんで、その、いずれまた近いうちに、ということで」
さすがに、弥生や皐月を前にして、今すぐにとも言えなかった。
「まあ、美野里ったら、そんな約束をしていたの。それじゃあ、その時にはわたしもご一緒しようかしら。若い男の子とねっとりってのも良いけれど、娘と一緒に親子丼ってのも楽しそうね」
「お母さんは、もう遥佳君とはセックスしたんでしょ。今度はわたしの番だよ」
「あ、あたしも、遥佳君とは二人っきりでが良いな」
両手を口に当てながら、皐月が呟いてくる。
「まあまあ。せっかくだから、私と娘二人の三人揃ってというのはどうかしら?」
「いえ、あの……」
まさに両手で花ではあるが、このままだと、誰を最初に選ぶかと問いつめられそうなので、遥佳は立ちあがって、三人の中から抜け出た。
「それじゃあ、また来ますので。必ず来ますから、今日は失礼します」
遥佳は、逃げるようにして神社を後にしたのだった。

遥佳は、家にはまっすぐ帰らずに、巫女になってからのことを頭の中で整理しようと、電車に乗って、都会へと出た。
そのまま秋葉原へ行き、一店のメイド喫茶へと入った。
「お帰りなさいませー、ご主人様」
まだ午前中の早い時間のため、客の数は少ない。
迎えてくれた、青い長髪に、細い目、ふにぃと言った感じのした口元をしたメイド服姿の女の子が、そのまま席へと案内してくれた。
遥佳は、アイスコーヒーを注文した。
椅子に腰を下ろすと、テーブルの端の方に、よく喫茶店にあるような、小型のおみくじ自動販売機が目に付いた。
(そういえば、今回の件って、おみくじから始まったんだよな)
そう思いつつ、遥佳はその時を思い出すようにして、百円玉を入れて、おみくじ機をがちゃりと回した。
透明なプラスチックケースに入ったおみくじの紙が、ぽろりと落ちてくる。
遥佳はケースを開けて、おみくじを開いた。
そこには、
「ドジっ娘メイド」
と書かれていた。
おみくじを手にしつつ、まさか、と思っていると、注文したアイスコーヒーを持ってきた女の子が、遥佳の手にしていたおみくじに気付き、
「ドジっ娘メイド頭(がしら)様ー、出ました。例のおみくじ、出ましたー」
叫びながら、奥のカウンターへと向かっていったのだった。
「なんなんだ、これはー」
遥佳の声は、秋葉原中に響き渡ったのだった。





あとがき
今回の作品、元々は2ちゃんねるに書き込みのあった、TSと触手は、男が直接出てこないから相性が良いかも、という話をきっかけとして書いたものです。触手ものは前から書きたいと思っていたので、触手に犯されるんだったらどんなキャラが良いかな、と思って、色々と考えた末に巫女を選びました。詳しいことは、2008年6月の日誌で触れています。
今回苦労したのは、終章を見てもらえば分かる通り、遥佳が絶頂に達するのはラストまで取っておく必要があったので、それまでのエッチシーンの終わらせ方に苦労しました。エッチシーンは女の絶頂じゃなきゃ嫌だ、という人にはご免なさい。それと、エッチシーンでただ気持ち良いだけではなく、痛がったりも結構していますので、こちらも苦手な方がいたらご免なさい。
あと、双子の巫女姉妹のキャラについては、某アニメを元にしています。顔立ちとか性格とかをイメージして書いていったら、結構筆が進みました。初心者が小説を書く時には、アニメやマンガからキャラを借りて書いた方が良いかもしれませんが、あまり借りすぎると単なる二次創作になる訳で。もっとも、それはそれで需要があったりするのですが。
他には……今回はギャグも入れられたので、そっちの方向では結構満足しています。元々は「スレイヤーズすぺしゃる」みたいに、何か問題があって、それを解決する、としてみたかったのですが、そこまでには至りませんでした。
では、今回はこの辺で。

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