『闇に潜む者』〜第五章 "支配"

作:月華


「さて、久しぶりに楽しませてもらおうか。男の快感を」
ペニスを隆起させたままに、健司に潜む者は、ベッドに横たわったままの有紀の裸身を眺めた。
健司の頭の中は、有紀を抱くこと、有紀に精液をそそぎ込むことで一杯だった。だが、それは単なる性欲を満たすためのものではなく、健司に潜む者にとっては、一つの儀式でもあった。
女の体に精液をそそぎ込むことで、誘導の能力よりも、はるかに協力にその女性を支配することが出来るのだ。誘導の能力がごく簡単な命令を、目の前にして実行させるしか出来ないのに対して、今回のものは、心そのものを支配し下僕とし忠誠を誓わせ、どんなことでも命令出来る。それが例え、死という命令であっても。ましてや、健司に潜む者のために精を集めさせることなど、たやすいことだった。
「では、お前の体に、俺の精を注ぎ込んでやろう」
そう宣言してから、健司はベッドへ上がり、いきなり有紀の乳房を掴んだ。
「んん……」
荒々しい掴み具合に、有紀は顔をゆがめて苦痛を訴える。だが、健司の手は止まることはない。むしろ、ますます激しさを増していく。
両手を思い切り広げて、かき集めるように乳房を真ん中へ寄せ集めてから、集まった柔肉をぎゅっとこね回す。人差し指と親指の間から乳首が見えるようにしながら、絶えずその形を変えていく。上下、左右へと、力強い指先の動きを受け入れつつ受け流しつつ、有紀の乳房は面白いように形を変えていった。
「んは……あ……」
痛がっていた有紀の口元から、甘い溜息が漏れ始めた。今は健司に潜んでいる者をほぼ一週間受け入れていた有紀の体は、健司のどんな激しい行為も、巧みな愛撫として受け入れるのだった。
乳房の動き具合を表すようにその向きを変えていた乳首が、健司の指先に摘まれた。男のものよりも一回り大きく、ただでさえ摘みやすい女の乳首は、健司の愛撫に突き動かされ、すでに固くなっていた。
「いやらしい乳首だ。もう固くなって、俺を待っていやがる」
「あ……そこ……」
「本当に、いやらしい女だ」
言うなり健司は乳首をぎゅっと摘み上げた。
「あひぃっ!」
鋭い彼女の悲鳴は、健司の嗜虐心をますます高ぶらせていく。乳首を摘んだままに、両手全体を器用に動かして、乳房も弄び続ける。
「ああ……胸……全部気持ちいい……」
「気持ちいいか。なら、もっと気持ちよくしてやろう」
健司の左手が、乳首から離れ、間髪入れずに健司の口が空いた乳房へと覆い被さった。
口全体を乳房に当ててから、健司は乳首と乳輪を口中へと吸い込む。そして、乳輪を歯でいじりながら、乳首が埋め込まれるぐらいに、舌で強く押した。
「あひゃっ、ら、らめ……」
呂律が回らないままに、激しい健司の乳首攻めを味わう有紀。力無く口を開けながら、その表情は嫌がるどころか更に求めてくる有紀の顔を上目遣いに眺めつつ、健司は空いた左手を有紀の股間へと伸ばす。
快楽の前触れをするかのように少女の陰毛を撫で上げると、それが合図だったかのように、彼女の両足が素早く左右へと開かれた。
健司が指を当てたそこは、すでにぐっしょりと濡れていた。まだ入れるどころか触ってもいないのに、すでに受け入れる準備をしているのだ。有紀の体をどう触ればもっとも感じるか知っている健司だったが、そんな知識は必要無かった。ただ健司の気の向くままに触りまくることが、有紀を最も興奮させることへと繋がるのは間違いない。
「う、あはぁぁ……」
ずぶり、と健司の指が有紀の中へと吸い込まれていく度に、有紀は安堵と歓喜が入り交じった声を上げる。人差し指と中指の二本は、有紀の体から溢れる粘液を頼りに、抵抗無く中へ入っていく。
「ほうら。根本まで入ったぜ」
奥まで入った健司の指に、有紀に肉壁が絡まり付いてくる。指を曲げ、向きを変えると、肉璧はそれに合わせて柔らかく形を変化しつつ、それでも指全体を包み込んでくるのだ。
「すごいぜ……お前のマ○コ、俺の指に吸い付いてくるぜ」
「そんな……」
恥ずかしげに頬を染める有紀の唇を、健司の唇が塞いだ。右手で有紀の首を抱きしめ上体を起こしながら、健司は激しく有紀の舌を吸う。
「ん……ん……」
二人の口が重なり合う一方で、有紀の股間には健司の指が一方的に入り続けている。人差し指と中指の攻撃に続けて、健司の親指がクリトリスへと触れられた。
強烈な刺激を与えられた有紀の体は、一斉に反応した。健司と絡まり合っていた舌は激しく震え健司の舌を求め、健司の指に絡み付いていた肉壁は、さらに強烈に健司の指を締め付ける。
ぴちゅ、ぴちゅ、と有紀の二つの口が音を立てる。健司がどんなに激しく舌と指を動かしても、有紀の柔らかい肉は、その全てを受け入れ、自らの快感へと変えていくのだった。
そんな彼女を、出来の良い玩具を見るかのように、健司は見つめていた。
(女というものは……実に楽しい生き物だ)
腕の中で女の体を楽しみながら、健司に潜む者はどこか醒めた目で、腕の中の女を眺めている。
久しぶりに男の体に入って味わう女の体を、健司は全身で感じ続けている。
有紀の後ろ首に当てていた腕を離し、指先を後頭部へと持っていき、髪の毛を触ってみると、さらさらとした、柔らかさが伝わってくる。
有紀の唇に重ねていた唇を離して、有紀の耳元へと持っていき、小さく作られた耳を唇でしゃぶると、空いた口元からは股間を攻めた時とは違う、微かな甘い声が漏れる。
耳たぶから首筋、うなじへと舌を這わせて少女のきめ細かい肌を味わうと、触れられたことを伝えるように、甘い声をもらし続ける。
そして乳房――まるで、男を楽しませるためだけに存在するように思えた。授乳のためなら、こんなに大きく柔らかい必要は無い。
「まったく……女の体は良くできていやがる」
全ては、男を受け入れ、男を楽しませるために存在するのだ。柔らかい乳房に触れた男は、その手を離そうとはしない。小さな乳首を摘んだ者は、その指を離そうとしない。
「いやらしい、体だ」
だが、女の一番いやらしい部分は、さらに下にあった。
「さて、お前の中で、一番いやらしい場所を楽しませてもらうぜ」
言うなり、健司は有紀を支えていた右手を離し、有紀をベッドへと倒した。同時に指先を抜かれた有紀の股間からは、栓が抜けたかのように、透明な粘液が吹き出し、ベッドを透明に輝かせていく。
全身から健司が離れ、物足りない表情で見上げてくる有紀に、健司は覆い被さるようにして上にのし掛かる。
そして、隆起した自らのペニスを右手で支えながら、ゆっくりと腰を下ろし、ひくひくと動いている有紀の入り口へと近づけていく。
「あはぁ……」
ペニスの先端が触れただけで、有紀は満足げな声を上げる。だが、健司は満足することなく、突き立てたものをずぶずぶと埋め込んでいく。亀頭が入り込み、雁首が入り口に吸い込まれ、そして陰茎が包み込まれていく。
「あぁ……入ってくる……あぁ……」
健司のものが入り続ける間、有紀は空気が漏れていくかのように切なげな溜息をもらしていた。瞳はうっすらと開かれ、中には焦点の定まらない瞳が見える。口は呼吸をするためよりも、溜息をもらすために、小さく開かれている。
健司のものが埋め込み終わらないうちに、その先端に当たるものがあった。
「あひっ」
健司の先端に子宮口を突き上げられ、これまでの溜息とは違った叫び声が、有紀の口からあふれ出る。
有紀の肉壁は、健司のものを一杯にくわえ込んでいた。そして、子宮口から肉璧、陰唇の全てが蠢(うごめ)いて、健司のものを刺激していく。
「有紀の中、気持ちいいぜ。う……吸い付いてくる……」
「健司の……熱くって……大きくて……固い……
ああ、気持ちいい……」
絡み付いてくる有紀の肉壁を、健司は敏感に感じ取っていた。そして、もっともっと感じようとした。
健司は、突き立てた腰を、ゆっくりと引き戻す。すると、健司に絡み付いていた肉壁が、外へ出すのを惜しむようにまとわりついてくるのが感じられる。
有紀の中では、肉壁が雁首を撫で、有紀の入り口では肉襞が盛り上がり、健司の隆起をよりいやらしく見せている。
左右へ分かれる肉襞がさらに分かれ、健司の雁首が姿を現し始めた。最も広げられ、最も不安定になったところで、健司は腰を止める。
「や、やだ……抜かないで……」
必死に求めてくる有紀を満足げに見つめつつ、健司はさっき以上に激しく腰を突き立てた。
「あはっ!」
ずんっ、とした刺激が有紀の喘ぎ声を呼ぶ。健司は一瞬にして、雁首へ肉壁がまとわりつき、亀頭の先端が子宮へ当たるのを感じた。女の体の仕組みを、一瞬にして感じたのだった。
健司の腰の動きは止まらない。激しく突き立てては有紀の反応を楽しみ、ゆっくり挿入しては有紀の柔らかさを味わう。
ピストン運動をするだけでなく、腰を揺さぶり有紀の中を掻き回せば、有紀はまた違った反応をし、絶えず健司を楽しませてくる。
もはや有紀は、健司のペニスに反応する操り人形だった。快楽という糸を通して、有紀の体は快楽にのたうち回る。
「あ、あっ、あっ……」
(そろそろイクな……)
有紀が絶頂に近づいていることは、その表情だけでなく、健司のペニスを通じても分かった。健司を包む肉壁が、意志を持ったように絶えず体の奥へ奥へと健司のペニスを導こうとするのだった。
「ほうらっ。イカせてやるっ!」
有紀の体を押さえつつ、健司は力一杯に腰をぶつけた。
途端、有紀の中で白い光が走る。
「あふっ!」
有紀の全身が、大きく震える。健司のものを導こうとする動きが、さらに強まる。
有紀の、エクスタシーだった。
だが、健司は有紀の快楽すら支配しているのだった。
「まだ、終わらせてやらないぜ」
絶頂に痺れる有紀へ、さらに健司は腰を突き立てる。
「あ、や、また……いっちゃう……」
一突き、一突きする度に、有紀の体には新しい絶頂が沸き起こる。これで終わりだと思っても、次の瞬間には、さらに大きな快感が体中に沸き起こる。
何度もイキ続ける有紀の様子を、健司は視界とペニスの感覚で感じていた。
有紀の膣内は、健司のものを撫で上げ、健司が放出するものを待ちかまえている。
「いくぞっ、俺のものを受け入れろ。俺をっ、受け入れろっ!」
叫びながら、健司のペニスからは、猛った精液が一気に放出された。
ペニスの先端から溢れだした精液は、亀頭に入り口を広げられた有紀の子宮口を突き抜け、子宮の中へとぶちまけられる。
放った精液が、一滴残らずに、子宮へと注ぎ込まれるのを感じながら、健司に潜む者は男としてこの上ない満足感を感じていた。
それは、相手に妊娠させようとしている男の欲望が満たされている行為、と言えた。性欲の一番根本にある、相手を妊娠させようとする行為こそが、健司に潜む者を最も満足させる行為であり、同時に女を支配するための儀式でもあった。
精液を注ぎ込まれながらも、有紀の肉壁はなおも動き、ペニスに残っている精液すら胎内へ取り込もうとしている。
健司に組み敷かれている有紀の体は、びくん、びくん、と小刻みに震えている。その動きは、脈打つ胎内の動きを全身で表しているかのようだった。
健司は、さっきまでの激しい腰の動きとは対照的に、精液を放った瞬間から腰を突き立てたままに微動だにしなかった。両腕で有紀の足の付け根を押さえ離そうとしない。
有紀の膣を掻き回していた健司の亀頭は、今では子宮口に当てつけられ、流し込んだ精液を外へ一滴も漏らさないための栓へと役割を変えている。
その間、健司の射精は終わっていなかった。吐き出し残っていた精液が、健司の身震いと共に一塊りずつ溢れだし、健司の精液に満ちた有紀の子宮へと、さらに流し込まれていく。
断続的な有紀の体の震えがだんだんと収まり、そして止まった。
頃合いを見計らって、健司が腰を退くと、有紀の股間からは有紀の粘膜が塗り込まれたペニスが姿を現した。すっかり有紀に出し尽くしたはずなのに、そのペニスは入れる前と同様に、隆起したままだった。
ペニスを抜かれた有紀の股間からは、透明な有紀の粘液だけが流れ出ている。精液の濁った色は無い。全ては有紀の胎内に注ぎ込まれ、有紀を支配する媒介として、胎内に留まっているのだ。
そんな様子を満足げに見ながら、健司は腰を上げて膝立ちになった。
「有紀……起きろ」
健司に言われると同時に、有紀はうっすらと目を開いたままに、のろのろと立ち上がってから、健司の前に跪(ひざまづ)いた。
「俺が誰だか分かるか?」
「あなたは……健司様です。わたくしの、主(あるじ)です」
「そしてお前は、何だ?」
「わたくしは、健司様の下僕です」
有紀の態度に、健司は満足げに笑った。
「そうだ。そしてお前の役目は何だ?」
「わたくしの役目は、健司様のために、男共の精を集めることです」
「良く分かっているな」
「ありがとうございます」
「それでは、さっそく始めることにするか。今日は、俺も一緒に手伝ってやろう」
「かしこまりました」
全裸で片膝を突いたままの健司に向かって、有紀は恭(うやうや)しく頭を下げた。


「ん……あはぁ……」
「いい……気持ちいい……」
「そ、そこ……もっと……」
「はぁ、はぁ……」
さっきまで健司と有紀がいたラブホテルの一室には、今では三人の女性の喘ぎ声と、三人の男の溜息が響いていた。
隆起した健司のペニスを、二人の若い女性がうっとりとした表情で舐め上げている。その健司の目の前では、有紀が口と股間で、二人の男へと奉仕をし、その精を集めようとしている。
健司と有紀以外の四人は、二組のカップルだった。ホテルを出た健司と有紀が、それぞれ一組ずつカップルを誘い出して、女二人は健司に奉仕させ、男二人は有紀に精を吐き出させている。その男女四人が全裸で繰り広げる痴態を見ると、とても元々はカップルだったとは思えないぐらいだった。
すぐ近くにいる恋人に目も呉れずに健司に奉仕する女二人と、男二人から精を集める有紀の姿を見て、健司は口の端をゆがめて、笑みを浮かべた。
健司に潜む者の能力は、まだまだ未開発だった。有紀の支配は永遠に続く訳ではなく、今は健司に潜む者が有紀の体にいた期間――六日間しか有効ではなく、その効き目を続けるためには、また精を注いでやる必要があった。
だが、その能力はいずれ高まるはずだ。目の前で精を集めている有紀が、その手助けとなるはずだ。
「まあ、今日はこの体と、こいつらで楽しむとするか」
健司のペニスへ奉仕する二人の女の瞳を見つめて、健司はさらなる奉仕を命じたのだった。

第五章<完>

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この作品は、
「月華の本棚」http://www.geocities.co.jp/Bookend-Ohgai/8113/main.html
に掲載されたものです。