『闇に潜む者』〜第九章 "奪身"

作:月華


「翔太君……ここ、気持ちいいでしょ?」
「あ、はい……とっても、気持ちいいです」
保健医の麻衣が動かす指先に、翔太は小さな溜息を漏らしながら答える。
麻衣の指先が動いているのは、勃起した翔太のペニスの先端だった。保健室のベッドに全裸で横たわる翔太の中性的な肉体の中で、一番男らしい部分を、麻衣は弄んでいるのだ。
皮が剥けかけたペニスだったが、大人の女性から指先でいじられ、これ以上ないほどに勃起したそれは、皮が戻ることなく、麻衣の目の前にさらけ出され続けている。
体と同様に性に対しても少年のような翔太には、どうして自分がこんな状況にいるのか、分からなかった。保健医の麻衣に誘われるままに二人きりの保健室へ入り、そして全裸を曝し、自分以外は触ったことのないペニスを触られている……もはや、これまでの経緯などどうでも良いことだった。今の翔太に取っては、女性に敏感なものを触り続けられることだけが、全てだった。
「うふふ、かわいいわね」
いたいけな翔太そのものを弄ぶように、麻衣は指先を伸ばし、翔太の勃起を指で弾いてはその反応を楽しむ。弾かれる度に左右に震えてから元へ戻るペニスと、弾かれる度に女の子のような声を上げる翔太を。
一方の翔太には、楽しむ余裕などは無い。ただひたすら、これまでに感じたことのない状況と快感に堪(こら)えているのだ。
「あら、もう濡れてきたわ」
麻衣はペニスの先端から吹き出した透明な液を、指先でなぞり上げ、翔太に見せつける。
「す、すみません」
「謝らなくても良いのよ。あなたには、もっともっと出してもらわないと。あなたの精、全てを出してもらわないと」
「あ、先生っ」
麻衣の行動に、翔太は声を上げて制しようとした。だが、敏感な股間から伝わってくる快感と、女性が自分のものを口にくわえている光景を拒否するような度胸は、翔太には無かった。声で弱々しく呟くことで、心の中にある後ろめたさを誤魔化すのが精一杯だった。
「ああ……あっ……」
自分の手による刺激しか知らない翔太のペニスにとって、いきなりの女性の口は格段に強烈なものだった。唇が陰茎の部分を押さえる、亀頭全体がペニスに嘗め回される、亀頭の先端が口の裏と喉にぶつかっていく……
「先生、止めて下さいっ……もう、出ちゃいます」
口では止めてくれと言いながら、手を使って先生の頭を退かそうとはしない。先生が辞めてくれなかったから、という免罪符をもらうために拒否の言葉を口にしつつ、心ではもっともっとと叫んでいる。
麻衣に潜む者は、そんな少年の様子を満足げに眺めていた。常に性欲を解放している者は体が満足するためだけの精しか放出しない。だが、性欲を閉じこめている者の心をこじ開けてしまえば、溜まっていた反動から、その中にある精全てを集めることが可能なのだ。麻衣に潜む者が、この少年に目を付けたのも、それが目的だった。
「駄目っ!」
少年の叫び声からわずかに間をおいて、翔太の精液が麻衣の口中へと放たれた。オナニー何かとは比べものにならない位に大量の精液が流れ出していく快感に、翔太は両肩を震わせた。だが、自らが出した精液を、翔太は見ることは出来ない。股間には麻衣が貼り付き、翔太のものを頬張り続けているのだ。
麻衣は喉を鳴らしながら、口中に放出されたものを飲み続けている。唇と頬をすぼめ、翔太のペニスに吸い付いたままに、翔太の精を味わっていく。
翔太から放たれ、麻衣の中へと送り込まれるものは、麻衣に潜む者の予想通り、若い精に満ちあふれていた。麻衣に潜む者は、この少年から精を全て搾り尽くせば、新たな能力が身に付くことを確信した。
麻衣は、まだ大きなままのペニスから口を離した。
「翔太君……気持ちよかったでしょ。
でも、こんなものじゃないわよ」
麻衣は翔太を見つめながら、ゆっくりと耳元に近づいた。そして、
「あたしのオマ○コは、もっと気持ちいいのよ」
大人の女性に耳元で卑猥な言葉を囁かれて、少年の心は大きく跳ねる。
「今すぐあげるから、待ってなさい」
言うなり麻衣は、ベッドから降りて素早く服を脱いだ。じらせなくてもすでに興奮している少年にとっては、脱衣の時間はもどかしいだけだ。すでにこのために、必要最小限のものしか身につけていない麻衣は、あっと言うまに全裸になった。
「あなたに、気持ちいいことしてあげるわね」
仰向けになる翔太の上に、麻衣が両足を広げて乗り掛かる。
「ほうら。先生のオマ○コ、見えるかしら? もうビショビショよ」
麻衣は、股間に両手の指先を当てて、少年に見せつけた。その言葉通り、翔太のものを受け入れようと、そこはすっかり濡れていた。
「それじゃあ……あなたの精を、もらうわね」
言うなり麻衣は腰を下ろし、翔太のペニスを飲み込んでいった。翔太の目の前で、己のものが女保健医の胎内へと、ずぶずぶと埋め込まれていく。それだけで、二度目の射精をしてしまいそうな快感だった。
「ほうら。もう入っちゃった」
腰を下ろし、翔太のものを股間に加えながら、麻衣は呟いた。だが、言われた翔太は答えることは出来なかった。自分の指先では絶対に感じることのない、ペニス全体を包み込む感覚に、驚いているのだ。
それに、一言でも声を発したら、その衝撃で射精をしてしまうのではないか、とすら翔太は思っていた。
「どう。先生の中、気持ちいい?」
「は……はい」
なるべく大きな声にならないように、かろうじて翔太は答える。
「ふふふ。すぐにでもイッちゃいそうね。
それじゃあ、こうすれば気晴らしになるかしら」
「あっ」
翔太の両手が麻衣に掴まれ、そのまま麻衣の胸元へと導かれる。初めて触れる、女性の乳房。柔らかく、温かく、手のひらを受け入れる感覚は、翔太は一瞬だが、ペニスからの刺激を忘れたほどだった。
「せ、先生……」
「うふふ。触って良いのよ。遠慮することは無いわ」
おずおずと、翔太は手を動かして、麻衣の乳房を触った。騎乗位で下から乳房を持ち上げながら、翔太は乳房の心地よい重さを感じていた。
「ふふ、やっぱり男の子はオッパイが気になるみたいね。
でも安心しなさい。あなたもすぐに、オッパイが持てるようになるから」
不可思議な麻衣の言葉だが、気にする余裕は翔太にはない。
「それじゃあ……あなたの精、全てを搾り取らせてもらうわよ」
言うなり翔太のペニスに絡み付いていた麻衣の肉壁が、激しく動き始めた。
「あぁ……あうっ」
麻衣は腰は動かしていない。
だが、女の部分だけによる、締め付け、まとわりつき、吸い上げる感覚は、童貞の翔太を二回目の絶頂へと導くには、たやすいことだった。
「あぁっ! 出ちゃう、また出ちゃうっ!」
「出しなさいっ。出すよのっ。あなたのもの、全部出すのよっ」
麻衣は自らの腰を翔太の腰へ押し当て、自らの乳房へ翔太の手を押さえつけて自由を奪いながら、押しつけた股間の中を激しく動かして、翔太の精を絞り出す。
「あぁっ!」
二回目だというのに、翔太の体内から精液が激しく放出される。その勢いは、さっき以上だった。そしてその量は……さっきとは比べることが出来なかった。
なぜなら、翔太の射精は、終わることが無かったからだ。
「あっ……そんな、止まらないっ!」
体の中で起こった異常事態に、翔太は溜まらず声を上げる。だが、そんな翔太を見下ろしながら、麻衣は腰を押しつけたままに動こうとはしない。
「出るっ! 出ちゃうっ!」
体の中から、精液が溢れ出し続けていく。流れていく精液が、ペニスの根本を刺激して、一瞬しか味わえないはずの射精の快感を、翔太に与え続けていく。
だが、翔太が感じるのは、射精の快感に留まらなくなっていった。
「あっ……あぁっ!」
翔太は、ペニスの下にある陰嚢が、だんだんと小さくなっていくのを感じた。ぎゅっと外から圧迫されるように萎んでいき、その中にあるはずの精巣が、ペニスの根本に貼り付いたような感じになった。
それだけではない。陰嚢から精液が流れ切るのを見計らったようにして、今度は体中からペニスを通して、何かが流れ出ていくかのような感覚が沸き起こった。
腹から、腕から、足から、顔から、何かが流れていき、ペニスを通して流れ出ていく。流れ出ていった体の部分は力が抜けたような感じになり、麻衣の胸を触っていた両手も、ベッドに崩れ落ちる。空気の感触が、やけに敏感に感じられた。力が抜けるだけではなく、手足が縮む感覚すら、感じていた。
肌だけでなく、髪の毛からも何かが抜け出ていく。短く切った髪の毛がだんだんと柔らかくなっていく。
抜けていく力が、頬を撫でていくと、そこにある脂が抜けて、つるりとしたものになっていく。
頭から胸へ向かう流れの一部が、そこで渦を巻くのが感じられた。体の内側から、乳首を中心に何かがぶつけられる。それに耐えきれなくなった胸が、だんだんと外へと広がっていく。
(オッパイだ……)
呆然としたままで、翔太は自らの胸元が、ゆっくりと膨らんでいくのを見ていた。大きくなっていく乳房の上では、左右を向いた乳首が、乳房に会わせるように、わずかずつ大きくなっていく。
同時に翔太は、体中から流れ出ていく力が、だんだんと別のものに変わっていくのを感じていた。
(あ……気持ちいい)
全身を優しく撫でられる感触が、翔太を包んでいく。男の時には無かった感覚だった。快感と言うにはまだ遠いが、男に比べたらはるかに敏感になった肌で、翔太は全身への愛撫を感じていた。
(女の子になるって……気持ちいいことなんだなあ……)
膨らみ続ける胸を見ながら、翔太は体の変化を素直に受け止めていた。
全身への愛撫は、体の端から中心へと向かう。そして、それが集まる股間の辺りでは、強烈な刺激へと高まっていく。
(あ……中で……)
翔太の股間の奥底で、刺激が集まって形を作っていく。と同時に、麻衣へ流れ続けていた力の流れが止んだ。二人の間は、翔太のペニスで繋がるだけだった。
そして、そのペニス自身にも変化が起こった。
周りから力強く押しつけてくる麻衣の肉壁に負けるように、翔太のペニスがだんだんと小さくなっていく。
「あ……溶けちゃう……」
そう呟くしかなかった。自分の男のものが、麻衣に吸い込まれるように、だんだんと消えていくのだ。
だが、翔太が感じていたのは恐怖ではなく満足感だった。麻衣に全てを捧げることへの、喜びだった。
ぎゅっ、と最後の強烈な刺激が、翔太のペニスに沸き起こった。そしてそれきり、翔太はペニスそのものからの刺激を感じることは無くなった。
だが、翔太が感じる刺激は終わらない。
「あ……あ……」
麻衣に入り込んでいたものが無くなり、何もない同士で付き合わせていた翔太の股間に、何か熱い固まりが押しつけられるのだった。
何もない所に、麻衣の股間から生えてくるペニスが、ずぶずぶと押し入ってくる。力強く、穴を作り、肉を左右へ押しのけ、無いはずの出入り口を、翔太の肉体に作っていくのだ。
「あはっ!」
その先端が、さっき翔太の胎内に作られたものに触れた時、翔太は新しい感覚に、切なげな声を上げた。
(これが……女の子の絶頂)
そう思いながら、翔太は自分の意識が快感に押し流され、失われていくのを、満足げに感じたのだった。

眼下でぐったりとする女の子を眺めながら、麻衣は満足げな笑みを浮かべながら腰を退いた。そこからは、ついさっき翔太に女性の受け口を作ったものが、湯気を立てながら姿を現した。
「予想通りに、強烈なものだったな」
精を吸い尽くし、女の子になった翔太を見ながら、麻衣に潜むものは、己の体内に溜まった精の強さを感じていた。
「この力があれば……いくらでも女を支配できるな」
(……そのためには)
と思って麻衣に潜む者は、女の子の姿になった翔太を見た。
(まずは男の体に入り込む必要があるから、こいつの体を使って……)
考えるなり、麻衣は女の子の裸身をさらけ出す翔太に手をかざした。
翔太とは別の男から集めた平凡な精の一部を、翔太の体に流し込むと、乳房がなくなり、髪に固さが戻り、そして股間からはペニスが生え、翔太は男としての、元の体を取り戻したのだった。
一方、精を放出したためか、麻衣の股間からはペニスが消えていた。だが、麻衣に潜む者にとっては、その方が好都合だった。
「さて、お前の体を使って、新しい能力を試させてもらうとするか」
そう呟くなり、麻衣に潜む者は翔太の体に入り込もうと、翔太の体へとまたがっていったのだった。

第九章<完>

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この作品は、
「月華の本棚」http://www.geocities.co.jp/Bookend-Ohgai/8113/main.html
に掲載されたものです。