『闇に潜む者』〜第十一章 "蹂躙"

作:月華


「よく来たわね。翔太君」
「先生。なんでしょうか?」
「言わなくても分かるでしょ……あなたの精を吸うためよ」
「あ、ありがとうございます」
翔太に潜んでいたものは、再び保健医の麻衣へと潜み、翔太を弄んでいた。その目当て一つは、翔太の精だった。麻衣に潜むものにより、男から女へと姿を変えさせられた翔太の精は、普通の男よりも、はるかに純度の高いものになっている。
精を吸われる感覚は、男の射精にも似ている。純度の高い精の放出は、それに伴う快感を生み出していく。翔太は麻衣の言葉をきっかけに、その快感を思い出しただけで、うっとりとした表情になる。
すでに下着の中での変化を表している股間の部分へと、麻衣の手が伸びる。
「あ……あぁ」
軽く触れられただけで、翔太は女の子のような声を上げる。自らの体から湧き出てくる快感に怯える乙女のような、嗜虐心を誘うものだった。
翔太はもじもじと腰を動かしながら、触れているだけの麻衣の手へ、股間を近づけていく。物欲しげな翔太の股間から、麻衣の手が離れる。
「今は、まだ駄目よ」
「あ……」
裏切られた期待に、翔太は切なげに声を上げる。
「放課後に、たっぷり可愛がって上げる。だからそれまでは、あなたに準備をしてもらうわね」
言って麻衣の手が、再び翔太の股間に伸びる。そして、ズボン越しに翔太の勃起したものを掴んだ。
大人の指が触れた場所は、さらに熱を帯びていく。固くなったものは、さらに膨らんでいく。圧迫される痛みすら感じられる。
「これで、いいわ」
言葉と同時に、再び麻衣の手が離れていく。
「放課後まで、我慢するのよ。まあ、我慢できなくても、どうしようもないようにしたけれどね」
そう言ってから、翔太を弄ぶ快楽を感じつつ、麻衣は翔太を教室へと戻したのだった。

翔太が自分の体に異変を感じたのは、午後の授業中のことだった。
――思いっきり射精したい。
そればかりが頭に浮かんだ。女を抱きたいとか、まわりの女生徒を見て興奮するとかではなく、性欲が己の一部を触り精を放出することと、ストレートに結びついているのだ。
だが、さすがに授業中にそんなことをするわけには行かない。翔太は頭の片隅で、休み時間になるなり、トイレに駆け込もうと思うことで、どうにか欲望を抑えつけていたのだった。
そして、授業が終わると同時に、翔太はトイレへと走った。個室へと入り込むなりズボンを降ろし、勃起しっぱなしのものに邪魔されながら、パンツも脱いだ。
「ううっ……」
手のひらで触れたそれは、すっかり熱く固くなっている。翔太はトイレの外に誰かがいることなど考えもせず、すぐさま擦り始めた。
「はぁ、はぅ……」
これ以上ないほどに勃起していたものは、すぐさま射精へと向かった。
だが、ペニスの根本から湧き出たものが、外へと放出されることはなかった。
「ど、どうして」
待ち望んでいた射精を塞がれて、翔太は手にしているものを見つめた。そして翔太は、先端にあるはずの尿道口が、きれいになくなっているのに気づいて呆然とした。
全ては、麻衣に潜むものの仕業だった。出口を塞がれてしまっては、翔太の精液は行き場を失い、その勢いのままに体内に跳ね返ってきてしまう。
「そ……そんなぁ」
出したい心と、出せない体――不一致な二つの中で、翔太はペニスを擦ることを止めることが出来ない。そして、次々に沸き起こる爆発感が妨げられては、それが痛みを伴い体内に溜まっていく。
「もう……止めなくちゃ」
翔太は、必死になって自分に言い聞かせる。まもなく、次の授業も始まってしまう。このまま、保健室にいる麻衣の所へ駆け込められれば良いのだが、『放課後に来い』と命じられている翔太には、そのような考えは浮かばない。歩く度に勃起が刺激されることに我慢しながら、教室へと戻ったのだった。
その後、翔太はひたすら耐えた。耐えると言うよりも、我慢せざるを得なかった。放課後に近づいた頃には、ペニスの固さと熱そのものすら、翔太への強烈な刺激となっていたのだった。

そして放課後。
「麻衣様。お願いします……」
翔太は顔を赤くし、苦しげに息を漏らす。
「あらあら、随分とつらいみたいね」
麻衣に潜むものは、ごく普通の保健医を装い、悶える翔太をはぐらかす。
「お願いします。射精させてください。もう、駄目です」
「本当。ここがこんなに腫れているじゃない」
麻衣は翔太の股間に手を当てて、触診をするように撫で上げる。
「そうです。もう、こんなになっちゃって……」
「ふーん。それじゃあ、これがなくなれば問題ないのよね」
「あっ」
麻衣が触れた場所で起こる変異に、翔太は声を上げた。熱く、固くなっているものが、ゆっくりと小さくなっていくのだ。
だが、小さくなっても存在感は変わらない。むしろ、射精への欲望は、ますます高まっていくのだった。
「ほうら。あなたのもの、全部なくなっちゃったわよ。見てごらんなさい」
言われて、翔太は慌ててズボンを脱いだ。トイレで降ろした時のように、下着を妨げるものは何もない。それどころか、ぶら下がっていた陰嚢すらも、無くなっているのだ。
翔太は、自分が女の子の体にされてしまったのかと思った。だが、それも違う。股間には割れ目すらなく、まるでマネキン人形のように、つるりとした肌があるだけなのだ。それに、胸も膨らんでいない。
「ど、どうして」
翔太は、二つのことを同時に聞こうとした。どうして股間に何もなくなってしまったのかと、どうして何もない股間から射精への欲望が沸き起こるのか、と。
「触りたいものも、出る場所も無くなって大変でしょ。
でも、大丈夫よ。まずは、服を全部脱ぎなさい」
「はい……」
麻衣の言葉に背くことは出来ない。翔太は制服を脱ぎ捨て、全裸を曝した。小柄な体に柔らかい肌、平らな胸、そして何もない股間。男でも女でもない、中性の体だった。
「思い切りオチ○チンを触りたいんでしょ。思い切り射精したいんでしょ」
「はい」
耳元で囁かれて、翔太は力弱く答える。
「大丈夫よ。ちゃんと、叶えてあげるから」
言うなり、翔太の平面な胸元へ麻衣の手が伸びる。
「あ……」
翔太が声を上げたのは、そこに彼が望んでいたものがあったからだ。翔太の胸から感じるもの。それは、男の快感だった。
「どう。気持ちいいでしょ?」
「は、はい」
待ち望んでいたものを、思わぬ場所から与えられ、翔太は息を荒げながら答える。まだペニスに比べればその快感は弱いが、女の子にされた時に感じた感覚とはまるっきり違う。味わい慣れた、男としての感覚なのだ。
「それじゃあ、あなたが触ってみなさい。気持ちいいって思う場所を、あなたの好きなように」
翔太は小さく頷いてから、両手を胸元に当てた。男のままの平坦な胸元には、触れるべき乳房は無い。見慣れた胸元を、翔太は探るように撫でていく。
「あ……」
胸から沸き起こる感触は、まさしくペニスからのものと同じだった。亀頭を触った時の、くすぐったく強烈な刺激が、胸元全体から伝わってくる。
翔太は溜息を漏らしながら、手のひらを動かしていく。指先で磨くように触っては、手のひらで乳首を転がしていく。
そんな翔太の手のひらが、だんだんと動かしづらくなってきた。胸が手の動きを拒むように、邪魔をし始めたのだ。見ると、胸の肉が軟らかく盛り上がり始め、手の行く先に集まり、動かしづらくなっているのだった。
「気づいたみたいね。
あなたの胸、今はペニスと同じなんだから、触れば大きくなっていくのは当たり前でしょ」
耳元で囁く麻衣の言葉に、翔太は息を飲む。
「言ってみれば、乳房の勃起ね」
――乳房の勃起。その言葉に、翔太は甘美な幻想を感じてしまう。そして、すぐさま手のひらを強く動かし始めた。
「あは……」
動かし続ける度に、翔太の胸は段々と柔らかく、膨らみ始めていく。広げた指先からは柔らかい肉が溢れ、寄せ集めれば手のひらに乳房の感触が集まってくる。
それに伴い、乳房から感じるペニスの感覚は、ますます強まっていく。単純に快感が強まっているだけではない。ペニスと違い、大きく柔らかい乳房は、指先の動きをより敏感に感じ取り、快感へと変えていくのだ。親指の力強さから、人差し指の微妙さ、小指の頼りなさまで、指先一本一本を、別の刺激として感じ取っていく。
「ふぁ……。こんなに大きくなってきた」
翔太の胸元には、女の子の乳房が姿を現していた。柔らかく張りのある乳房は、擦って快感を起こそうとする翔太の手を邪魔するかのように変形していく。
溜まらず翔太は、胸を持ち上げるように擦りあげると、ペニスを擦る時の快感が蘇ってくる。撫で上げた手のひらが乳房から離れる瞬間、ぷるんと乳房が揺れ、新たな刺激が起こる。自らの揺れから男の快感を感じることなど、ペニスではあり得ないことだった。
翔太の乳房は、今は普通の女の子のものよりも大きくなっていた。揉みしだくことが出来る大きさになった乳房を、翔太は弄ぶように揉んでいく。男の荒々しさで乳房を揉んでいくと、それに比例するように男の快感が沸き起こる。
「おっぱいと、オチ○チン……気持ちいい」
まるっきり異なる快感が、同時に満たされていくことに、翔太は思わず口走る。目を閉じると、手のひらには女性の乳房が貼り付き、同時にペニス一杯には女性の手のひらがまとわりつき、全体に快感を送り込んでくる。
翔太の乳房は、なおも大きくなっていた。もはや、片手で触るだけでは無理なぐらいだった。翔太は右胸から手を離し、左の胸へと当てる。そして、右腕で大きくなった乳房を抱えつつ、両手で左の乳房を触っていくのだった。
「あは……あぁっ! んっ」
左手で乳房を絞り出すようにしながら、右手の指で乳首を触っていく。乳首からの刺激は、さらに強烈だった。ペニスの先端に、その気持ちよさを固めたような小さなペニスが、もう一つあるかのようだった。
「すごい……ここ……変になっちゃいそう」
膨らみ続けてきた翔太の乳房だったが、今度はその中で変化が起こった。
「あ、何か変……」
乳房の膨らみは止んでいた。だが、その中で、別の何かが膨らみ始めていた。その正体を探ろうと、翔太はさらに力強く乳房を揉むと、柔らかい乳房を通した手の動きは、乳房の中にあるもの全体を包み込み刺激し、さらに大きく膨らんでいくだのった。
そして、翔太は悟った。それが、乳房を通して感じる、射精前の感覚なのだ、と。
「もう……出ちゃいそう……」
だが、乳房を通しての射精の方法など、翔太は知らない。出したいのに出す方法が分からずに、翔太は悶えながらさらに乳房を揉んでいくしかなかった。
男だったらとっくに射精をしているはずが、包容力のある乳房は、その中にため込まれたものをせき止めると同時に、外側から圧迫をしてくるのだった。
「ふふふ。それじゃあ……出させてあげるわ」
翔太を見つめ続けていた麻衣の手が、翔太の乳房へと伸びる。翔太の手を押しのけてから、指先を揃えて撫で上げて、そのまま親指と人差し指で乳首を摘み上げる。
「そこっ……凄っ……」
女の体に慣れていない翔太に対して、麻衣に潜む者は、下僕の感じる場所は全て分かっていた。そこを狙って指先で巧みに刺激していく。
「あ……出るっ」
翔太の声と表情を見取って、麻衣は翔太の乳首へと顔を近づけ、指先で乳首を動かして、自らの口へと向けた。
「ほらっ、イキなさいっ」
声を上げ、ひときわ大きな刺激を与えると同時に、翔太は乳房の中が大きく膨れ上がるのを感じた。一瞬、乳房全体が大きく膨れてから、行き場を見つけた熱い流れは一点へと集まり、そちらへ向かっていく。
「あはぁっ!」
粘り気のあるものが乳房を流れ出ていく。
乳首が、中からあふれ出るものに押し広げられる。
そして、翔太の乳首からは、白い粘液が吹き出したのだった。
「あ……」
それを待ち受けていた麻衣は、口を広げこぼれだしていくものを受け止めた。
荒い息を上げながら、翔太はペニスの時よりも敏感に、男としての絶頂を感じていた。
翔太の眼下では、翔太の乳首から溢れだした粘液を口へと流し込んでいく麻衣の姿が見える。
男のものが、脈打ちながら射精していく様を、翔太は乳房を通して感じている。
「ああ……」
呆然としている翔太の乳首へと、麻衣が唇を当ててくる。まだ乳房の中に残っている精を集めようとする行為だったが、眼下で大人の女性が自らの乳首に口を当て、そこから溢れるものを吸い込んでいく光景を眺めるのは、翔太に異常な興奮を与えた。
その興奮から、まだ射精をしていない右の乳房が大きく脈打ったのを、麻衣はめざとく見つけた。
麻衣は小さく笑ってから、
「今度は、こっちも気持ちよくして上げるわ」
そう言って、左の乳首から、右の乳首へと口を変えた。
同時に動かされた麻衣の手が、翔太の乳房を巧みに刺激しては、男の快感と射精へと誘い出していく。
翔太は、麻衣の手が創り出す男の快感と、大人の女性に乳房を弄ばれる感覚に、頭をぼんやりとさせながら、流されていった。
「すぐには、イカせてあげないわよ。右胸の次は、また左胸。それからまた右の胸と、ずっと楽しませてもらうんだから」
すでに麻衣の声など届かなくなっている翔太に向かって呟いてから、麻衣に潜む者は、翔太の快感と精を支配していくのだった。

第十一章<完>

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この作品は、
「月華の本棚」http://www.geocities.co.jp/Bookend-Ohgai/8113/main.html
に掲載されたものです。